2015 Fiscal Year Annual Research Report
免疫不全症・免疫異常症を背景とする血球減少症の分子基盤の解明
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26293244
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30239628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 收 公益財団法人かずさDNA研究所, 技術開発研究部, 副所長・部長 (20370926)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫学 / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
毛細血管拡張小脳失調症、分類不能免疫不全症(CVID)を呈するPI3キナーゼδ鎖機能獲得型変異などにおいて、germ line transcriptionの偏り、VHレパートア解析、CDR3長の検討を行い、その偏りについて明らかにした。また平成27年以降に明らかになったCTLA4異常症、IKZ1異常症(論文投稿中)などでレパートアの偏倚とCDR3長の異常などを明らかにしている。またCVIDを呈するPI3キナーゼδ鎖機能獲得型変異やSTAT1異常症での血球貪食については過剰なIFNγ産生を中心に解析しており、後者では国際共同で臨床データをまとめて投稿した。 CVIDの責任遺伝子探索からは日本では初の既知遺伝子変異(TRNA1)や、結節性多発動脈炎関連責任遺伝子(CECR1:ADA2)、そのほかの候補遺伝子が複数以上リストアップされている。その中でも2つについては新規遺伝子であり、ともに血球分化に関与する分子であるが、その分化調節機構の詳細については明らかになっておらず、血球分化段階各所において細胞をソーティングし、RNASeqで当該分子を含む発現解析を行い、またiPS細胞などのモデル系の作成に着手した。これらの2つの分子は、血球減少の原因としての幹細胞あるいは分化異常症に属するものとして、転写調節や細胞死を中心に検討を進めた。 また本年度はAIHAや慢性ITP、好中球減少症ではCTLA4異常症やIKZF1異常症などが背景としてあることを明らかにした。いわゆるSLE cohortからはCTLA4, IKZF1, TNFAIP3(A20)などが浮かび上がってきており、いわゆる慢性ITPやEvans症候群には様々な分子的背景が潜んでいることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に経過し、ほぼ予定を達成している。血球減少を伴う免疫不全症という括りで解析を継続してきたが、平成27年度にはCTLA4遺伝子異常が報告され、その国内症例を集積し、また新たにIKZF1遺伝子異常を同定して、論文投稿に至っている。これらでは自己免疫学的機序によりAIHA, ITPの合併を呈している。またSTAT1異常症においては血球貪食を呈する症例があることを国際共同調査で明らかにした。さらに、新規遺伝子として同定した1つの分子は今まではType Iインターフェロン等に関与するとされてきたが、実際には骨髄内では特定の系列で血球分化が停止しており、おそらく細胞死等での分化停止ではないかと考えている。これらから、血球減少の原因として挙げた、自己免疫、血球分化、血球貪食、細胞死それぞれにおいて仮説が正しいことが検証されつつある。その中でレパートアの偏りの検出は可能であるものの、自己反応性クローンを明らかにするためには、モデル系を作成するなど工夫が必要と考えている。 責任遺伝子探索についても症例を加えて検討が進んでいる。思いがけない既知責任遺伝子が明らかになる場合もあり、また新規責任遺伝子候補も上がってきている状況である。一方RNASeqを用いた探索には至っておらず、今後その利活用法については検討が必要と考えている。 AIHAや慢性ITPを呈する患者においても、特に小児期発症のEvans症候群においては単一遺伝子異常を示すことがあることが明らかになった。一部の微生物に対する易感染性を呈する症例などでも遺伝子異常が検出されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最終年度にあたり、今まで明らかになった抗体の多様性の異常の意義を探り、血球貪食に至るシグナル系・転写系異常、新しく同定された遺伝子異常に的を絞って、血球減少の原因を詳らかにする方針である。得られた結果は、AIHA、ITP、Evans症候群などに外挿し、その疾患背景を探索する。 具体的には以下の方略で検討を進めることを考えている。血球分化に関する責任遺伝子としては、IKZF1と新規同定された責任遺伝子があげられる。新規責任遺伝子については、knock in細胞株、iPS細胞、あるいはknock inマウスを作成して、その転写調節や分化過程での役割を明らかにする。また今までの分化系の仕事の多くはマウスで行われており、ヒト骨髄等も用いて、分化各段階で体系的発現解析を行いたい。血球貪食や細胞死については、前者では遺伝子異常と貪食細胞の活性化に関わるサイトカイン産生の関わり、後者では細胞死に至る分子機構(ROS産生、栄養枯渇、オートファジーなど)を明らかにしたい。 今後においてもまだ原因不明の血球減少を呈する免疫不全症の責任遺伝子探索が必要である。これらについては、解析のパイプラインを洗練し、より高い確度で遺伝子を同定することを試みる。また一般的な疾患であるAIHA, 慢性ITP、慢性好中球減少症あるいはその組み合わせにおいては、既知遺伝子をパネルとして検索するとともに、全エクソン解析、バーコーディング化を応用した次世代シークエンサーによるcopy number変化の検出(欠失や重複の検出)、発現解析等を駆使して、検討を行いたいと考えている。責任遺伝子の同定からはさらに分子機構の解明が必要であり、その方向性で本研究を推進していきたい。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Allogeneic stem cell transplantation for X-linked agammaglobulinemia using reduced intensity conditioning as a model of the reconstitution of humoral immunity.2016
Author(s)
Ikegame K, Imai K, Yamashita M, Hoshino A, Kanegane H, Morio T, Kaida K, Inoue T, Soma T, Tamaki H, Okada M, Ogawa H.
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Journal Title
J Hematol Oncol.
Volume: 9
Pages: 9
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The extended phenotype of LPS-responsive beige-like anchor protein (LRBA) deficiency.2016
Author(s)
Gamez-Diaz L, August D, Stepensky P, Revel-Vilk S, Seidel MG, Mituiki N, Morio T, Worth AJ, Blessing J, Van de Veerdonk F, Feuchtinger T, Kanariou M, Schmitt-GA Jung S, Seneviratne S, Burns S, Belohradsky BH, Rezaei N, Bakhtiar S, Speckmann C, Jordan M, Grimbacher B.
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Journal Title
J. Allergy Clin. Immunol.
Volume: 137
Pages: 223-230
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Novel compound heterozygous DNA ligase IV mutations in an adolescent with a slowly-progressing radiosensitive-severe combined immunodeficiency.2015
Author(s)
Tamura S, Higuchi K, Tamaki M, Inoue C,Awazawa R,Mitsuki N,Nakazawa Y,Mishima H,Takahashi K, Kondo O,Imai K, Morio T, Ohara O, Ogi T, Furukawa F, Inoue M, Yoshiura K, Kanazawa N.
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Journal Title
Clin. Immunol.
Volume: 160
Pages: 255-260
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] RAG1 Deficiency May Present Clinically as Selective IgA Deficiency.2015
Author(s)
Kato T, Crestani E, Kamae C, Honma K, Yokosuka T, Ikegawa T, Nishida N, Kanegane H, Wada T, Yachie A, Ohara O, Morio T, Notarangelo LD, Imai K, Nonoyama S.
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Journal Title
J. Clin. Immunol.
Volume: 35
Pages: 280-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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