2015 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄幹細胞由来の新規抗炎症性マクロファージ誘導因子を用いた末梢神経再生療法の開発
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26293427
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 朗仁 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50244083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊佐 正 生理学研究所, 発達生理学研究系認知行動発達機構研究部門, 教授 (20212805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経再生 / 顔面神経 / マクロファージ / 炎症制御 / 瘢痕形成抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本件研究は、ケモカインMCP-1とシアル酸認識レクチンの細胞外領域sSiglec-9の2因子で構成される「歯髄幹細胞由来の新規抗炎症性M2マクロファージ誘導因子」用いた末梢神経再生療法の開発を目指している。これまでに以下の8点を明らかにした。(1)ラット片側顔面神経(顔面神経頬筋枝と下顎縁枝)の5mm切除で、鼻毛運動機能は完全に麻痺する。受傷後6週たっても全く運動機能が回復しない。(2)歯髄幹細胞移植、無血清培養上清(CM)及びMCP-1/sSiglec-9投与によって、鼻毛運動機能は正常側と区別が付かないまでに同調して回復する。(3)歯髄幹細胞CMからMCP-1/sSiglec-9を除去すると、その治療効果が著しく減弱する。(4)ラット顔面神経5mm切除後PBSを投与すると線維化瘢痕組織が形成されるが、歯髄幹細胞CMやMCP-1/sSiglec-9投与群では、瘢痕組織が形成されず神経軸索が再生される。(5)ミエリンと神経軸索の直径計測から、再生した軸索は正常軸索とほぼ同等な神経伝達機能を持つことが示唆された。(6)治療介入後24時間、末梢神経切除部位の炎症環境はM1炎症環境から抗炎症性M2環境に変化した。(7)骨髄マクロファージをMCP-1/sSiglec-9でM2誘導し、遺伝子発現をqPCR法で検討したところ、M2マクロファージはシュワン細胞の増殖、集積、分化に関わる分子を多く発現していた。(8)シュワン細胞をM2マクロファージの培養上清で培養したところ、シュワン細胞の増殖、集積、分化活性が著しく上昇した。以上の解析結果の中で(5)~(8)は平成27年度に得られた解析結果である。現在論文製作中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)M2によるシュワン細胞の活性制御効果の検証:M2-CMを制作しヒトシュワン細胞株を24時間培養した。WST8 assayでシュワン細胞の増殖活性を評価した。コントロールCMと比べ2倍の有意な増殖活性の上昇を示した。Transwell migration assayでシュワン細胞の集積効果を評価した。Transwell膜を通り向けた細胞数はM2-CMがコントロール群の2倍で有意な走化活性の上昇を示した。M2-CMによるシュワン細胞の分化誘導活性化は、培養後のシュワン細胞の定量的PCRによる遺伝子発現解析によって解析した。M2-CM群では脱分化した増殖型シュワン細胞が未成熟シュワン細胞に分化するのに不可欠な遺伝子Oct-6, 成熟シュワン細胞に特異的に発現する(Krox-20, MBP, P0)遺伝子、さらに成熟型シュワン細胞の維持に不可欠な栄養因子(Bdnf, Igf-1)の発現上昇を確認した。 (2)M2による経細胞の軸索伸長効果:マウス小脳顆粒細胞を採取した。MAGなどのミエリンタンパクコートした培養皿の上では神経突起が伸びないが、M2-CMで培養すると神経突起の伸長活性が回復する。DRG神経細胞でも同様な解析結果を得た。 (3)MCP-1/sSiglec-9で誘導したM2の網羅的な性状解析 :これまでにM2誘導に伴い以下の遺伝子上昇を確認した。抗炎症性M2マーカーであるマンノースレセプターCD206, NO産生と線維化阻害酵素Ag-1, シュワン細胞の増殖分化を活性化するInsulin growth factor, Neuregulin-1. BDNF, シュワン細胞の維持を促すVEGF. シュワン細胞増殖因子CNTF, HGF. 解析の結果、MCP-1/sSiglec-9で誘導したM2はシュワン細胞の増殖、分化、集積を促す因子を多く発現することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
顔面神経損傷モデルの薬効最小有効量の決定 表情筋運動のスクリーニングテストを用いて、MCP-1/レクチンBの最小有効濃度を探る。 最小有効量の50~100倍量のMCP-1/レクチンBを投与し治療安全性を評価する。具体的には、マウスの一般動態、末梢血の血液検査、各種臓器を取り出して組織標本を作成し病理学的に評価する。 以上の2年間の研究計画により、最小有効量が決定したタンパク複合体を作製し、新規末梢神経治療薬の医師主導臨床研究を開始する環境を整えるとともに、製剤化への基盤を構築する。
MCP-1/sSiglec-9による末梢神経再生にM2マクロファージが果たす役割を示すため、mannosylated clodrosomeを使ってM2マクロファージを特異的破壊する。組織再生の場の環境や末梢神経再生を評価し、M2による神経再生効果を評価する
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Causes of Carryover |
誘導したマクロファージの性状解析のため、受託でマイクロアレー解析を行う予定である。当初は本年度の実行計画に含めたが来年度に対応することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
受託でマイクロアレー解析を行う
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Research Products
(4 results)