2014 Fiscal Year Research-status Report
引用ネットワーク分析に基づく技術融合型特許の特性に関する研究
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26330361
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
芳鐘 冬樹 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (30353428)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 図書館情報学 / 情報図書館学 / 引用分析 / 社会ネットワーク / 科学社会学 / 科学計量学 / 計量情報学 / 計量書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
技術系譜ネットワークの中で担う役割,および,技術再活用における廃れの速さの点から,技術融合型の特許の特性を明らかにすることを目的に,初年度である平成26年度は,まず,「技術融合型」について定義した上で,特許の特徴を観察するための観点と指標の定義を具体化した。そして,それらの指標を実際に用いて,分野横断的な特許引用の状況をもとに技術系譜の傾向を探った。国立情報学研究所のNTCIRテストコレクションを情報源として,公開特許公報全文データを分析に用いた。分析結果から得られた主な知見は,以下の2点である。 (1) 引用分野の多様性,すなわち,技術融合の広がりは,累積被引用数に関わらず一貫して,処理操作・運輸,化学・冶金,繊維・紙分野(国際特許分類のセクションB,C,D)では高く推移するのに対し,固定造形物分野(セクションE)では低く推移することが分かった。 (2) 電気分野(セクションH)については,特許の引用分野数の成長が非常に遅い,つまり,累積被引用数が増えても,それまでと同じ分野から繰り返し引用を受け,異なる分野からは引用されにくい傾向が観察された。 さらに,サイエンスリンケージの観点から,特許技術の基盤にある学術論文にも着目し,それらの廃れの速さについて調査した。Journal Citation Reportsの引用データ,および,SpringerLinkとScienceDirectの閲読データを分析に用いた。分析結果から得られた主な知見は,以下のとおりである。 (3) 数学・コンピュータ科学系,物理学系,農学・環境科学系の分野において,引用の長期的なオブソレッセンス(共時的被引用半減期)は,閲読の同指標と比較的よく対応していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画として挙げている(1)(2)(3)について,おおむね予定どおり進め,さらに加えて,次年度以降に向けて試験的に(4)を行った。 (1) 「技術融合型特許」に操作的定義を与える。 (2) 技術系譜のネットワークの中で担う「技術融合型特許」の役割,技術の再活用におけるそれらの廃れ(オブソレッセンス)の速さ,それぞれを観察するための観点と指標の定義について,緻密に検討し具体化する。 (3) 分析を行う準備として,各情報源(公開特許公報,Journal Citation Reportsなど)から必要項目を抽出し,データの整形を進める。 (4) (2)で設定した指標の一部(直接的な融合関係の指標など)を,(3)のデータに適用し,問題点を洗い出す。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,前年度に検討・設定した観点と指標を用いて,技術融合型の特許を特定し,技術系譜ネットワークの中で担う役割と,技術再活用における廃れの速さの点から,それらの特徴を調査する。具体的には, (1) 引用ネットワークにおける直接的な関係の多さ,間接的な媒介性・大域的な構造を考慮する影響度を,それぞれ指標で測る。計算した特許の重要度に基づいて技術融合型と非技術融合型とを比べ,前者の特徴を調査する。 (2) 廃れの速さを指標で測る。廃れの速さに関する技術融合型と非技術融合型の単純な比較と併せて,ランダムフォレストによる分類実験も行い,技術融合の広がりが廃れの速さにどう影響するかを調べる。 その際,前年度に洗い出した観点・指標の問題点を踏まえて,分析枠組みを適宜再検討しながら進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究遂行においては,計算アルゴリズムの効率化を工夫し,データ処理の負担を軽減したため,データ処理用コンピュータとして,交付申請時に予定していた金額よりも安価なコンピュータを購入して研究に用いた。そのことなどが理由で,次年度使用額が計上されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この次年度使用額は,新たなコンピュータの購入などに充て,ビッグ・データ(600万件を超える特許出願のフルテキスト)を対象にした,より高度な分析のために用いる。その他の事項については,当初の交付申請時の計画どおり,研究資料,外国語論文の校閲,学会参加の旅費などに使用する。
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Research Products
(5 results)