2015 Fiscal Year Annual Research Report
開放系オゾン付加施設で生育する冷温帯樹種の成長に及ぼす窒素沈着の影響解明と応用
Project/Area Number |
26292075
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 孝良 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10270919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 冬樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20187230)
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (20322844)
渡辺 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50612256)
渡部 敏裕 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60360939)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 対流圏オゾン / 窒素沈着 / グイマツ雑種F1 / ニホンカラマツ / 開放系施設 / 光合成機能 / 外生菌根菌 / 硫酸アンモニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる土壌に生育するグイマツ雑種F1とニホンカラマツにオゾン付加と窒素付加処理を継続し、定期的な生理機能の評価を行う。研究実施中に学会活動でも指摘を受けたが、無機環境をオゾン(O3)と窒素だけではなく広く複合影響も注意すべきことを指摘された。そこで文献調査をおこない、メタ解析によって高濃度オゾンと増加し続けるCO2の根圏への影響評価を行い、我々の狙いの国際的な位置づけを行った。定期調査でのサンプリングで得た葉のプラズマ発光分析による養分分析を行い成長との関係解明を試みた。また2年目には土壌と根系が安定するので、コアサンプリングによる細根の発達と外生菌根菌の感染を調べる。根箱を用いた実験は、キタキツネによって掘り返され実験が中断した。しかし、コアサンプリングは成功し、一定の成果を得た。 オゾンの単独影響として,F1のみ最大光合成速度(以下,Amax)が低下し,またニホンカラマツのみ葉内窒素(以下,Narea)が低下した。O3暴露されたF1苗木のNareaは有意に低下しなかったがAmaxは低下した。ニホンカラマツ苗木のNareaは低下したがAmaxは有意に低下しなかった。このことからニホンカラマツでは酵素活性の増加や葉肉細胞での抗酸化応答によって,Amaxの低下が明瞭ではなかった可能性がある。窒素の単独影響として、ニホンカラマツのみAmaxが有意に増加した。またNareaにおいてもニホンカラマツのみ増加した。一方,(NH4)2SO4付加の影響により窒素付加によって、土壌はやや酸性化したが、pH=5.2でアルミニウムが溶出するような水準ではない。付加により生じたNH4+,または硝化されたNO3-が窒素栄養として機能した可能性がある。 両樹種の光合成や葉養分に対して,O3と(NH4)2SO4の交互作用による有意な変化はなかった。この原因として,(NH4)2SO4付加による顕著な土壌ストレスが生じておらず,むしろ窒素栄養として作用し,個葉レベルの生理反応は促進された可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌と根系が安定するので、根箱を用いた根系の発達モニタリング実験は、キタキツネによって掘り返され実験が中断した。しかし、コアサンプリングは成功し、一定の成果を得た。外生菌根菌と関連の深いリン(P)に関する実験の概要は以下である、地下部の細根生産量に関しては,P付加の有無に関わらず細根生産量が低下した。P0(P付加ナシ)の場合で細根生産量が低下したのは,Pに対する窒素(N)量が大きいため,Pが細根生産の制限となり,Nが過剰状態となったため細根生産が抑制されたと考えられる。反対に,P50(P付加、50kg/ha年)で細根生産量が低下したのは,N及びPが豊富にあるため,養分吸収を行う細根を積極的に生産する必要性が低くなったと考えられる。しかし,P付加の有無により細根生産量に大きな差が生じなかったことから,PよりもNの方が細根生産に対する影響力が大きいことやP0であってもPが不足状態でなかったことが考えられる。これらから外生菌根菌の活動の重要性が示唆された。このように、一定の成果は得られたので、2)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26~27年度のモニタリング調査を継続する。これまでの研究では、例えば同じブナ科であってもミズナラは耐性、ブナは感受性種であることが若齢林分でも解明された。そこで、2年目までに確認できる予定のグイマツ雑種F1おニホンカラマツについて、オゾンに対する防御物質(アスコルビン酸など)の含量や関連する酵素の活性を定量して、生理機能の差異を明確にする。最終年なので、前年度に調整を試みたオゾン・窒素沈着の複合影響を考慮した「持続的生産立地図」の作製を想定し、解析に抜け落ちている根系の解析を進める。そしてこれからの結果を踏まえ、北海道全域へのスケールアップを試みる。予想では、苫小牧のような未成熟火山灰土壌地帯では硫酸アンモニウムによる窒素沈着の増加によってオゾン感受性が低下する。しかし急速にpHの低下が進み、窒素無機化にかかわる菌類の活動が低下し、葉中のマンガンとアルミニウムが増加することも予想される。これ等の情報を基礎に「持続的生産立地図」の意味づけをおこなう。 達成困難な場合、対象樹種は北海道の有用樹種とされる45種にはるかに及ばないが、針葉樹では容積密度の値から構造材としての有効理由の側面からカラマツ属を主な対象として、人工林造成時に見られる「持続的生産立地図」の提示を行う。また、大気飽差の増加に伴うオゾン吸収量の抑制影響をどのように組み込むかが大きな課題になる。水分生理的研究にも着手したい。
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Causes of Carryover |
施設老朽化(オゾン付加のため施設を構成する各種パイプ、支持部位等々が酸化、劣化し、交換する必要が出た。冬期間は寒冷地、積雪の中にあってまったく作業ができず、年度末に消耗品の一部を入手し、その配置など工事費と施設の補修作業を行う人件費(短期支援など)を次年度に回す必要がでたため、予算をかなり節約(別刷を購入せず、添削も英語圏からの留学生にチェックさせる、学会参加を減らす)し、改修工事に予算を回すことを第一に対策を建てたため、予算を一部、繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
雪解けをまって、施設の改修を行う。また、予備調査の結果、不足している機材・部材を購入し、業者による人件費節約のために、短期支援員を雇用して、作業にあたる予定である。予定学は、予備検査(7万円)、電気系・配管類の改修(15万円)、改修工事用の追加機材購入費、約50万円、そして短期支援員の雇用代、約10万円を予定する。,
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] A review study on past 40 years of research on effects of tropospheric O3 on belowground structure, functioning and processes of trees: a linkage with potential ecological implications2016
Author(s)
Agathokleous, E., Saitanis, C.J., Wang, X., Watanabe, M., and Koike, T.
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Journal Title
Water, Air, & Soil Pollution
Volume: 227
Pages: 33-61
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Ethylene-di-urea (EDU), the most effective phytoprotectant against O3 deleterious effects and a valuable research tool: a mystery of decades2015
Author(s)
(22)Agathokleous, E., Koike, T., Watanabe, M., Hoshika, Y., and Saitanis, C.J.
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Journal Title
Journal of Agricultural Meteorology
Volume: 71
Pages: 185-195
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Ozone-induced stomatal sluggishness changes carbon and water balance of temperate deciduous forests2015
Author(s)
(19)Hoshika, Y., Katata, G., Deushi, M., Watanabe, M., Koike, T. and Paoletti, E.
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Journal Title
Scientific Report
Volume: 04/2015; 5:9871
Pages: 5:9871
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Ethylenediurea (EDU) as a protectant of plants against O3.2015
Author(s)
Agathokleous, E., Koike, T., Saitanis, C.J., Watanabe, M., Satoh, F. and Hoshika, Y.
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Journal Title
Eurasian J. Forest Research
Volume: 18
Pages: 37-50
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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