2015 Fiscal Year Research-status Report
生活に溶け込むタブレット・メディアの構想:障害者・高齢者に学ぶコミュニケーション
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26330388
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
服部 哲 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 准教授 (60387082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 邦臣 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (00383521)
庄司 昌彦 国際大学, 付置研究所, 准教授 (50399771)
松本 早野香 大妻女子大学, 社会情報学部, 講師 (90575549)
吉田 仁美 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (20566385)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / タブレット / コミュニケーション / スケジューラ / 音声認識 / 評価実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度に開発したAndroidアプリを一般公開できるレベルまで高めるために評価実験を行った。本アプリは難聴児・者や発達障害の人たちの支援者(聴者)の発話内容を音声認識し、その結果として取得できた文字列に対応する絵や写真(ピクト)を検索し、タブレット端末の画面上に次々と表示する。ピクトによってスケジュールを示すことで、難聴児・者など活動の見通しを持つことが困難な人の状況理解を促進する。 本評価実験では仙台市を拠点とするNPO法人ビートスイッチに協力していただき、発達障害や難聴のため言葉でのコミュニケーションが困難な人の支援者4名に本アプリをインストールしたタブレット端末を貸し出し、7月22日から9月7日までの間、自由に利用していただいた。本評価実験期間終了時やタブレット端末の回収時に聞き取り調査によって意見を得た。また質問紙調査票によっても意見を得た。聞き取りや質問紙では、アプリの使い勝手、役立つ場面、不足機能などを調査した。 本評価実験の結果として、「身の回りの話は、しやすくなったところがある」、「『これから○○(予定のこと)する』というときも使いやすい」、「ピクトの組み合わせがおもしろい」など本アプリの効果や有用性を示唆する意見が得られた。一方、「重要な用語が出ない」、「すぐ混乱してしまうので、使いやすいデザインにしてほしい」、「立てた予定ができたら、花丸がもらえるようにするとよい」など改善点の指摘もあった。 この結果を踏まえ、ピクト管理や検索機能、ユーザインターフェースなどアプリの大幅な改良を行い、より大きな規模の実験やアプリの一般公開に向けて研究開発を進めている。これまでのところ、ピクトの拡大や重ね合わせ表示、時計ピクトの導入などを追加した。また必要な操作をすぐに実行できるようにするためのユーザインタフェースも設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究では、本アプリの可能性を実際のコミュニケーション場面において検証することであった。a)字幕機能:会話を音声認識し字幕のように表示してコミュニケーションを支援する機能とb)画像表示機能:自分が示したい物や場面の写真を選択し表示することで、コミュニケーションを支援する機能、これら2つの機能の基礎は平成26年度に実装済みであったが、実際に利用する中で必要な絵カードや音声認識の手法を検討したうえで、評価実験を行った。 具体的には仙台市のNPO法人ビートスイッチと協力し、言葉でのコミュニケーションが困難な人の支援者4名に本アプリを一定期間利用していただいた。本アプリの有効性やユーザビリティを評価した結果、本アプリの可能性が示唆された。一方で写真や絵カードの管理、ユーザインタフェースなどの改善点も指摘された。 評価実験終了後、研究グループ間で定期的に打ち合わせを行い、本アプリの改良に向けて、写真や絵カードや予定の管理、ユーザインタフェース、時間や位置情報の導入などの設計を行った。また、一部の機能については設計に基づき実装を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアプリの一般公開に向けて、評価実験の結果を本アプリにフィードバックする。具体的には、まずピクトの種類を増やす。これまでは登録されていないピクトの場合、その旨を示すイラストを表示していたが、音声認識の結果として得られた文字そのものを画像化して表示したり、指文字や手話の写真、インターネットの地図サービスから取得した地図画像などもピクトとして表示できるようにする。また予定に位置と時間を設定できるようにし、予定の時間に予定の場所にいた場合に「花丸」を付与するなど、利用者が達成感を感じられるような機能も追加する。利用者自身で「花丸」を付与するのではなく、アプリが「花丸」を付与できるような仕組みを検討する。ユーザインタフェースについては、アプリの各画面に表示するメニュー項目を精査し、利用者が迷うことなく目的の機能を実行できるようにする。また地図やカレンダーなども導入する。また本アプリの国際化も進め、国際学会やジャーナルで発表する。 本アプリの公開や国際化によって、利用者からのフィードバックをさらに増やし、本アプリのスパイラルな発展につなげていく。 一方、本アプリで利用している音声認識がインターネット接続を前提としていることや、その精度については課題もある。しかしながら、本研究課題は音声認識技術そのものの開発が目的ではないため、現状の利用方法を継続し、本アプリの目的である障害児・者のコミュニケーション支援に注力する。音声認識の精度については、認識結果を利用者が編集可能にすることで対応する。
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Causes of Carryover |
今年度は障害者ユーザ対応のアプリについて評価実験を行ったが、協力者が4名であった。また高齢者ユーザ対応のアプリが今後の課題となった。そのため、それらの研究費の使用額が少なくなり、次年度使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
継続的な評価実験、高齢者ユーザ対応アプリの調査のための、タブレット端末購入費、調査旅費を予定している。それらの研究成果を国内外の学会で発表するための旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(2 results)