2015 Fiscal Year Annual Research Report
全身性エリトマトーデス発症におけるArl8bの役割
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26293083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 伸一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90361625)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 全身性エリトマトーデス / MRL-lpr / TLR7 / 低分子量Gタンパク質 / Arl8b / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性エリトマトーデス(SLE) は発症の9割以上が女性に認められ、多くの臓器に障害をもたらす自己免疫疾患である。しかし、いまだ発症のメカニズムが明らかにされておらず、メカニズムを解明してより良い治療法をもたらすことが求められている。SLEのモデルマウスにおいてSLEの発症にToll-like receptor 7 (TLR7)が重要な役割を果していることが報告されている。我々はTLR7に特異的に会合する分子Arl8bを同定した。Arl8bはlysosomeに局在する低分子量G タンパク質で、樹状細胞においてTLR7の機能を調節している。このArl8bのノックアウトマウスをSLEのモデルマウスMRL-lpr/lprと交配すると、野生型のマウスでは約30週までに約半数がSLEを発症して死亡するのであるが、殆んど全くSLEを発症しなかった。SLEの指標である血清中の抗核酸抗体の値が低く、腎臓への抗体の沈着も著しく低下していた。脾臓肥大はArl8bノックアウトマウスでは著しく抑制されており、Flow cyometryにて解析すると、B220陽性の異常T細胞の増強が強く抑制されていた。そして、その原因がCD4陽性CD25陽性Foxp3陽性の制御性T細胞にあることを明らかにしつつある。これらのことからArl8bがどのようにして制御性T細胞を制御しているのか、何らかの因子が存在するのかをArrayを用いて解析する。さらに、このような殆んど全く症状が出ないという表現型はTLR7ノックアウトのMRL-lpr/lprマウスでは認められないことから、Arl8bがTLR7以外の受容体を調節してこのような表現型につながっている可能性が高いため、Arl8bと会合して制御性T細胞の分化や増殖に関わっている受容体を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MRL-lpr/lprに戻し交配したArl8bノックアウトマウスの脾臓肥大、リンパ節腫脹、皮膚炎の解析はある程度十分に行うことができた。Flow cytometerを用いた解析では、Arl8bノックアウトマウスにおいて、B220陽性の異常T細胞の増強が強く抑制されていることを観察し、制御性T細胞の割合も野生型のMRL-lpr/lprと比べて著しく高いことが明らかとなった。樹状細胞やマクロファージにおいてもArl8bノックアウトマウスにおいて野生型と異なるところがあるので、より詳しい解析を行う予定である。重要な点は、Arl8bが制御性T細胞の調節に関わっているということが明らかとなってきたということである。次にどのように調節しているのかを明らかにする。このように達成度としては良好と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
MRL-lpr/lprを12回戻し交配したArl8bノックアウトマウスは脾臓肥大やリンパ節腫脹が殆ど起こらず、SLEの発症が殆ど認められない。これはB220陽性の異常T細胞の増強が強く抑制されていることによるものと考えられた。Arl8bノックアウトマウスでは制御性T細胞の割合が高く保たれているために、異常T細胞の増強がなく、SLEの発症も抑えられているという実験結果である。このような現象にどんな因子が関与しているのかを検討するため、脾臓肥大が起きる前の週齢の若いマウスを用いてArrayを行い、野生型とArl8bノックアウトマウスで発現の異なる遺伝子を比較検討する。加えて制御性T細胞を精製してArrayを行い、Arl8bノックアウトマウスで制御性T細胞の遺伝子発現が野生型と比べて異なるものが、制御性T細胞の調節と関わる可能性を検討する。さらに、制御性T細胞の分化と増殖に関わる受容体IL-2受容体、TGF-beta受容体、T細胞受容体(TCR)とArl8bとの会合を検討する。会合が認められれば、Arl8bがその受容体の活性化を調節している可能性が高いと考えられる。Arl8bが樹状細胞においてその活性化を制御しているTRAF3は制御性T細胞を負に制御していることが報告されている。そのため、野生型とArl8bノックアウトマウスにおいてTRAF3の活性化状態をユビキチン化にて検討する。
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Research Products
(3 results)