2015 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪幹細胞およびiPS細胞を用いた肺再生医療の開発
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26293316
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥村 明之進 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 正人 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
井上 匡美 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10379232)
川村 知裕 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30528675)
舟木 壮一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50464251)
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (70190402)
新谷 康 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90572983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺再生 / 脂肪幹細胞 / iPS細胞 / アディポネクチン / HGF / PGI2 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患COPDは非可逆性の肺胞破壊を特徴とする慢性進行性の肺疾患であり、COPDの新たな治療法の開発は急務であり、またそれは肺胞再生にチャレンジすることに他ならない。 肺障害モデルとして、アディポネクチン(APN)・ノックアウトマウス、エラスターゼ吸入によるCOPD誘導マウス、ブレオマイシンによる間質性肺炎誘導マウス、リポポリサッカライドによる急性肺障害マウスを用いた。いずれも、肺障害を認め、血中の炎症性サイトカインの上昇を認め、抗炎症性サイトカインの減少を認めた。 肺障害マウスに対して、健常なマウスから採取した脂肪から脂肪幹細胞を採取し、経静脈的または細胞シートとして胸腔へ移植することによって、損傷部位に移植細胞が集積し、HGFやAPNが局所で供給され肺障害の進行を抑制できる可能性を示した。脂肪幹細胞補充によるサイトカイン誘導は微量であり、肺再生を誘発するためには不十分であった。組織中の肝細胞増殖因子HGF発現を上昇させる薬剤として、プロスタグランディンI2アナログに注目し、同薬剤の投与によりHGF発現の上昇を通して肺再生を促す結果を得た。さらに同薬剤の投与は皮下注射で行っていたが、細胞移植の際にシート状に使用することで、局所効果を増強することを示した。 また肺再生に必須と考えているII型肺胞細胞をiPS細胞から作成するために、様々な成長因子を用いて、そのプロトコールを作成し、現在数種類のiPS細胞を用いて普遍的な分化誘導法を検討している。肺胞前駆細胞、肺胞上皮細胞の分化マーカーとして、Surfactant protein-C(SPC)、Thyroid transcription factor-1(TTF1)を利用し、継続して効率のよい分化誘導法を探索している。また、実際に分化誘導した細胞を標識して、上記と同様に肺障害マウスへの移植を考慮している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度には、主として、脂肪幹細胞補充による肺障害マウスの解析を行った。脂肪幹細胞補充による肺傷害修復については、現象として一定しており、そのメカニズムや効率の良い投与法を検討していく必要がある。またさらに、肺機能の改善を呼吸機能の改善や多光子励起顕微鏡と超偏極129Xe-MRIを導入して行っていく。 また、平成27年度には、iPS細胞から分化誘導した細胞を用いて、疾患マウスモデルへの細胞移植実験を行う予定であったが、効率のよい分化誘導を行わなければ腫瘍形成などの有害事象が起こり得るため、ヒトiPS細胞を用いた細胞治療の臨床応用を目指した安全性の検討へ研究を進めることができない。本年度も引き続き、マウスiPS細胞の分化誘導法を検討し、動物への投与実験を行い、肺機能や肺組織に及ぼす影響を観察する必要がある。 また動物実験に並行して、脂肪幹細胞やiPS細胞を用いて、各種間質細胞および細胞外器質を用いた共培養系(三次元培養)を確立し、生体内微小環境を再現することで、In vitroでの器官形成を再現する試みを行っており、生体内に近い状況での組織修復・再生のメカニズムの解明につながる実験系の確立が急務である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き肺再生を客観的に評価するため、肺疾患マウスを、CTによる肺評価、肺血流シンチグラム、超偏極129Xe-MRIなど種々の動物イメージング装置によって客観的に肺修復・再生を評価していく。とくに、マウスの呼吸機能測定(フローボリュームFV曲線とボディプチスモグラフ、静肺コンプライアンスC-STAT)により、肺機能改善を数値化していく手法を確立したため、本研究に導入していく。 さらに、マウスiPS細胞の分化誘導法を基礎としたヒトiPS細胞のII型肺胞上皮への分化誘導法を開発する。数種類のマウスiPS細胞を用いることで、普遍的な分化誘導法を確立する。また、マウスiPS細胞やヒトiPS細胞を用いて、組織構築のために必要な呼吸器上皮における培養維持法を確立する。ラミニンを中心とした細胞外基質を用いて、細胞分化誘導への影響を解析し、肺胞上皮培養条件を最適化していく。実際、気相液相界面を用いた肺胞上皮培養法にはラミニンが必要であることを示しつつある。 次いで、3次元培養法を検討し、さらに脱細胞化した肺、組織が同細胞の足場として働き、iPS細胞の分化・生着に関連することを検討する。実際に、同細胞を肺実質の脱細胞化肺構造(組織のスライス切片や肺構造を残して脱細胞化することによって作成した肺スカフォールド構造)に還流することで、その生着効率を評価し、肺構造の構築を評価する。とくに健常肺や疾患肺を用いて、組織生着の相違を検討し、組織修復への関与を解析する。 今後の安全性の検討のため、ラットなど異なる小動物やブタなどの大動物を用いて、肺表面に作成した細胞シートを貼付する群と、細胞を肺動脈内投与する群にわけて、生体内での移植細胞の動向を解析することで、移植細胞の安全性および肺再生効果を検討する必要があり、随時各動物種から細胞採取、分化、投与実験を進めていきたい。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Carnosol Is a Potent Lung Protective Agent: Experimental Study on Mice.2015
Author(s)
Kawamura T,Momozane T, Funaki S, Shintani Y, Inoue M, Minami M, Sugimura K, Iida O, Fuchino H, Kawahara N, Takemori H, Okumura M
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Journal Title
Transplant Procedings
Volume: 47
Pages: 1657-61
DOI
Peer Reviewed
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