2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物バイオマス生産制御の基盤となる植物小胞輸送系の解析と機能増強
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26292194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松岡 健 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40222294)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゴルジ装置 / ペクチン / 植物 / 飢餓 / 分解 / 機能変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 細胞栄養環境によるゴルジ装置及びポストゴルジ系の機能変換。 ① ショ糖欠乏時のTGN局座蛋白質分解の普遍性の解析。NtSUT2-GFPと同様な分解がSYP41-YFPついてもショ糖欠乏により引き起こされることを見出した。これらに対する抗体の作製のため大腸菌での発現プラスミドを作成した。②Nile redを用いたペクチンの定量系を確立した。次いで、ショ糖欠乏だけではペクチンの分泌は阻害されないが、高浸透圧条件下で培地中のペクチン量が通常条件と比べて少なくなることを見出した。③ 分解遅延変異体細胞の化学変異剤処理による選抜のために、形質転換体の蛍光が安定であるSYP41-YFPを発現させた細胞を用いて、ショ糖欠乏時にゴルジ装置への蛍光が残る細胞が殆ど残存しないが、殆ど細胞死が起っていない時間の設定を行った。 (2) SCAMP2の植物形態形成に果たす役割の解析。 タバコSCAMP2のシロイヌナズナオルソログであるAt1g32050とYFPの融合体を発現させた複数の系統を用いて、これらが全て野生型より大きいことを確認した。また、ベクターだけを発現させた系統を作成した。更に、At1g32050の複数の破壊株において、生育条件によっては個体の乾燥耐性が低下することを見出した。 (3) タバコSCAMP1関連小胞の同定。プラスミドの構築を進めたが、NtSCAMP1-CFP発現細胞の作成には至らなかった。 (4)SVC含有蛋白質の解析を通じたSVC機能の解析。メチル転移酵素とUDP-GD3の細胞内局在と膜配向について、特異抗体を作成することと蛍光蛋白質融合体を用いることで解析を進め、両蛋白質共に活性ドメインが細胞質側に存在することを見出した。 (5)ゴルジ装置等の機能及びその変換機構の理解を進める上で、上記以外の複数のゴルジ装置関連蛋白質に関する解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) 細胞栄養環境によるゴルジ装置及びポストゴルジ系の機能変換。達成度 80%程度。① ショ糖欠乏時のTGN局座蛋白質分解の普遍性の解析。分解の解析は予定どおりに進行したが、抗原作成については、この作業及び変異細胞選抜を進めるためのパートタイマーでの研究補助員の雇用が、適当な人員が見出せなかったため秋にずれ込んだ為に、遅延が認められる。②ペクチン量についての検討は、予定どおり進行した。③ 分解遅延変異体細胞の化学変異剤処理による選抜のための条件設定は確立したが、その際にも蛍光を維持している細胞塊が極少数見受けられた。そこでこれらを変異体候補として、現在選抜中である。 (2) SCAMP2の植物形態形成に果たす役割の解析。達成度100%程度。At1g32050-YFPの過剰発現により生長が促進するかについては、ベクターのみを発現させた系統の作成に時間を要した為、確認する迄に至っていない。一方、遺伝子破壊株の形質の検討については、既に乾燥に対する違いを見出す等、計画以上の進展を見た。 (3) タバコSCAMP1関連小胞の同定。達成度10%程度。 研究半ばで実験を担当していた大学院生が疾病により実験に従事できなくなり、そのため年度途中で研究が停止した。 (4)SVC含有蛋白質の解析を通じたSVC機能の解析。達成度 120%程度。メチル転移酵素とUDP-GD3の細胞内局在と膜配向について、特異抗体を作成することと蛍光蛋白質融合体を用いることで、ほぼ結論を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 細胞栄養環境によるゴルジ装置及びポストゴルジ系の機能変換。①前年に引き続き抗体作製を進め、内在性蛋白質の減少が認められるか確認する。SYP41に蛍光変換タンパク質を融合させたコンストラクトを発現させ、蛍光変換後に通常とショ糖欠乏培地で培養することで、この減少が合成速度の低下によるものか、分解速度の増加によるものかを検討する。②ショ糖飢餓と通常条件におけるペクチンの合成及び分泌量の検討を進める。併せて、分泌型蛋白質であるスポラミンを強制発現させた細胞を用いたり、培地中の酵素活性を検討することで、飢餓状態での分泌系の機能についての解析を進める。③現在選抜中の分解遅延変異細胞の選抜を継続して行うと共に、化学変異剤処理した細胞からも、変異体の選抜を進める。 (2) SCAMP2の植物形態形成に果たす役割の解析。At1g32050-YFPの過剰発現により生長が促進するかについての確認を早急に進める。また、遺伝子破壊株の形質の詳細及びAt1g32050単独の過剰発現系統形質の検討も進め、更にAt1g32050-YFPの局在についての解析も進めることで、At1g32050の機能とその制御についての解明を図る。 (3) SVC含有蛋白質の解析を通じたSVC機能の解析。昨年度迄に結論を得たメチル転移酵素とUDP-GD3の細胞内局在と膜配向について、データのブラッシュアップに務めて論文投稿を進める。併せて、昨年度に公開されたタバコ関連のゲノム情報を用いて、SVC画分に含まれる蛋白質の同定を進める。 (4)これらと共に、ゴルジ装置等の他の蛋白質の機能解析を進め、またその機能の飢餓による制御についても、解析を進める。なお、タバコSCAMP1関連小胞の同定に関しては、平成27年度も人員の目処が発たないため、当面解析を停止し、10月時点の学生の研究室配属時に人員が確保できれば研究を再開する。
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Causes of Carryover |
抗体作製のための抗原作成等に従事させる研究補助人員の人選に時間を要したため、人件費の支出予定の一部及び外部受託費用として考えていた費用の執行に滞りが生じ、そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助人員による抗体作製のための抗原作成は現在順調にすすみつつあり、そのため翌年度分として請求した研究費との合算で、抗体作製に関して当初計画に沿った支出が次年度に可能となる予定である。
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Research Products
(5 results)