2016 Fiscal Year Research-status Report
環境放射線の生物影響モニタリング可能な植物培養細胞を用いた新規影響評価手法の開発
Project/Area Number |
26340044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 真哉 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80370419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 雅紀 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 主席研究員 (00311324)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線影響 / 植物 / シロイヌナズナ / カルス / モニター遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現在東日本各地で問題となっている、福島第一原発事故由来の野外に放出された放射性物質による低線量放射線を、野外に於いて検出可能なシロイヌナズナ植物培養細胞系を確立し、体細胞相同組み換え頻度を検出することで、in vivoレベルでモニタリングできるシステムの構築を行うことを目的としている。 体細胞相同組み換え頻度を検出可能な改変βグルクロニダーゼ遺伝子を持つシロイヌナズナ植物体よりカルスを作成し、福島県内より採取した汚染土壌上または福島県内の高線量地点に、密封した寒天培地プレート上に移植したカルスを静置する。約30日間曝露を実施した上で、相同組換え頻度の検出を行った。 平成27年度までに、カルスの作成と汚染土壌への曝露による相同組換え頻度検出の可否、定量的検出に適したシロイヌナズナ組換え系統の選択を行った。安定して結果が得られた1415系統由来カルスを用いて、曝露した放射線量依存的に相同組み換え頻度の検出を行った。積算放射線量2.96 mSv相当までの曝露においては、線量依存的に相同組み換え頻度が上昇していることが明らかとなった。 平成28年度は実際に野外の高線量地域での曝露を行なった。平成28年9月29日~10月25日に福島県内の3地点(積算放射線量:0.34, 1.72, 3.47 mSv)にて1415系統由来カルスプレートを設置、曝露し、相同組換え頻度の検出を行った。その結果、線量依存的に相同組み換え頻度が上昇していることが明らかとなり、本システムが野外での放射線モニタリングに利用可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度までに、カルスの作成と汚染土壌への曝露による相同組換え頻度検出の可否、定量的検出に適したシロイヌナズナ組換え系統の選択を行い、1415系統由来カルスを用いることで安定な定量的検出が可能であることが示唆された。 今年度は、1415系統由来カルスを用いて、野外における曝露した放射線量依存的に相同組み換え頻度の検出が可能か実験を行った。積算放射線量0.34, 1.72, 3.47 mSv相当の曝露により、線量依存的な相同組み換え頻度の上昇が確認できた。以上のように、改変βグルクロニダーゼ遺伝子を持つラインの定量検出実験系の確立とモニタリング実施については概ね順調に進行している。一方で、改変ルシフェラーゼ遺伝子を持つシロイヌナズナ植物体からのカルス作成については、他業務に時間を取られたこともあり、材料作成に予定より時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、1415系統由来カルスを用いて、線量依存的な相同組み換え頻度の上昇について詳細に確認する。具体的には、野外の高線量地域での曝露について繰り返し実験と、詳細に統計解析を行うことで、放射線モニタリング実験系をより精緻なものとしたい。改変ルシフェラーゼ遺伝子を持つシロイヌナズナ植物体からのカルス作成については、今年度中にはカルス作成を行い、実験系の確立を行いたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、βグルクロニダーゼ検出に必要な高価な試薬類について、連携研究者がすでに所持していた分でまかなうことができた。そのため他の消耗品の購入を優先したが、すべて安価であったため、次年度使用額が生じた。 旅費については、今年度予定していた国際学会への参加を取りやめたため、想定より少額の使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、通常実験で使用する消耗品類の他、ルシフェラーゼ検出に必要であるルシフェリンの購入を物品費として使用する予定である。また、野外実験を実施するため、現地への移動のための旅費として使用予定である。各国内学会・国際学会参加費にも、旅費およびその他で計上し、使用予定である。また、これまでの成果を学術論文としてまとめ発表するために、英文校閲費用と論文掲載費をその他で計上し、使用予定である。
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Research Products
(8 results)