2015 Fiscal Year Annual Research Report
幕末から明治維新期の日仏両国関係からみた男子服意匠の経緯と実態
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26300002
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
徳山 孝子 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (10271470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
打田 素之 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (20368492)
木谷 吉克 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (40186250)
笹崎 綾野 佐野短期大学, その他部局等, 准教授 (60724010)
中村 茂 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (80128834)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フランス・パリ / 幕末から明治期 / 洋装化 / 明治天皇 / 礼服・軍服 / S・ブーシェ / パリ万国博覧会 / 紳士服(TAILLEUR) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、両国関係者によるコミュニケーションの具体的経緯と男子服意匠の導入経過を明らかにすることで、我が国の洋装文化形成の最も初期の段階に果たした日仏間の交流の実態と意義を解明することを目的とする。 今年度は、徳川昭武の購入した領収書(東京大学史料編纂所蔵、民部大輔)の発見から日仏間の交流が明らかになった。1867年4月26日に徳川昭武(民部大輔)一行が日本人として訪れ,洋服を購入した。1か月後の5月26日には、民部大輔用達申渡書が交わされた。商用名刺には、創作した葵紋に刀や剣、日章旗のマーク「FOURNISSEURS BREVETES DE SAI LE PRINCE MIMBOU TAYO-DONO」が記された。男子服の普及・発達は,発祥経路の一つに洋裁店「エス・ブーシェ」の存在が多大であったことが明らかとなった。1882年3月28日エス・ブーシェ会社は解散した。幕末期から明治初期において洋裁店「エス・ブーシェ」と日本人の交流は、男子服史において歴史的に重要な位置を占めた。 次に明治5年に着用した明治天皇の軍服に装飾している金モールに着目した。金モール刺繍を日本で製織するようになったきっかけ、製織技術の伝来、製織し始めた人物を明らかにした。中野要蔵は、東京・日本橋区呉服町で「中野屋」という名で洋織物商を営んでいた。最初は、慶応時代に輸入業を始め、外国武官、外交官が来朝した際に、はじめて金モールが何であるかを知ったとされている。1872年の服装制定により、モールが肩章などに多用されることとなった。当初は輸入品で間に合わせていたが不便であったため、機械を購入して金モールを製造し始めたことがわかった。明治12年製造に着手して以来、各地で需要が高まり、東洋派遣米国海軍からの注文、特約店に命ぜられ、宮内省の御用達にもなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幕末期における「洋装化」の実態について研究を進めてきた。特に,諸外国(フランス)との交流のなかで、日本といち早く関係をもった洋裁店「エス・ブーシェ」は、日本の洋装化を進めるきっかけにもなった。1867年4月26日に徳川昭武(民部大輔)一行が日本人として訪れ,洋服を購入した領収書を見出した。その領収書をきっかけに1か月後の5月26日には、民部大輔用達申渡書が交わされたこともわかった。「外国君拾帖」には、エス・ブーシェの商用名刺も残されていた。商用名刺には, ギャルリー・ド・パリの店名の下にイタリアン通り29番地の住所が記されていた。我が国の洋装文化形成の最も初期の段階に果たした日仏間の交流の実態が明らかになった。 AICP校に発注したと思われる明治天皇の絵型は、AICP校の初代校長F.ラドベスの残した雑誌から収集・分析をした。男子服の製作技術の導入を明らかにする貴重な資料であった。F.ラドベスの雑誌からは、AICP校1830年創設にもかかわらず、商業年鑑の年号と合わないことに気付いた。今後は、初代校長F.ラドベスの歴史的背景の調査が必要である。さらには、F.ラドベスの雑誌から男子服意匠や被服構成の視点から分析する。 今年度の研究成果は、次の研究発表1件であった。 研究代表者徳山孝子「幕末から明治期における金モール刺繍」、一般社団法人日本家政学会第67回大会、2015年5月15日発表。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の補完的調査を続行する。さらに、28年度は次の内容を研究調査する。 ①日本政府(当時の宮内省)がフランスに発注した記録は『御用度録』(宮内庁宮内公文書館蔵)にすでに明らかにしたが、フランス側の注文書や記録が発見されていない。明治天皇の礼服や軍服の発注記録を各図書館、史料館、博物館、美術館から文献調査し、明治天皇の洋装化への経緯と実態を明らかにする。 ②明治天皇の絵型を発注したと思われるAICP校の初代校長F.ラドベスの歴史的背景を明らかにする。 ③AICP校の初代校長F.ラドベスが残したテイラーのイラストと型紙を意匠や被服構成の視点から分析するとともに、日本の製作技術の導入について検証する。 ④幕末から明治維新期にかけて渡仏した下級武士の記録を分析するとともに、日本に残されている記録を基に外交文書及び関係資料を発見する。
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Causes of Carryover |
平成27年11月13日 フランス国パリで同時多発テロが発生するなど現地の治安が悪化し、現地調査が困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、フランス政府は国家緊急体制を構築し、非常事態宣言を布告している。治安回復を見込み、平成28年4月に現地調査を実施し、平成28年6月に研究会を開催することにした。なお、政情が回復しない場合は、調査の延期を行う。
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Research Products
(1 results)