2015 Fiscal Year Annual Research Report
比較保全ゲノミクスに基づくニューカレドニアの生物多様性創出機構解析と保全
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26304012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50325130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282315)
内山 憲太郎 国立研究開発法人 森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (40501937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物多様性ホットスポット / 生物保全 / 絶滅危惧種 / 保全ゲノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
Oxera属植物3種(O. baladica、O. pancheri、O. rugosa)を対象に、次世代シーケンサーを用いた一塩基多型(SNP)分析による集団遺伝学的解析を行った。O. baladicaは島の北中部にも分布するが、本研究では島南部の3集団のみからほぼ全個体の試料を採取し、合計76個体を対象とした。O. pancheriとO. rugosaは島南部の限られた場所にしか分布しないため、既知の全集団から全個体の試料を採取し、それぞれ7集団120個体および3集団36個体を対象とした。これらのサンプルに対してゲノムワイド変異探索を行い、遺伝的空間構造と集団動態履歴の解析を行った結果、3種でそれぞれ明瞭な遺伝的分集団が検出され、それらは各集団の地理的な位置によく対応していた。またABC法による集団動態推定では、O. rugosaは近年に地域集団が分断化した可能性が推定された。以上の結果から、各種の地域集団はそれぞれ別の保全単位として保全すべきこと、O. rugosaは人為による絶滅リスクが高いことが示された。したがって、O. rugosaの各地域集団は特に優先度の高い保全対象であると考えられた。 Oxera robusta, O. inodora, O. pancheri, O. microcalyx, O. inodora (neirifolia)の5種について、葉などの複数の組織由来の発現遺伝子の網羅的解 析を行った。各種から得られた約4,500万塩基の配列情報を元にアセンブルを 行った結果、約7万のコンティグにまとまった。 そのうち、系統関係がはっきりしている4種(O. neirifolia以外)について、 種間の塩基多型を検出し、同義置換、非同義置換の比を計算し、102座の正の自然選択のかかった遺伝子を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニューカレドニアにおける植物解析試料の採集は、現地の共同研究者の協力によりきわめて順調に進んでいる。ゲノムレベルの塩基配列情報に基づく保全遺伝学的解析は現存する野生個体が100個体未満の絶滅危惧種2種および、ニューカレドニア全体に分布する種1種について実施することができ生物保全上有益な情報を得ることができた。 mRNAの包括的解読によるトランスクリプトーム解析を5分類群について行い、種分化に伴って正の選択が働いた可能性があるゲノム領域の推定を行うことができた。 ニューカレドニアにおいて植物試料採集を行った2015年11月には、現地で本プロジェクトで主要な解析対象としているOxcera baladicaについて、保全に関わる研究集会を開催した。ニューカレドニアにおいて生物保全に関わっている研究機関、行政機関、NGOなどが参加し、本プロジェクトの研究成果を発表した。ゲノム情報を活用した適切かつ効果的な保全策の社会還元という本プロジェクトの目的の一つをある程度達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ニューカレドニアにおける共同研究者の協力を得て現地で試料採集を行う。 昨年度に採取したO. baladicaについて北部の地域集団を含めた集団遺伝学的解析を行う。また、採取済みの他種との遺伝的関係を明らかにする。 分布環境の異なるOxera属2種から新たに発現遺伝子情報を取得し、前年度まで の結果と合わせて、自然選択の働いた遺伝子を検出する。また、全ての情報を元 に、急速に種分化した同属の種分化の過程をたどる進化系統解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初、11月に採集したサンプルについて大型次世代シーケンサーの委託解析により、塩基配列の解読を行う予定であったが、核酸抽出に時間かかかり、また、海外業者への委託解析の終了に3ヶ月以上の時間を要することが判明し、年度内の支払いが不確実になったため、新年度に委託解析を行うことにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として繰り越した額は、大型次世代シーケンサーの委託解析1回分に相当するため、平成28年度の早い時期に実行・使用する。
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[Presentation] genus Oxera in the south of New Caledonia.2016
Author(s)
Kotomi Fujita, Yuji Isagi, Gildas Gatable, Manato Fushimi
Organizer
The 13th International Symposium on Integrated Field Science: Conservation and Utilization of Biodiversity
Place of Presentation
Graduate School of Agriculture, Tohoku University
Year and Date
2016-03-10 – 2016-03-10
Int'l Joint Research
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