2016 Fiscal Year Research-status Report
へき地の周産期母子と都市病院のつながり支援システムの開発評価
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26330360
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
皆月 昭則 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (90363712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スマートフォン / 看護過程 / 医療情報 / 周産期 / マタニティ / 地域 / つながり / オープンデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
地域の課題抽出のため,北海道内の市町村の人口データと分娩可能な医療機関までの経路データを使用してアプリケーションで可視化・分析した.分析では,分娩可能な医療機関までの自動車による移動時間を計算導出し,ヒートマップとランキング表示した.計算手法は,オープンデータを用いたメッシュ統計データの合成演算によって,根室・釧路地域における分娩可能な医療機関までの移動時の課題が大きいことを可視化によって明確にした.特に根室市の場合は,全道で最も移動における時間距離が長く,分娩可能な医療機関までは,渋滞なしで速度60km/h走行の理想条件のもとで演算すると,30分を超える時間距離の範囲が,根室市の人口の98%(約26,000人)が該当することが判明した.この導出結果によって,長距離移動マタニティの存在を示唆しながら,地域のマタニティの支援策の重要性を検討した.拙研究室の三好邦彦研究員が開発した可視化アプリケーション(Seseki)の特徴は,白地図に市町村をゾーニングした箇所に濃淡彩色したヒートマップ表示が可能で,演算結果のランキング表示を自動作成することが可能である.ランキングデータとヒートマップ表示は,医療機関の位置情報と経路(全道の道路網)データを重ねた市町村ごとの導出結果を公開した.へき地のマタニティ支援を継続しているスマートフォン向けアプリ開発では,前年度の陣痛アプリが出産期の1ヶ月期間に限定した使用であったことを見直し,妊娠期の10ヶ月期間にわたり使用できるように設計を見直し,検証して公開配付した.研究課題の周産期という期間には1歳までの子育て期も含まれるため,支援アプリを開発して公開配付した.研究開発の取り組みは,前年度に続き,内閣府の平成28年度表彰を受けた.また,研究開発したスマートフォン向けアプリの公開配付ホームページをつなぐNEXTプロジェクトの名称に改め一新した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計を見直したアプリケーションは,出産予定日の確定診断が得られたマタニティに対して妊娠初期~後期における情報・知識の表示など,妊娠期ライフの約10ヶ月間を支援し,最終的に陣痛時の間欠時間の記録と受療行動意思決定を支援する.フロントエンド開発は, マルチプラットフォーム対応のモバイルアプリ開発言語でデバイスに依存しない環境で実装した.記録データの保存・共有などのバックエンド開発はクラウド環境に実装した.アプリケーションの主な機能としては, ①マタニティの受療行動教育支援の機能,②行政の保健機関との連携(マタニティ講座開催通知)機能,③妊娠週数に対応したマタニティ情報・知識による母胎チェック通知機能,④緊急連絡機能,⑤陣痛推移の可視化インディケータ機能,⑥腹部緊満や陣痛間隔の強さ記録機能,⑦陣痛記録の時間粒度・痛みの強さ別検索機能,⑧陣痛記録の保存・共有機能である.アプリケーションのインターフェイスの色彩デザインはスカイブルーを基調にした.色彩の検討選定の結果,人間にとって海や空など自然であることを意識できるようにし,妊娠期のマタニティの心理状態の緊張・興奮を緩和し,気持ちを落ち着かせるような色彩の学問的仮説で選定した.他にも機能選択のメニュー・陣痛推移のインディケータ表示,情報通知の表示を見直した.アプリケーション使用の初期時は,出産予定日を入力することで,使用開始の日時から出産予定日の期間の時間計算によって,現在の妊娠週数を導出する.使用開始日からアプリケーションは,出産予定日の当日まで妊娠週数に対応したマタニティ支援の情報・知識を表示する.妊娠週数ごとのマタニティの母胎と赤ちゃんの状態変化の情報・知識をプッシュ通知するようにした.妊娠初期~後期を通じて,マタニティの週数別の情報・知識は受療行動支援に重要であり,表示内容は行政の保健師・医療機関の専門家の監修協力で作成した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の陣痛アプリからマタニティ支援アプリに機能を拡張したが,陣痛間欠時間の記録時における痛みの入力処理機能に関しては,間欠時間データに付ける張り感~痛み感の入力のあいまい感の処理が未解決である.前年度は,間欠時間の記録時の機能に,腹部の張り感~痛みの感覚の尺度を,医療機関での問診の際に使用されている尺度を導入した.入力する際の感覚尺度は,臨床で医療者が使用する痛みの強さNRS(Numerical Rating Scale)に基づき,痛みが全くない状態を0,強烈な痛みを10として,11段階に対応するように実装した.痛みのエビデンス分類によって1~3を軽度,4~6を中等度,7~10を高度な痛みと判断する.問診・診療時に患者のナラティブな痛み情報で獲得していた従来に対して,医療介入前の腹部の張り(腹部緊張・緊満)~痛み(陣痛)感の情報記録にNRS値を用いた.しかし,入力データ記録とマタニティのナラティブによる感覚差がある場合も推察されるため,張り~痛みの情報記録に関して,引き続き検討開発をする.また,間欠時間の時間粒度とNRS値の並行検索抽出機能を追加したが,間欠時間データおよび痛み感データのひも付けを時間粒度の時間幅について検討をする.アプリでは,検索枠に時間幅(Hours)とNRS値(1~10)を入力することで,過去のデータを検索・抽出しリスト表示できるようにしたがユーザビリティの向上の検討も必要がある.地域の状況分析では,産科病院や産科医の集約化が進行する状況において,病院受療に際しての長距離移動が必要になった地域のマタニティに着目し,ICT(情報通信技術)による新たな支援を模索検討する.北海道の道東の根室・釧路地域の2つの地域内の13自治体すべての担当者に面談した2015年度から2年間が経過するため,長距離マタニティのかかえる課題を再度,調査収集する必要性が生じている.
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Causes of Carryover |
マタニティおよび地域貢献の継続として,スマートフォン向けアプリをダウンロード可能な状態にしている.そのため,29年度においても,研究開発したアプリのダウンロードサイト(アップルストア)の契約更新費用などが発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
契約更新費用および調査資料のまとめの物品費用に使用する計画である.
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Research Products
(23 results)
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[Presentation] 育児ケア成果の気づき支援アプリによる男女共同参画環境の考察2016
Author(s)
西川 奏, 渋谷 卓磨, 藤井 唯, 上川原 ひろみ, 山内 寿代, 皆月 昭則
Organizer
情報処理北海道シンポジウム2016(Info2016),情報処理学会北海道支部, 情報処理北海道シンポジウム2016講演論文集pp265-266
Place of Presentation
釧路公立大学(北海道釧路市芦野4丁目1番1号)
Year and Date
2016-10-01
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[Presentation] 妊婦の血糖値・血圧のコントロール支援アプリケーションの開発2016
Author(s)
西川 奏, 藤井 唯, 上川原 ひろみ, 山内 寿代, 皆月 昭則
Organizer
情報処理北海道シンポジウム2016(Info2016),情報処理学会北海道支部, 情報処理北海道シンポジウム2016講演論文集pp56-57
Place of Presentation
釧路公立大学(北海道釧路市芦野4丁目1番1号)
Year and Date
2016-10-01
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[Presentation] 情報共有・利用機構によるマタニティ支援アプリの設計と実装2016
Author(s)
渋谷 卓磨,上川原 ひろみ,若狭 節子,山根 麻美,米田 知亜紀,皆月 昭則
Organizer
情報処理北海道シンポジウム2016(Info2016),情報処理学会北海道支部, 情報処理北海道シンポジウム2016講演論文集pp52-55
Place of Presentation
釧路公立大学(北海道釧路市芦野4丁目1番1号)
Year and Date
2016-10-01
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