2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26292123
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
玉 真之介 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (20183072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 武祝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40202329)
戸石 七生 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (20622765)
伊藤 淳史 京都大学, 農学研究科, 助教 (00402826)
庄司 俊作 同志社大学, 人文科学研究所, 教授 (70130309)
野本 京子(沼田京子) 東京外国語大学, 大学院総合国際研究院, 教授 (90208281)
笹川 裕史 上智大学, 文学部, 教授 (10196149)
永田 明 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, サステナビリティと平和研究所, 研究員 (30638284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農村振興 / 歴史的系譜 / 日中韓比較 / 世界農業遺産 / 多様性 / 条件不利環境 / グローバル経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
農村振興策の系譜に関する日中韓比較というテーマに対して、今年度は新たな農村振興策として日中韓3カ国で関心が高まっている世界農業遺産について共同研究を行った。世界農業遺産は、2002年にFAOが開始したプロジェクトで、次世代に引き継ぐべき重要な農業・農法を伝統的知識や農村文化とともに保全し、持続的な活用を図るものである。特に、UNESCOの世界遺産と違って、今日のグローバル経済をはじめとする環境変化に適応して進化する「生きている遺産」であることが認定の条件となっている。 逆の意味では、世界農業遺産の認定を受けることで、条件不利的環境の下での長年の取組を通じて独特の農法や生活スタイルを確立してきた地域がグローバル市場経済への新たな適応を図る動きとしても、世界農業遺産の取組は注目される。 今年度の研究では、まず韓国における世界農業遺産登録第1号となった全羅南道の青山島を研究チームで訪問して視察並びに聞き取り調査を行った。続いて、わが国における世界農業遺産への登録を目指している徳島県の剣山系傾斜地農業の視察並びに聞き取り調査を行い、地域住民の世界農業遺産への関心や期待について考察を行った。 以上の2つの調査から、世界農業遺産への登録は、地域農業の持続性を高め、波及効果を含めて地域農業振興としての性格をもった新しい取組として位置づけることができることを確認した。 3月5日には、東京(東京大学)において中国、韓国からの専門家を招いて、「世界農業遺産登録と地域農業振興」をテーマとした日中韓における比較と経験交流のためのシンポジウムを開催し、日中韓における共通点と違いなどについて議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、中国と韓国、日本の調査を並行して行う予定であったが、中国の受入体制が整わなかったことに加えて、農村振興策の新たな動きとして、世界農業遺産に焦点を絞ったことから、研究はやや遅れ気味である。 ただし、当初計画では想定していなかった農村振興の新しい展開としての世界農業遺産登録の動きは、本研究の目的に照らしてきわめて注目されるものであり、かつ研究がこれまでなされてきていないことから、今年度は重要な前進があったとも評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年実施できなかった中国への訪問調査と日中韓の研究者の交流を進め、世界農業遺産への国民の関心に関するアンケート調査なども実施して、研究のテンポを高めたい。 世界農業遺産については、関心が主に農法に向けられていることを踏まえて、今年度の研究では、当初の計画に提示した「農業・農村の価値付け」と「集落機能」の2つの観点から、農業・農村の環境変化への適応と持続性に関する論点を深めるための調査やフォーラムを開催する。 世界農業遺産への取組には、地元はもちろん政府や自治体の動きも注目されることから、この観点に関して中国・韓国からの研究者招聘も行って日中韓の比較を行い、その違いが生まれる背景についても考察を加えることとする。
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Causes of Carryover |
今年度は、当初予定していた中国での調査が受入側の都合でできなくなったため、次年度に回し、次年度に予定していた韓国の調査に切り替えた。この結果、主に旅費等の支出において残額が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中国における受入体制が次年度には整うことから、主に中国調査の経費として使用する。
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Research Products
(10 results)