2015 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤等の助剤の共存による化学物質の毒性変化を予測する手法の開発
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26340087
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
菊地 幹夫 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 名誉教授 (70308534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤井 淳 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (80288216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝毒性・生態毒性 / 化学物質 / ミジンコ類 / 濃縮率 / 毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
水界生態系を汚染している化学物質の毒性試験において,難水溶性物質では試験溶液を調製することが難しく,また試験溶液の濃度が試験中に変化してしまう場合がある。そこで助剤(有機溶媒DMFや界面活性剤HCO-40)が使用されているが,その助剤の影響により毒性が変化することがあるので,毒性試験に先立ち,適切な助剤の種類,濃度の選択が重要となる。本研究では,より簡便・安価に信頼性の高い毒性試験を行うために,事前に助剤の毒性への影響を予測する手法を開発することを目的とした。 (1)対象化合物として2-メチルナフタレン等3物質を用いて,オオミジンコへの急性遊泳阻害濃度に及ぼす助剤の種類と濃度の効果を調べた。 (2)またこれらの化合物について,モデル生体膜(シリコーン膜)への濃縮に及ぼす助剤の種類と濃度の効果を明らかにした。 (3)前年度のデータと合わせて合計8物質について解析したところ,毒性の変化とモデル生体膜への濃縮の変化について関連性が非常に高いことを見いだした。DMFは全ての物質で毒性にもまたモデル生体膜への濃縮にも影響を及ぼさなかった。しかしHCO-40では,いずれの濃度においても毒性の変化もモデル生体膜への濃縮の変化も起きない物質群(A群)とある濃度以上になると毒性の変化と濃縮性の変化が起きる物質群(B群)の二群があることがわかった。 (4)中性条件下で測定したlog Powを用いて検討したところ,log Powの値が約3以下の物質はA群に,約3以上の物質はB群に分けられることがわかった。 (6)これらのことから,毒性試験の実施に先立ち,その化学物質のモデル生体膜への濃縮試験を行うことにより,その濃縮性のデータから毒性を変化させない助剤の種類や濃度を明らかにできること,そしてこの条件下で助剤を使うことにより,より簡便・安価に信頼性の高い毒性試験を行うことができることを明かにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記(1),(2)の検討項目については,当初予定した5物質よりは少ないが,当初予期しなかった下記(4)の現象を見いだしたため,あらたに(5)の検討を追加し,これにより現象の説明ができた。このため全体としてはほぼ計画したとおりの成果をあげることができた。 (1)化学物質の水生生物への毒性に及ぼす界面活性剤等の助剤の影響については,3物質について明らかにした。 (2)化学物質のモデル生体膜への濃縮に及ぼす界面活性剤等の助剤の影響については,3物質について明らかにした。 (3)これまでにデータが得られた合計8物質について解析したところ,毒性の変化とモデル生体膜への濃縮の変化について高い関連性があることを見いだした。 (4)詳細に検討すると,DMFは全ての物質で毒性にもまたモデル生体膜への濃縮にも影響を及ぼさない。しかしHCO-40では,試験したいずれの濃度においても毒性の変化もモデル生体膜への濃縮の変化も起きない物質群(A群)とある濃度以上になると毒性の変化と濃縮性の変化が起きる物質群(B群)の二群があることがわかった。 (5)上記(4)の現象は対象物質の分子量,水溶解度,log Powの文献値からは説明できなかった。そこで8物質のlog Powを毒性試験・濃縮試験と同じ中性条件下で測定し,この値を用いて検討したところ,log Powの値が約3以下の物質はA群に,約3以上の物質はB群に分けられることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでおおむね順調に進行している。このため平成28年度は,ほぼ当初予定どおり,毒性試験のバラツキについての検討とそれを踏まえての環境省データの解析を中心に行う。 (1)毒性試験データの信頼性の検討 ①試験した水質が異なると毒性値にどの程度のバラツキがあるかを,二クロム酸カリウムなど3物質を用いて,オオミジンコ遊泳阻害試験で検討する。 ②試験機関が異なると二クロム酸カリウムの毒性データがどの程度ばらつくかを検討する。 (2)環境省は数カ所の試験機関に委託して数百の化学物質について水生生物への毒性試験を実施してきている。そのうちいくつかの化合物についてHCO-40等を用いて毒性試験を実施してきたが,その後HCO-40を使わないで実験をやり直している。つまり同一の化学物質でHCO-40を使って得られた毒性データと使わないで得られたデータがある。これらのデータを上記(1)で明らかにしたデータのバラツキをふまえて解析し,27年度までに得られた結果と一致するかを検証する。 (3)毒性や濃縮性の変化と物質の物理的化学的性質(分子量,分子表面積,水溶解度,log Pow等)との関係を重回帰分析を用いて検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として110,084円が生じたが,これは予定より試薬とガラス器具等の使用量が少なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算とあわせて,物品費等としての支出を予定している。
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Research Products
(1 results)