東アジアにおける政治情報の研究－韓国・台湾のネット選挙キャンペーンを事例に

2015 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 26301012
• Research Institution: Kanazawa University
• Principal Investigator: 山本 竜大 金沢大学, 法学系, 准教授 (80632827)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 選挙 / キャンペーン / SNS / 台湾 / 韓国

Outline of Annual Research Achievements

当該年度において、中心となった活動は、まず、日本の国会議員にあたる台湾の立法委員選挙後に実施されたネット・アンケート調査の実施があげられる。2016年1月のこのアンケートでは、予算の規模、台湾の人口構成比に合わせて設計され実施された。無事、予定されたサンプル数は確保できたものの、課題もあった。その一つが、ネット・アンケートの回答者の特徴である。世界的な傾向であるが、いわゆるデジタル・デバイドの影響を完全に克服できない面があった。具体的には、比較的年齢が高めの女性の回答率が他の世代、男性に比べ、低めになった。比率として、バイアスが出るほどではないが、調査方法としての課題を再度認識させられた。また、回答者の特徴として、投票参加者による回答比率が著しく高かったことである。今回の選挙は、台湾の民進党が政権交代を果たすことが確実視されていた。しかし、過去の推移と比較すると、実際の投票率は一段低くかった。この点は、今後の分析において、留意する点、「ネット有権者」の特徴と一般的傾向の差異を検証する必要があると思われる。
また、SNSデータの収集も試みた。台湾ではTwitterの利用が低いため、Facebook上において候補者が発したテキストに注目した。膨大なデータ量のため、今後の分析には苦労すると思われるが、一定の一次資料が集まったと言える。
さらに、選挙後、現地において、政党や選挙管理委員会関係者と面談できる機会を得た。そこでは「選挙のアメリカ化」と「ジェンダーとキャンペーン」について参考となる話を伺えた。
そして、次年度に実施される韓国国会議員選挙に関するネット・アンケートおよびTwitterデータの収集に関する準備を進めた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

予算支出の大きな部分を占めるネットアンケートの準備・実施が台湾に関して果たされた。合わせて、仕様変更により自動収集が出来なくなったFacebookのテキストデータも収集された。量的分析については、一定のデータ獲得がなされたとみなされる。これらにより、データマイニングの分析条件は整いつつある。その一方で、しかしながら、台湾で広く利用されている繁体字用の形態素解析器を見いだせず、テキストマイニングの作業については課題を残している。
質的分析や量的分析を補完する活動として、台湾現地において主要政党のみならず、勢力を拡大した若い政党関係者にもアクセスでき、研究計画書に記した内容に近い素材を得られたと考えられる。
次年度の韓国におけるアンケート調査についても、一定の準備が進んだとみなせるため、上記の区分とした。

Strategy for Future Research Activity

韓国の総選挙が実施されるため、ネットアンケート、（選挙後に）SNS関連のテキスト情報の収集を実施する。ここで集められたデータに基づきながら、定量的分析と定性的理解を深めたい。さらに、分析にかかる環境整備にも尽力する必要がある。とりわけ、外国人研究者との協調的な環境の増進を図りたい。
研究推進の課題としては、やはり、テキストマイニングで利用すべき繁体字、ハングルに対応した形態素解析器の整備、利用方法に関してシソーラスの充実に関して検討していく。

Causes of Carryover

今年度の使用計画では、韓国でネットアンケートや関連調査を行うこととしていたが、選挙自体が翌年度に行われることとなった。そのため、今年度は調査準備に力点をおいたため、予定したより支出が少なく済み、未使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

上述に記載してあるように、韓国でのネットアンケートや関連調査に充てる。