2014 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジアにおける大型家畜利用の再評価―ラクダ牧畜の変遷を中心に
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26300013
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
今村 薫 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (40288444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 成也 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 教授 (30192587)
石井 智美 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (50320544)
星野 仏方 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (80438366)
風戸 真理 北星学園大学短期大学部, 短期大学部, 講師 (90452292)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大型家畜 / ラクダ / 生態学的調査 / 人類学的調査 / カザフスタン / 中央アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の初年度であり、カザフスタンにおける大型家畜飼育の現状を調査するための調査地選定を広くおこなった。同時に、ラクダ、馬など大型家畜飼育の状況を調査した。4月から5月にかけて、代表者(今村)がカザフスタン西部の乾燥地域(アラル海周辺)において、大型家畜飼育の分布と現状の調査を行った。さらに、8月にメンバー全員でカザフスタン東部山岳地帯および、中部イリ河周辺地域において広域調査を行うと同時に、次年度の本調査へ向けて各自が予備調査をおこない、研究体制を構築した。 次年度へ向けた準備として、(1)調査地の選定、(2)カザフスタンの関連研究者との連携と情報交換、(3)アルファラビ大学との関係強化をおこなった。以下に項目ごとに説明する。 (1)家畜の生態、行動、遺伝、利用法、文化について総合的に研究できる調査地を選定するため、アルファラビ大の協力を得てキルギス国境の集落とイリ川河畔の集落に滞在した。そして山岳地帯と低地の家畜の種類、牧畜方法の比較をおこなった。また、家畜にGPSをつけて家畜の行動調査を予備的におこなった。牧畜技術、乳加工の方法についての聞き込み調査も行った。調査を受け入れてくれる酪農家を探し、最終的にアルマトィから西へ100キロの場所にあるアクティ村の酪農家から次回(2015年以降)の調査の承諾を取り付けた。 (2)現地の植物学者、畜産学者、遺伝学者、人類学者と会い、今後の研究協力体制について話し合った。家畜の血液、乳などの資料を現地でどのように保存し、どのように分析するかについて、また、必要に応じて日本に持ち帰るための手段、ルートについても話を詰めた。 (3)これまでのアルファラビ大との協力体制を強化し、日本チームの研究結果をどのような形で発表し、いかにして成果をカザフスタンに還元できるかについてヌルタジン教授を中心に話し合った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初年度であり、本格的なデータ収集までには至らなかったが、次年度へ向けて、調査地の選定、カザフスタンの関連研究者との連携と情報交換、アルファラビ大学との関係強化などをおこなうことができ、本年度の目標はおおむね達成できた。 カザフスタン国内における家畜の分布について、乾燥地および西部地帯のラクダ優位、東部、北部の草原地帯および東南部山岳地帯におけるウマ優位という一定の結論を出すことができた。また、研究を進めるうちに、純系カザフスタン産フタコブラクダの数が急激に減少しているという新たな問題を発見することができた。現場に足を運ぶことで、問題が浮き彫りになりカザフスタンの研究者からも研究協力の要請を受けることになった。 帰国後も、平成27年度の総合調査を成功させるため、カザフスタンの研究者とメールなどで緊密に連絡をとり、情報交換や研究計画について意見を交わしている。 26年度の研究成果については、研究代表者および研究分担者が、学会や学会誌などで各自順当に成果報告をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、選定した調査地で、調査機器と分析方法を明瞭にし、研究者間の役割分担などの調査体制を整えて、ラクダ畜産を中心に生態、行動、遺伝、酪農、人類学のそれぞれの観点から総合的に調査を推進する。 このような研究体制のプロトコルをいったん築くことができれば、カザフスタン西部のさらに乾燥の強いところでも調査を進める予定である。 同時に、現地で深刻化している純系カザフスタン産フタコブラクダの減少について、現地の研究者と協力して研究をすすめ、解決へ向けてなんらかの方策を助言したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初は、地上で集めた生態学的資料に合わせて、衛星画像を購入する予定だった。衛星画像は高額なので、その分の研究資金を分担金として受け取っていた。しかし、26年度は初年度で十分な現地調査を行うことができず、思ったほど生態系の資料が集まらなかった。それにより、26年度はスカイサットの衛星画像の購入を見送り、次年度に資金をまわすことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に集中的に現地調査をすすめ、バイオマス、植生、家畜の行動経路などの資料を収集する。そのうえで、直近に撮影されたスカイサットの衛星画像を購入する予定である。 また、27年度の現地調査には、植物の専門家や調査助手を現地で雇う必要があるので、このための人件費・謝金に研究費を投入する予定である。
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Research Products
(24 results)