2014 Fiscal Year Research-status Report
都市の人工塩性湿地におけるブルーカーボン機能の定量的評価に関する研究
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26340093
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
矢持 進 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30315973)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CO2フラックス / 人工塩性湿地 / 底生微細藻類 / 地下水位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CO2吸排出フラックスと環境因子との関係について検討するとともに湿地全体のCO2吸排出量の試算を行った。吸収フラックスには、Chl-a、堆積物温度、光量子量、地下水位が影響していると考えられた。Platt & Jassbyの式から求めた飽和光量は潮間帯で633-910μmol/m2/sec、潮下帯で220-500μmol/m2/secとなった。室内実験で報告されている飽和光量よりもこれらの値が高い原因として、堆積物内での光の減衰により、堆積物表層1.4-2.1 mmに棲息する底生微細藻類が光飽和に達していないことが考えらえた。次に、光律速の影響がない吸収フラックスの測定値を用いて、堆積物温度との関係を求めると、両者には指数関係がみられ、また、Q10を求めると、潮間帯では1.84、潮下帯では3.00の値が得られた。排出フラックスには、堆積物温度と地下水位が影響していると考えられた。潮間帯の地下水位別の排出フラックスと堆積物温度の関係を求めると、両者の間には指数関係がみられ、Q10は2.23-3.25となった。次に、2014年5-9月における湿地全体のCO2吸排出量の試算を行った。その結果、吸収量は5-9月にかけて22.99 tCO2であった。また、排出量は13.99 tCO2であった。このことから、大阪南港野鳥園北池湿地では高水温期に9.0 tのCO2が吸収されていたと考えられた。最後に、地下水位変動を考慮する場合としない場合の推定結果の違いに着目した。その結果、2014年5-9月の湿地全体のCO2排出量は、前者が約14.0 tCO2、後者が約29.6 tCO2であり、地下水位を考慮しない場合は約2.1倍過大評価することが分かった。このことから、湿地のCO2吸排出量の推定では、地下水位変動を考慮する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工塩性湿地における地圏-水圏および地圏-気圏間のCO2吸収・排出動態についてほぼ予定していた研究を遂行できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
人工塩性湿地堆積物における難分解性有機物の鉛直的な分布に焦点を絞り、研究を進める。
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Causes of Carryover |
有効かつ必要最小限の備品や物品購入を積極的に進め、インビトロシェーカー(約21万円)の購入代数を1台としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人工塩性湿地堆積物における難分解性有機物の時空間変動特性に関する研究、特に試験海水に新生堆積物を加えた生分解性試験に係わる物品購入に使用予定である。
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