2014 Fiscal Year Research-status Report
学問運動の一般理論に基づくオープンアクセス運動の進展プロセスの解明
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26330364
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
三根 慎二 三重大学, 人文学部, 講師 (80468529)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オープンアクセス / 学術情報流通 / 学問運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,オープンアクセス運動の進展および成否のプロセスを,「学問運動の一般理論」(Scientific/Intellectual Movements:SIMs)と学術情報流通の観点から明らかにすることを目的としている。オープンアクセス運動の黎明期,成功分野(生物医学),失敗分野(化学)を事例として,学術情報流通状況調査とSIMs に基づく1)不満分析,2)機会分析,3)動員分析,4)フレーム分析と通して,なぜ特定分野におけるオープンアクセス運動は成功(あるいは失敗)したのか, そのプロセスを実証的に明らかにし,その理由を検討する。本研究の特色は,1)オープンアクセ スに関する先行研究ではこれまでとられてこなかった新しいアプローチに基づいて,2)オープンアクセスに対する定説・理解を新たにするという貢献ができる点にあると考える。 今年度は,調査計画を具体的に設定するため,学問運動の一般理論に基づく具体的な調査枠組みを構築することを試みた。具体的には,学問運動の一般理論に関する社会学・科学社会学分野の文献,SIMに依拠した先行研究,事例分析で扱うOA運動関連文献,OA運動の最新動向の把握を行うために,網羅的な文献収集と精読を行った。その成果をもとに,来年度以降の調査計画の構築を進めた。途中の研究成果の一部については,関連する各種セミナー・ワークショップ・講演会で発表を行うとともに,Open Access Japanにて情報発信を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学問運動の一般理論に関しては,他分野のものであるため,資料の収集と読みに想定以上の時間がかかっているが,基本書・文献等の収集・読みは行うことができている。OA運動の事例分析および最新動向の把握は,継続的に実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,1)事例分析に基づいた調査枠組みと追加調査の検討と2)OA 運動の成功分野の事例分析を行う予定である。 前年度の調査結果に基づき,成功分野と失敗分野に対する事例分析を実施するための調査枠組みを再検討する。その結果,必要な場合は OA 黎明期の追加調査を実施する。再検討した調査枠組みと調査計画により,OA運動が成功した分野を対象に,事例分析を行う。成功分野の事例分析に関しては,1999 年の E-Biomed 計画から 2009 年 NIH パブリックアクセス方針の法制化までを対象とする。学術情報流通状況調査は,文献調査から生物医学分野における学術情報流通の中心的課題を 把握し,当時の資料に基づく数的状況(学術雑誌刊行状況,電子ジャーナル率,OA ジャーナル率 等)および誰が何をどのような理由で問題と見なしていたのかを把握することで,OA 運動の前提を明らかにする。不満分析では,Harold Varmus氏(元NIH所長・PLOS創設者)に対して, PMC の前身である E-Biomed計画および NIHパブリックアクセス方針,オープンアクセス出版 社 PLOS(Public Library of Science)創設の経緯および当時とった具体的活動,彼が考える NIH パブリックアクセス方針が法制化に成功した理由等を明らかにするために,インタビュー調査あ るいはメール調査を行う。NIHパブリックアクセス方針の策定にあたっては,多くの資料がウェブ上に公開されているが,非公開資料があるため米国国立衛生研究所,米国医学図書館への訪問 調査が必須であり,資料収集とインタビュー調査を実施する。機会および動員分析では,E-Biomedと NIHパブリックアクセス方針に関連する各種文献・メディアを網羅的に検索収集し,前年度の枠組みを基盤として,内容分析とイベント分析を行う。最後に,学術情報流通状況調査,不満・ 機会・動員分析で収集した文献を対象に,フレーム分析を行う。
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Causes of Carryover |
文献複写費が想定以上にかからなかったため,3万円程度の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した金額は,継続して文献複写費に利用する。
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Research Products
(6 results)