2014 Fiscal Year Annual Research Report
Positive Devianceアプローチによる医療関連感染予防の新たな戦略
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26293447
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
前田 ひとみ 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (90183607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 久子 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (00230285)
河村 洋子 熊本大学, 政策創造研究教育センター, 准教授 (00568719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療関連感染防止対策 / Positive Deviance / 地域連携 / 看護学 / 国際情報交換(米国) |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる今年度は①医療機関におけるPositive Deviance(PD)同定のための方法の確立と組織作り並びに②モデル地域で分離された耐性菌の遺伝子解析のための耐性菌情報収集のネットワーク作りと解析システムの整備を行った。 ①については、組織の中の「埋もれた知恵」を引き出す方法を検討するために、諸外国でPDアプローチによる成果をあげているテキサス大学のDr.Shinghalのワークショップに参加し、対話を有効に進めるための方法について学んだ。さらに、PDは新しい概念であることから、モデル地域においてDr.Shinghalの講演会を実施した。その結果、数施設から研究協力の内諾を得ることができた。 さらに、PD行動の普及方法を検討するために、PDアプローチにより医療関連感染予防対策に成功している米国のBillings Clinicとコロンビア共和国のEL Tunal病院を訪問し、「埋もれた知恵」を引き出すための対話の実際や普及のための教育方法について情報を得ることができた。これらをもとに、来年度は、耐性菌感染の発生率が高く、蔓延しやすい集中治療室を対象に日本の医療機関の特徴や風土に合わせたPD行動の同定と普及方法を検討する予定である。 また、②についてはモデル地域で検出された耐性菌情報収集のためのネットワークを作成した。その結果、モデル地域の28医療機関の情報収集が可能となった。来年度は、これらのネットワークを活用して、PDアプローチの評価の一つとして耐性菌サーベイランスの基礎データの収集と遺伝子解析法を用いた耐性菌クローンの同定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初年度であり、研究方法の確立とデータ収集のシステム作りを目標としていた。研究の遂行にあたって、モデル地域での医療機関から研究協力の内諾を得ることができた。そして、組織の中の「埋もれた知恵」を引き出すためのアプローチ方法を明確にすることができた。 また、地域の医療機関で分離された耐性菌を収集するためのネットワークを構築することができ、遺伝子解析やクローンの同定に必要な機器も購入した。そのため、来年度は予定通りにPD行動の同定と普及方法の検討や遺伝子解析法を用いた耐性菌クローンの同定に取り組める状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、耐性菌感染の発生率が高く、蔓延しやすい集中治療室のMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)予防対策に焦点をあて、有効なPD行動の引き出しに取り組む。PDアプローチの評価指標の一つである耐性菌感染の基礎データを得るために、研究参加の同意が得られた集中治療室の入院時MRSAの全数調査を実施する。 参加医療機関の特徴や風土に合わせて「埋もれた知恵」を探し、感染予防対策への効果を検証する。さらに研究協力の内諾を得られている中規模医療機関で「埋もれた知恵」を探すための対話を開始する。また、モデル地域の耐性菌発生動向をもとに近年増加している耐性菌数種類について遺伝子解析法を用いた耐性菌クローンの同定を行い、耐性菌感染の経路の解析を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定の機器が当初予定よりも安く購入できたことや他施設の機器が使用可能になったことから、物品費が予定額より少なくなった。また耐性菌の遺伝子解析のための消耗品の購入を予定していたが、今年度は資料収集のためのネットワーク作りが主となったため、分離株の解析までには至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、地域全体を視野に入れた耐性菌の同定を行う予定であり、これらに伴う試薬・消耗品並びに解析の補助者の人件費に使用する予定である。
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