2015 Fiscal Year Research-status Report
講義用ビデオの時系列コメントに対する学習効果と学習高度化システムの開発
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26330404
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
浅羽 修丈 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (50458105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斐品 正照 東京国際大学, 商学部, 准教授 (30305354)
西野 和典 九州工業大学, その他の研究科, 教授 (70330157)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 時系列コメント / コメント挿入機能 / 教授事象 / 講義用ビデオ / 学習効果実験 / 限定的な公開 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では,1. ビデオ画面上に流れる時系列テキストコメント(以下,コメントと略す)の量と種類の違いによる視聴者の印象の差の検証,2. コメント挿入機能の開発,3. 講義用ビデオの撮影・編集,4. 講義用ビデオを用いたコメントに対する学習効果実験の実施の4点について,研究成果をあげた. 1では,研究代表者らが独自に開発したERICAを用いて視聴者の印象を時系列データとして記録,分析したところ,視聴者によって入力されてビデオ画面上に流されたコメントの量は少なく,ビデオにはない情報を付加して内容を強化・補完するようなコメントが流されたシーンが,面白いという印象を強くするという結果を得た.この成果は,学習高度化講義ビデオシステムのコメント制御機能を開発する際に役立つ. 2では,ビデオを視聴している視聴者たちが入力したコメントを,その入力のタイミングと同期させてビデオ画面上に併せて流す機能(コメント挿入機能)をもったWebベースシステムを開発し,完成させた. 3では,メリット・デメリット計算を題材にした講義用ビデオを,解説・例示・演習の3つに分けて撮影・編集した.講義用ビデオを3つに分けて撮影した狙いは,教授事象の分類化を明確にすることであり,その違いによって学習者が入力するコメントの傾向や学習効果などに差が出るかを検証するためである. 4では,上述の2のシステム(限定的な公開)と3の講義用ビデオを用いた実験を実施した.実験の目的は,講義用ビデオの画面上に流れるコメントが,そのビデオを視聴している学習者の学習効果や心理にどのような影響を与えるかについて検証することである.具体的には,どのような講義場面でどのようなコメントが入力されるか,コメントが課題にどのような影響を与えるか,コメントの有無によって課題の取り組みに差異が生まれるかなどを検証することが狙いである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,上述の研究実績4の実験を実施した後,テキストが流れる講義用ビデオに対する時系列に沿った学習者の印象/感性を,ERICAを使って調査する予定であった.現状では,研究実績4の実験は実施できたものの,ERICAを使った調査は実施できていない.原因は,これまでAdobe Flashで開発してきたERICAをタブレット型端末にも対応するために,HTML5 + CSS3 + JavaScript + PHPで再開発してきたが,幾つかの不具合が見つかったため,それに対応する必要があったからである. ERICAの再開発の遅れに影響するかたちで,コメント制御機能の開発と,タブレット対応システムの要件定義にも遅れが生じている.しかし,コメント制御機能の開発では,上述の研究実績1で得た知見をはじめ,研究分担者との打ち合わせや先行研究等の調査により,システム開発の要件は明らかになりつつある.また,タブレット対応システムの要件定義も,研究分担者との打ち合わせを進めているところである. コメントの分類化に関しても遅れ気味ではあるが,現在では,研究実績4の実験で得られたコメントを分類化・分析しているところである.コメントの分類化・分析は,本研究にとって重要な位置づけにあるため,研究分担者のもと慎重に議論を重ねつつ分類化・分析のための手法の開発を進めているところである. 講義用ビデオは,当初の計画では,撮影済みの講義用ビデオを利用する予定であったが,教授事象を明確にした解説・例示・演習用の3つの講義用ビデオを別々に撮影し直した.これは,当初の予定以上の達成度と捉えることができ,本研究の精度が上がることが期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
学習高度化講義ビデオシステムの開発について,研究実績2で述べたようにコメント挿入機能は完成している.そのため,今後は,HTML5 + CSS3 + JavaScript + PHP 環境でのERICAの再開発を優先して進める.再開発を進めるにあたって,これまで幾つかの不具合が見つかりその対応に追われていたが,その対応にも目処がつき始めているため,早めの完成を目指す. ERICAの再開発が終われば,テキストが流れる講義用ビデオに対する時系列に沿った学習者の印象/感性を調査することが可能となるため,同調査を実施する.同時に,コメントの分類化・分析手法の開発も並行して行う予定であるため,時系列に沿った学習者の印象/感性のデータの分析結果と,コメントの分類化・分析結果の両方を得ることができる.これらを参照することで,講義用ビデオ上に流れるコメントにおける学習効果,心理的影響の分析を進める. 上述の分析結果と,これまでの研究実績1などで得てきた知見を基に,本格的なコメント制御機能の要件定義,及び,開発を行い,学習高度化講義ビデオシステムの完成を目指す.同時に,同システムをタブレット型端末でも動作する仕組みを開発する. 以上が平成28年度の研究の推進方策である.
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Causes of Carryover |
研究分担者との打ち合わせを,インターネット会議や学会等で会った機会に行うことが多く,旅費として支出予定であった予算を使用する機会が少なかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では,打ち合わせや学会での研究発表の旅費として,多く使用する予定である.また,本研究で開発する学習高度化講義ビデオシステム,及び,ERICAを一般公開するため,研究分担者の研究室にサーバーを設置する計画を立てている.そのための予算として使用する予定である.
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