2016 Fiscal Year Annual Research Report
エピゲノム情報修復システムとしての受精後刷り込みメチル化機構の役割
Project/Area Number |
26292189
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷本 啓司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90261776)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ゲノム / 発現制御 / エピジェネティクス / ゲノム刷り込み / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度までに、本来 DNA メチル化刷り込みを受けない λ ファージDNA 断片(CpG配列に富む)に対して、インスレータータンパク質 CTCF の結合配列を4カ所、さらに細胞に対して多能性を与える転写因子、Oct の結合配列を付加した断片を調製し、 LCb(lambda+CTCF+b)と命名した。同断片を用いてトランスジェニック・マウスを作成し、in vivo で DNA メチル化刷り込みを受けないことを明らかにした。受精後刷り込みメチル化に必要な配列を in vivo(YAC トランスジェニック・マウス)で同定し、PODS と命名した。これを、LCb 配列に付加した断片 (LCb+PODS) を用いて、YAC トランスジェニック・マウスを作製した(再構築系)。その結果、同配列が DMR (differentially methylated region) として機能することが分かった。 そこでH28年度は、 1. 内在 H19-ICR の機能を LCb+PODS 配列により代替できるのかについて(つまり、十分性の)検証をおこなうため、ES 細胞で、ゲノム編集による内在 H19-ICR の置換を行った。さらに、集合法によりマウス個体を作出した。同断片の DNA メチル化解析(Southern blot、及び、Bisulfite sequencing 解析)を、一部開始した。 2. ゲノム編集により、内在PODS配列の欠失を行った(一部、RNA エレクトロポレーション法を使用)。 3. PODS 配列に結合し、DMR の機能を担う因子を同定するため、ゲルシフトアッセイや酵母one-hybrid systemによるクローニングを開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度始めの当初計画内容を順調に遂行し、次年度に予定していた内容(結合因子の探索)についても着手することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更はなく、その遂行上の問題点は見当たらない。今後も、当初の計画通りに研究を遂行する。我々はこれまで、新規に見いだしたDNA配列機能の十分性に加え、その十分性の見地からの検証も開始した。今後は、人工的に再構築したDNA配列を内在遺伝子座の相当配列と置換する、あるいは、PODS配列を内在遺伝子座から欠失させることで、その生物学的重要性を明らかにする。また、ゲノム刷り込みの分子メカニズム解明のため、複数の手法を採用することにより、関与する分子の探索をおこなう。
|
Causes of Carryover |
当初、筑波大学生命科学動物資源センターへの依頼を予定していた、遺伝子改変マウスの作製を、CRISPR/Cas9ゲノム編集法を独自に立ち上げることで、自前にて行えたことによる必要経費の減少による。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規分子の探索のために、大規模細胞培養と質量分析解析、及び、候補分子の解析のために、まとまった種類の抗体の購入を予定している。また、CRISPR/Cas9ゲノム編集で作製中のマウス系統の中には、組み換え領域が巨大なためか、作製できていないものがある。このため、ES細胞集合胚キメラ法により作製をおこなうことを考えており、前年度分の経費の減少分は、これらに使用したい。
|