2015 Fiscal Year Annual Research Report
人工的に構築したサンゴ‐褐虫藻共生体を用いた共生生物学的イベントの多面的精査
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26291094
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
山下 洋 国立研究開発法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (00583147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 豪 国立研究開発法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (30533319)
新里 宙也 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, グループリーダー (70524726)
神保 充 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (10291650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サンゴ礁生態系 / 海洋生態 / 生物圏現象 / 共生生物学 / 海洋保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンゴ礁生態系は生物多様性のホットスポットであり高い生物生産を有する海域である。サンゴ礁生態系の土台を支えるサンゴは褐虫藻と呼ばれる単細胞性藻類と共生しており,体内の褐虫藻を利用して生存・成長している。本研究では,サンゴと褐虫藻の共生関係の構築から2年目程度までに着目し,人工的に構築した共生体を用いて,サンゴ―褐虫藻間の生理・生態学的な関係を詳細に解明することを目的としている。昨年度に初期共生期,すなわちサンゴと褐虫藻の共生開始から2週間程度までに共生体に起こる変化の詳細を明らかにしたため,今年度は共生体に起こる変化を長期間にわたり観察するための野外実験に着手した。まず,昨年度と同様にウスエダミドリイシの幼生を使用し,野外のサンゴ幼体がよく共生させている褐虫藻と野外の幼体からは検出されない褐虫藻をそれぞれ人工的に取り込ませて感染率・感染した褐虫藻の細胞数を観察した。それぞれの褐虫藻を取り込ませた幼生と,褐虫藻を持たない幼生を野外に予め設置していた格子状基盤に着生させた。着生から3日後,2週間後,1か月後,3か月後にそれぞれ基盤の一部を回収し,幼体の生残を観察するとともに,幼体内褐虫藻の遺伝子型組成確認用,遺伝子発現・タンパク質発現解析用の試料をそれぞれ固定した。着生から3日後の着生数を基準として,幼体の生残を算出したところ,試験区間で大きな差は見られなかった。これは,幼体内褐虫藻の遺伝子型組成が,着生後すぐに均一になっていたためと考えられる。すなわち,本来野外の幼体からは検出されない褐虫藻を取り込ませた場合でも,幼体は速やかに環境中から本来共生させるべき褐虫藻を取り込み,これと入れ替えるものと考えられた。共生体の遺伝子・タンパク質発現解析は,現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたとおりに野外実験に着手することができ,予定していた定期サンプリングも順調に実施できているため。また野外実験において,生残や共生体内の褐虫藻の遺伝子型組成の変化なども明らかにできており,同時に採取した遺伝子やタンパク質発現用の試料を用いた解析も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は野外実験を継続する。すなわち,野外のサンゴ幼体からよく検出される褐虫藻と全く検出されない褐虫藻をそれぞれ人工的に感染させた幼体を着生させた基盤から,定期的に試料を採取し,サンゴ内褐虫藻の遺伝子型組成の解析を行うとともに,幼体サンプルの遺伝子あるいはタンパク質解析を行う。また,平成28年度は最終年度であるため,これまでに得られた成果をとりまとめ,積極的に公表していく。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析用試薬類などがキャンペーン価格などで当初予定していたよりも安く購入できたため。また,平成28年度に実施される国際サンゴ礁学会で当該研究費で得られた成果を発表する予定であるが,その参加費用を支払うため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金は平成28年度の物品費やその他の支出費と合わせて,遺伝子解析用試薬類や消耗品類の購入,あるいはクローニング外注費として使用する。また,平成28年度に実施される国際サンゴ礁学会への参加費として使用する。
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