2014 Fiscal Year Research-status Report
生殖幹細胞における放射線・化学物質に対するゲノム安定性分子機構の解明
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26340031
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
川崎 勝己 摂南大学, 理工学部, 教授 (60177665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 武 摂南大学, 理工学部, 講師 (70411709)
吉岡 泰秀 摂南大学, 理工学部, 助教 (40572839)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノム安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線や化学物質が次世代にどのような影響を及ぼすかについては不安が残る。子孫にこのような影響が及ばないことが望まれる。次世代への影響を考えると、生殖細胞におけるゲノム安定性は重要である。生殖細胞系列,とりわけ生殖幹細胞に変異が導入されると、生殖可能期間を通して、影響を受けた生殖細胞が作り続けられる可能性がある。雄性生殖幹細胞は生殖可能期間(ヒト、約40 年間)にわたって存在する。それゆえ、他の精子形成時期(精子形成にかかる期間は約75 日間)よりも200 倍以上の危険が生殖幹細胞に蓄積する。生殖幹細胞に変異が導入されると変異生殖幹細胞が生み出され自己複製する。さらに変異生殖幹細胞に変異導入がくりかえされると、変異が蓄積していくことになる。そして、変異が蓄積した生殖幹細胞は変異した生殖細胞を生み続ける。結果として、配偶子ができない、あるいは受精できない配偶子を作り出し、不妊となる。もしくは変異を持ったまま受精が行われ発生していくと発生異常となるなどの可能性がある。したがって、生殖幹細胞におけるゲノム安定性は重要である。 しかしながら、生殖幹細胞における放射線・化学物質の影響、および生殖幹細胞におけるゲノム安定性の分子機構について、国内・国外での研究は少なく、よくわかっていない。 RecQ5 プロモーター制御領域下流にEGFP と融合したRecQ5 トランスジェニック個体を作製し、初期胚、精巣、卵巣のRecQ5 動態を可視化した。また、RecQ5 欠損個体も作製した。これらを用いて、生殖幹細胞および生殖細胞系列でのRecQ5 の空間的経時的変化について、核のどこに局在し、発生や老化にともない、量や局在がどう変化するかを共焦点蛍光顕微鏡により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RecQ5 プロモーター制御領域下流にEGFP と融合したRecQ5 トランスジェニック個体を作製している。初期胚、精巣、卵巣のRecQ5 動態を可視化できた。また、RecQ5 欠損個体も作製し,解析した。これらを用いて、生殖幹細胞および生殖細胞系列でのRecQ5 の空間的経時的変化について、核のどこに局在し、発生や老化にともない、量や局在がどう変化するかを共焦点蛍光顕微鏡により明らかにできた。 オスについては、研究成果を学会発表および論文発表できた。メスについても解析が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
環境からのストレス[放射線、環境物質(水銀化合物など)、抗がん剤(シスプラチン、ブスルファン、PARP 阻害剤、など)]によるRecQ5 タンパク質の生殖細胞における応答を調べる。1)放射線や化学物質の種類や量(強さ)による卵・精子形成の比較を行い、これらから生殖幹細胞に及ぼす放射線・化学物質の影響を評価する。2)同時に生殖幹細胞に影響を及ぼすゲノムストレスのタイプを特定することにより、ゲノムストレス応答の経路を絞りこむ。3)RecQ5 と他のゲノム安定性に関わるタンパク質の局在と応答を調べ、それらの関係を探る。4)環境からのストレスの影響をRecQ5 欠損精巣および卵巣における分化進行において調べる。 以上から、生殖細胞が環境からの刺激に対して応答する分子機構を明らかにしたい。特に生殖幹細胞においてRecQ5 が関わる過程をショウジョウバエ細胞において可能な分子生物学手法を用いて解析し、ゲノム安定性維持の分子機構については明らかにしたい。
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