2014 Fiscal Year Research-status Report
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26330377
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 敦 茨城大学, 人文学部, 教授 (00272104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 克行 茨城大学, 人文学部, 准教授 (30308217)
鈴木 俊哉 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 助教 (70311545)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 甲骨文字 / 文字同定 / データベース / 殷墟卜辭綜類 / 殷墟甲骨刻辭類纂 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、文字同定の困難さを判断する基準として、以下の3項目を検討した。 A) 『殷墟甲骨刻辭類纂』(姚孝遂, 1989, 以下『類纂』)が部首を決定できなかった文字で、掲出例が1例のものはISO/IEC JTC1/SC2/WG2/IRG Old Hanzi Expert Group (以下、OHEG)の説文解字排列データベースにどの程度採録されているか B) 『殷墟卜辭綜類』(島邦男, 1969, 以下『綜類』)『類纂』の見出し字で、どちらかしか掲出しておらず、両書の間での対応づけが不可能なものはどの程度あるか C) 『綜類』『類纂』の見出し字で、掲出している出現例の数が10未満のものは何項目あるか。 その結果、まずA)により、説文排列に基づく文字選定では『類纂』が抽出した151例中わずか2例しか選定できておらず、『綜類』『類纂』の比較検討を行うことが妥当であることが示された。そこでB)に関する作業を進め、見出字のみで対応付け可能なものが4割程度という、当初推定に整合する結果を得たが、文脈などを検討しても大幅な対応関係の追加は容易でないこともわかった。そこで出現例数を直接調査すべく、C)において画像処理的手法によって『綜類』『類纂』が掲出する拓本名を抽出するプログラムを開発し、各項目の掲出拓本数をカウントした。自動抽出による誤差の問題は完全には解決していないが、両書とも掲出拓本数が10個以上の項目が900項未満であり、対して1個の項目は1000項以上と見積もられた。以上より、少数出現字の同定問題は新出資料によるものではなく、従来からある問題であり、合集以前の旧著録に対する網羅的な調査が必要であることが示された。 また、本研究で開発したプログラムを現在ISO/IEC 10646標準化が進行している女書資料にも適用し、現在の符号原案の問題点について指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少数出現字の抽出について、当初想定していた省力化手法(複数の甲骨文字形表の対応づけ、あるいは部首分類困難字からの絞り込み)は適用できなかった。しかし、これらの省力化手法の検討から、既存の甲骨文字形表の編纂手法や、ISO/IEC SC2/WG2/IRG OHEGの作業手法の問題点が明らかになったとも言える。これを踏まえ、少数出現字の絞り込み手法を再検討した。出現例を手作業によりカウントする可能性も検討したが、研究計画の進捗に影響が及ぶことが懸念されたため、画像処理的手法によって自動化を試みた。研究分担者による開発に約半年を要し、また『綜類』『類纂』のレイアウトおよび印刷品質の制限から誤差の問題が残っているが、少数出現字、特に弧例の絞り込みについては影響がないと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は、初年度の検討項目B)とC)を組み合わせ、『綜類』に対応づけられるが『綜類』でも弧例であるもの、および、『綜類』には対応づく見出し字がないものについて検討する。『綜類』『類纂』とも非常に頻度高く用いられた文字については単に注記だけのものや、隷定字を示すにとどまっているため、抽出された画像について実際に少数出現字であるのかの確認を行う。上記の絞り込みを行った弧例について『類纂』が掲出する拓本番号をデジタル化し、『合集』が収録しているものについては拓本画像の選定を行う。また、不鮮明な拓本画像については研究代表者所蔵の原著の複製との比較を行い、『甲骨文合集』より鮮明であるかどうかの記録を進める。これにより、『合集』『類纂』という甲骨文研究の基盤における少数出現字の実態を明らかにできるであろう。 これと並行し、画像処理的手法による行分割・文字分割手法が近年のコンピュータ組版による甲骨文模写集(『殷墟甲骨文模釋全編』(陳年福, 2010))に適用できるかの検討も進めたい。
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Causes of Carryover |
鈴木敦・菅谷共に、原因は旅費にある。鈴木は中国に出張して現地の研究者との情報交換を計画していたが、第一義的に想定した研究者が別の文脈で来日され、東京で十分に情報交換ができたため、中国出張に至らなかった。菅谷は研究分担者の鈴木俊哉との打ち合わせを予定していたが、鈴木俊哉が本研究に関わる甲骨文字のISO化議論対応のため広島を離れていることが多く、遠隔会議によって対応したため、旅費としての執行には遅れが生じた。 初年度に導入した資料デジタル化設備の性能評価を行なった結果、紙質が劣化した歴史的資料のデジタル化には光量が強すぎるなどの難点が見られたため、第二年度は未執行分の一部を資料デジタル化の費用にあてたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
鈴木・菅谷共に、2015年度は各種活動が予定されており、問題無く使用できる。
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Research Products
(6 results)