2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヘビからカエルへの遺伝子水平伝播:起源系統と発生地域の解明および媒介生物の特定
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26291080
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
倉林 敦 広島大学, 両生類研究センター, 助教 (00327701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 一彦 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (60282852)
松田 洋一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70165835)
森 哲 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80271005)
細 将貴 京都大学, 白眉センター, 助教 (80557695)
佐藤 宏 山口大学, 獣医学部, 教授 (90211945)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子水平伝播 / 転移因子 / 両生類 / 爬虫類 / 寄生虫 / 生物系統地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヘビからカエルへの遺伝子水平伝播という奇妙な現象について、1)どのヘビの系統からどのカエルの系統に水平伝播が生じたのか、2)どの地域でどの時代に水平伝播が生じたのか、3)どのような生物がこの水平伝播を媒介したのかを明らかにすることを目的としている。H28年度は、これら目的を達成するために、以下の研究を実施した。 1)これまでに標本が全くなかった、マダガスカル産のヘビ・カエル体内寄生虫や吸血性節足動物・環形動物サンプルを収集した。2)水平伝播を仲介した候補生物の探索の過程で、爬虫類に寄生する線虫の外部形態観察を行い、その結果を論文公表した。3)日本およびマダガスカル産の寄生虫や吸血性動物からヘビカエル水平伝播遺伝子をPCR増幅した。その結果、日本産では86サンプル中8サンプル(9.3%)、マダガスカル産では63サンプル中46サンプルから水平伝播遺伝子の増幅が見られた。4)ヘビ・カエル種、および日本・マダガスカル産爬虫類について、PCR産物のPacBioRSIIによるシークエンスを行った。5)得られた塩基配列情報に基づき、分子系統解析を行った。昨年までは7回の水平伝播が生じたことが示唆されていたが、今年度の結果では9回の水平伝播イベントが推定された。さらに、その9回のうち5回までがマダガスカルで生じたことが示唆された。さらに、マダガスカルでは、へびからカエルだけでなく、進化的なヘビ系統から原始的なヘビ系統への遺伝子水平伝播が生じたことが分かった。 上記3, 5)の結果から、体内寄生虫や吸血性動物がヘビ・カエル間の水平伝播を仲介した事が強く示唆された。さらに、マダガスカルでは、ヘビ・カエルだけではなく、それらに接触する寄生虫や吸血性動物の水平伝播遺伝子保持率がきわめて高い事が明らかとなり、マダガスカルでは、多様な動物群にパンデミック的に同じ転移因子の水平伝播が生じていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・次世代シークエンスデータの2次解析パイプラインが確立し、解析が順調に進んでいる。 ・寄生虫や吸血性生物のサンプル収集が順調に進み、それらを用いた実験結果から、ヘビからカエルへの遺伝子水平伝播が、これらの動物を仲介して生じた事がほぼ明らかになってきた。 ・さらに、世界各地域のサンプルの解析結果から、マダガスカルにおいては、他地域と比較した際に、パンデミック的に転移因子の水平伝播が起きている事が明確となった。 ・また、寄生虫研究として、2報の論文が出版された。 以上の点より、H28年度において、研究はおおむね順調に推移したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
・PCR増幅断片を精製し、次世代シークエンサー解析用のサンプルを作成する行程が律速要因である。この行程は、これ以上の簡便化が難しいため、現在3人体制で実施している。 ・H28年度に実施できなかった、水平伝播遺伝子の可視化(染色体FISH)などの研究を押し進める。なお、FISHに用いるプローブは作成済みである。 ・本年度の研究によって、マダガスカルでは、転移因子の水平伝播イベントが、様々な動物門・綱間でパンデミック的に発生した可能性が示された。この興味深い仮説を検証するため、主な研究対象である、爬虫類・両生類以外のマダガスカルの脊椎動物の調査を開始する。 ・H28年度に実行できなかった、分岐年代解析を実施し、水平伝播起源年代を解明する。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンサー(PacBioRSII)の受託解析は、一度にサンプルを多量に発注すると割安になるので、昨年度の予定分を、今年度予定分とあわせて実施し、解析費用の節減を行うため。なお、H28年度において、予想以上に寄生虫などの収集が進んだために、この節減が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
7月までに、今年度のサンプルとあわせ、次世代シークエンサー受託解析を依頼する。なお、依頼先は、大阪大学医学部 CoMIT Omics Center である。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] A unique gene horizontal transfer from predator to prey occurred between distinct vertebrate classes.2016
Author(s)
Sato, Y., H. Mizuno, K. Ohshima, Y. Kumazawa, Z.T. Nagy, A. Mori, A. Allison, S.C. Donnellan, H. Ota, H. Masaki, N. Furuno, M. Vences, & A. Kurabayashi
Organizer
The 22nd International Congress of Zoology
Place of Presentation
Okinawa, Japan
Year and Date
2016-11-17 – 2016-11-18
Int'l Joint Research