2016 Fiscal Year Research-status Report
甲州ワインの高品質化に適した醸造用酵母株の構築とプロファイリング
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26350091
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
三木 健夫 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10313793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酵母 / プロリン資化 / 遺伝子 / PUT4 |
Outline of Annual Research Achievements |
甲州ワインには、一般的な白ワインと比較して多量のプロリンが含まれており、これが酒質低下の一因とされている。我々は、甲州ワインの高品質化の為、酵母を用いたプロリン低減化技術の構築を目指している。これまでの研究で、実用ワイン酵母Saccharomyces cerevisiae OC-2 株のPUT4 遺伝子過剰発現株では、PUT4遺伝子の転写量がコントロール株に比べて約15 倍に増加することや本株のプロリン資化能力が増大することなどを明らかにしている。しかし、本株を用いても甲州ワインに含まれるプロリンを最大40%低下させるに留まるため、よりプロリン資化能力の高い酵母株を構築が望まれている。 本課題では、PUT4 株のプロリン生合成を阻害し、生育に要するプロリンを細胞外から取込むよう改変した株を構築し、本株のプロリン資化能について検証を試みる。さらに、本株のプロリン代謝関連遺伝子群の転写量解析を行う事により、プロリン資化性に優れた酵母株のプロファイルを作成する。本データを基盤に自然界から酵母株のスクリーニングを行い、プロリン資化性の強弱について検証する予定である。 平成28年度は、自然環境から分離した酵母(26株)のプロリン資化性について調査した。各株をプロリン含有最小培地(Glucose 20%, Yeast Nitrogen base 0.8%, Proline 50mM)で35日間、20℃で静置培養した後、培養液中のプロリン減少量を測定したところ、いずれも減少率は5~15%の間にあり、PUT4 遺伝子過剰発現株が示す減少率(40%)を上回る株はなかった。また、各野生酵母の属種についてはSaccharomyces cerevisiaeに分類されたものが6株、Saccharomyces属まで同定できた株が12株、その他8株であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、野生酵母株のプロリン資化性について調査を行った。様々な地点から野生株を取得し、各株の示すエタノール生産性とDNA-ITS領域解析の結果を合わせ、取得株212株のうち26株を供試菌株として選抜した。これらの株のプロリン資化性について調査を行い、各株のプロリン資化能力を明らかにした。また、今回用いた菌株には本実験の目的である高いプロリン資化能力を持つ野生酵母株は含まれていなかった。また、PUT4 遺伝子過剰発現株が示す高いプロリン資化能力を上回る能力を持つ野生酵母株は見いだせなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に取得した野生酵母株(26株)には、PUT4 遺伝子過剰発現株を上回るプロリン資化能力を持つものは見いだせなかった。継続的に、野生酵母の取得と解析を行い、高プロリン資化性株の存在について検証を進めるが、プロリン難資化性は酵母種において普遍的な性質とも考えられ、たとえ野生株といえども例外ではない可能性が高いと予想された。一方、平成27年度に得られた新知見、すなわち発酵中期におけるPUT4遺伝子過剰発現株のパルミチン酸(C16:0)およびステアリン酸(C18:0)の割合の増大、逆にパルミトオレイン酸(C16:1)およびオレイン酸(C18:1)が減少する現象について、より詳細な調査を行う予定である。酵母の脂肪酸不飽和化酵素は、OLE1遺伝子にコードされるΔ9不飽和化酵素一種類のみであり、本遺伝子の発現はアミノ酸合成に関わる転写因子と深い関連性を示すことが知られていることから、PUT4 遺伝子過剰発現株のOLE1遺伝子の発現量について調査を行う予定である。
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Research Products
(2 results)