2014 Fiscal Year Research-status Report
ホルムアルデヒドによる広域および地域の大気汚染の実態と機構
Project/Area Number |
26340002
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田口 茂 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 名誉教授 (80089838)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉光 英樹 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (70397165)
波多 宣子 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (90134999)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 大気汚染 / ホルムアルデヒド / 地域汚染 / 広域汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホルムアルデヒド(HCHO)による大気汚染の実態を地域(富山市,立山室堂平)ならびに広域(札幌市,釧路湿原,名古屋市)で調査し,それらの汚染機構を比較検討した。 1.地域ごとの調査結果:富山市(富山大学)における調査では,日の出から午前中にかけて紫外線強度の上昇と共にHCHO濃度が0.006 mg/m3に達することがあった。その後は紫外線強度が高いにも関わらず濃度が減少した。また,ほとんどの場合,夜間には0.001 mg/m3以下になった。しかし、冬期では早朝においてもしばしば0.006 mg/m3に達した。夏期の釧路湿原,立山室堂平(標高 2450m)においても紫外線強度の上昇と共にHCHO濃度も上昇し,夜間にも0.004 および0.007 mg/m3に達した。札幌市では日中,0.006 mg/m3 (max)のHCHOが観測された。名古屋市では夜間でも0.004 mg/m3 が観測された。 2.他の化学成分との関係: 本研究で観測したHCHO濃度と環境省のHPに公表された富山市における他の化学成分(オキシダント,メタンなど)濃度との関係を検討した結果,オキシダント(OX)濃度の日変化が強く同調していることが分かった。また,OX濃度の日変化がメタン濃度の日変化と逆相関的であることを見出した。 3.冬期における汚染機構:冬期において,富山市では名古屋市や東京都と異なり,OX濃度が昼夜を問わず高濃度で推移した。これらの結果を総合すると富山市におけるHCHOの生成は,原料物質が主としてメタンが,また,酸化剤として紫外線によって生成するOHラジカルが強く関与していると推論できる。さらに富山市では,他の地域で日中に生成したHCHOが越境飛来し, 夜間に観測されること,ならびに越境飛来したOX濃度が高い時,紫外線強度が低くても,HCHOの生成が著しく促進される現象を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.HCHOの測定法の確立: 本研究では精度の高いホルムアルデヒド(HCHO)濃度の測定が不可欠である。研究のスタートから秋期にかけて,精度の高いHCHOの測定法を確立するために,基礎的な実験を繰り返し行った。その結果,冬期には信頼のできるデータを蓄積できるようになった。 2.汚染のレベルの観測とデータの解析:冬期において富山市のHCHO濃度の日変化を大陸側から流入する大気の化学成分濃度と関連から考察することができた。次年度は,今年度観測できなかった春期~秋期の観測が必要である。人為的な汚染の少ないと予想される高地(立山室堂平)と釧路湿原において夏期に観測し,富山市と同様のHCHO濃度の日変化が観測された。ただし,データの精度に問題があった。今後,精度の高い測定によって新しい知見が得られる可能性が高い。また,札幌市街では昼間に高濃度のHCHOが観測された。しかし,他の化学物質濃度(オキシダント, メタンなど)のデータが欠落している状況で,十分な考察ができていない。名古屋市では冬期の夜間でも比較的高濃度のHCHOが観測された。 3.全体としての達成度:精度のよいHCHOの測定法の確立に約半年間を要したが,冬期からは確立した方法を用いて興味深い結果が得られた。北陸地方を含む日本海側の地方には,太平洋側の大都市とは異なる特有のHCHO汚染機構があることが見えてきたのは大きな成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.富山市におけるHCHO汚染レベルと汚染の機構を明らかにするのが第一の目標である。そのためにHCHO濃度の日変化,季節変化の詳細な調査を継続する。汚染レベルの結果とHCHO以外の化学成分の濃度の変化との関係を解析し,HCHO汚染の機構を解明する。また,そのときの気塊の経由地での気候を調べ,飛来する越境化学物質濃度と気候が富山市におけるHCHO汚染レベルに及ぼす影響を明らかにする。名古屋市などの大都市におけるHCHO濃度の日変化,季節変化を調査しHCHO以外の化学成分濃度との関係を調べ,都市におけるHCHO汚染の機構を明らかにする。それらを総合して北陸地方を含む日本海側におけるHCHO汚染機構モデルの提唱し太平洋側との汚染機構の違いを明らかにする。 2.北陸における汚染のバックグランドレベルを明確にするのが第二の目標である。そのために,人為的な大気汚染レベルの低い立山室堂平(山岳),輪島市(海岸)などにおいてHCHO濃度の日変化を調査する。これらの結果から,日本における全国的な汚染のバックグランドレベル観測の手掛かりを得る。
|
Causes of Carryover |
消耗品を予定より安価で購入することができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用する。
|