2016 Fiscal Year Annual Research Report
膵星細胞の立体培養法確立応用による膵がん難治性の要因解明
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26293119
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
狩野 光伸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80447383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正宗 淳 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312579)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膵癌 / 間質 / ナノ薬理学 / 腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵がんの治療効果はここ30年来ほとんど改善していない。手術適応のない進行性膵がんでは抗腫瘍剤が主な治療法だが、平均予後が6か月未満と特に短く、投与薬剤が十分有効には奏功していないと考えられる。最近ナノ薬剤であるアルブミンパクリタキセル(アブラキサン)が予後延長を示し臨床認可されたが、どのような患者では奏功しにくいのかまだ十分には明らかではない。この現状を踏まえ、本研究では、抗腫瘍薬剤の奏功程度を左右する原因を薬剤送達経路としての腫瘍細胞以外の腫瘍組織構築因子すなわち腫瘍間質に求め、ヒト膵癌間質由来の膵星細胞(pancreatic stellate cell; PSC)を用いた新規三次元培養系の構築を通じて、仮説の実証を進めることを目的とする。本年度は、特許出願した新規三次元培養法を用い、ヒト膵癌で典型的にみられる間質組織の厚みを複数PSCで再現することに成功したが、昨年度に行ったこれらの三次元組織の分子生物学的解析では、三次元培養によるPSCの多層化に伴いコラーゲン分泌などがむしろ減少することが再現良く示された。ただし、追加で行った初期的な検討では膵がん細胞との共培養系において、三次元培養したときにのみPSCのコラーゲン分泌が増加する場合も存在することがわかった。以上のことは、まず膵癌の間質組織を三次元培養法によってモデル化するにあたり、膵がん患者間質組織由来PSCのみを用いるのでは十分に病態を反映しきれない可能性を示唆している。また、三次元培養時にPSCの腫瘍由来液性因子に対する応答性が平面培養時とは変化することから、PSCの活性化機序に関してこれまで得られてきた知見が不十分である可能性を意味するように思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、膵がんの治療効果はここ30年来ほとんど改善しておらず、とくに手術適応のない進行性膵がんでは抗腫瘍剤が主な治療法だが、平均予後が6か月未満と特に短く、投与薬剤が十分有効には奏功していないと考えられることのメカニズムを、新規実験系の構築を通じて解析することである。最近ナノ薬剤であるアルブミンパクリタキセル(アブラキサン)が予後延長を示し臨床認可されたが、どのような患者では奏功しにくいのかまだ十分には明らかではない。この現状を踏まえ、本研究では、抗腫瘍薬剤の奏功程度を左右する原因を薬剤送達経路としての腫瘍細胞以外の腫瘍組織構築因子すなわち腫瘍間質に求め、PSCを用いた新規三次元培養系の構築を通じて、仮説の実証を進めることを、目的としている。これにたいして、おおむね順調な進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、膵がんに対するナノ薬剤送達を実現するにあたり、送達における主要な障害要因を構成していると我々が考えている間質組織に引き続き着目し、間質組織の主たる構成細胞であるPSCが薬剤送達を阻害する機序の解明を目指す。具体的には、既に我々が報告したように間質成分の増加がナノ薬剤送達及びその薬効を減弱させること(J Cont Release, 2016)、あるいは豊富な間質組織におけるPSCのコラーゲン分泌が薬剤送達を減弱させることが報告されていることを受け、より臨床的に妥当なPSCを用いた膵がん間質組織のin vitro三次元培養モデルの構築を引き続き推進する。また、膵がんにおける間質組織の制御を指向し、PSCによるコラーゲン分泌の制御機序を解析する。これまでの本研究から、まず膵癌の間質組織を三次元培養法によってモデル化するにあたり、膵がん患者間質組織由来PSCのみを用いるのでは十分に病態を反映しきれない可能性を示唆している。また、三次元培養時にPSCの腫瘍由来液性因子に対する応答性が平面培養時とは変化することから、PSCの活性化機序に関してこれまで得られてきた知見が不十分である可能性を意味するように思われた。したがって、本年度はPSC立体培養系に腫瘍細胞以外にも、マクロファージなどの腫瘍微小環境に存在する様々な細胞種を追加する複合的なモデルを構築することを試みつつ、並行してPSCの活性化機序、とりわけコラーゲン分泌がどのように制御されているかを詳細に解析し、本研究を推進する。
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Causes of Carryover |
本年度研究進捗内容が、予定していた予算額よりも少ない額で実現できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として物品費(実験消耗品費)として用いる予定である。
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Research Products
(4 results)