2015 Fiscal Year Annual Research Report
ポリフェノール抱合体の活性発現機構の分子基盤となる標的細胞との相互作用解析
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26292069
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
河合 慶親 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (50380027)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フラボノイド / 炎症 / 標的分子 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題2年目の平成27年度では、フラボノイドであるケルセチンおよびその抱合体(グルクロン酸抱合体と硫酸抱合体)の標的分子探索へ向けた検討を行った。具体的には1.標的分子探索のためのケルセチン及び抱合体の化学プローブ合成、および2.合成した化学プローブを用いた標的分子探索へ向けた検討、である。
1. 標的分子探索のためのケルセチン及び抱合体プローブ合成:ケルセチンについては無水酢酸/ピリジン系により水酸基をすべてアセチル化により保護したのち、既報を参考にイミダゾールを用いた7位選択的な脱アセチル化を行った。その後、7位に三重結合を有するハロゲン化物を結合させたアルキン化ケルセチンを合成した。一方、グルクロン酸抱合体であるQ3GAのカルボキシル基を利用し、ここに三重結合を有するアミンであるプロパルギルアミンを縮合させ、アルキン化Q3GAを合成した。調製したアルキン化ケルセチンおよびアルキン化Q3GAはもとのケルセチン、Q3GAと同様の抗炎症活性を有することを確認したことから、これらの標的分子探索に有用であることが示唆された。
2. 合成した化学プローブを用いた標的分子探索へ向けた検討:ケルセチンおよび関連化合物のタンパク質への結合は共有結合ではなく一般的には水素結合や疎水結合によるものと考えられており、細胞からのタンパク抽出の過程で結合が外れることが懸念される。そこで、ケルセチンあるいは抱合体のマクロファージ細胞への投与後に、架橋試薬による固定化を試みることにした。その結果、アルキン化Q3GAはタンパク質に固定されることが確認されたが、アルキン化ケルセチンではタンパク質への固定が認められなかった。よって、アルキン化Q3GAは細胞への投与を介した標的分子探索への応用が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度中において、食事由来の主要なポリフェノールの一種であるケルセチン及びその抱合体の標的分子探索のための化学プローブを合成することに成功した。ケルセチンおよびその抱合体の抗炎症活性発現機構に関わる標的分子を探索することが、本課題の中心的な達成目標であるため、最終年度である平成28年度中に本プローブを用いて標的分子の探索を進めることが十分可能であるため、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に合成に成功した化学プローブのうち、ケルセチンを出発物質として合成したアルキン化ケルセチンを用いて標的タンパク質探索へ向けた予備検討を実施したところ、標的分子回収の際に必要な実験処理となるタンパク質への架橋に十分な反応性を有していなかったことから、本プローブは標的分子探索に適さないことが分かった。このような課題に対応する方策として、平成28年度では、合成したプローブを活用できる他の標的分子回収方法を検討する一方で、他の誘導法によるケルセチンプローブの再合成を試みることにより、培養細胞からケルセチン標的タンパク質を最も安定に単離出来るような方法論の確立を進める予定である。
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Research Products
(2 results)