2016 Fiscal Year Research-status Report
線虫を用いた生活習慣病胎児期起源説の分子遺伝学的研究
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26350134
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
松本 晋也 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (30263156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 成人病胎児期起源説 / 線虫 / Caenorhabditis elegans / エピジェネティクス / 飢餓 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病の素因が胎児期に形成されるという成人病胎児期起源説が近年注目を集めている。通常妊婦の体重は増えるが,痩身願望が強い日本の妊婦は体重増加を嫌がり,食物を十分摂らない傾向がある。その結果,胎児は十分に成長することができず低体重となる。低体重に陥った胎児は,母親が食事を取らないのは外界に十分な食糧がないからだと解釈し,生まれ出た後の食糧不足に対応するため,栄養を貯めやすい体質,つまり太りやすい体質として生まれ出る。しかし,実際は外界は食糧が溢れているため低出生体重児は生活習慣病に罹りやすくなるというのが成人病胎児期起源説である。第二次世界大戦末期,ナチスドイツに封鎖されたオランダでは飢饉が発生したが,その飢饉を胎児として過ごした世代では成人後,虚血性心疾患の発生率が有意に高くなったという疫学調査結果がこの説の有力な根拠である(「オランダの冬飢餓事件」)。この説が正しいならば,妊婦のやせ→低出生体重児=太りやすい体質へ変化→生活習慣病に罹りやすい体質の世代の出現→生活習慣病の拡大 という悪循環が日本で生じている可能性がある。 本研究では,平成27年度までに飢餓を経験した親線虫から生じた仔線虫では脂肪蓄積量が増えることを見いだした。この知見に基づき,平成28年度では脂肪蓄積量の変化がエピジェネティクス変異に基づくのかどうかを検討した。DNAの働きは,DNAと複合体を形成しているヒストンタンパク質の化学的な状態に影響される。そこで,仔線虫からヒストンタンパク質を抽出し,メチル化,アセチル化,リン酸化などといった化学的な変化(エピジェネティクス変異)が生じているかをウェスタンブロット法を用いて解析した。その結果,特定のリジン残基のメチル化が促進していることを示唆する知見を見いだした。ただ,その再現性と確実性をもっと挙げる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飢餓を経験した親から生じた次世代では脂肪が蓄積するという知見をエピジェネティクスの観点が解析するというのが本年度の目標であり,その解析系と実験条件を確立したことは大いに評価している。したがって,本研究課題で設定した目的に着実に近づいていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
条件確立に時間を要したこと,その結果しっかりと再現性を得るだけ時間が取れなかったことは課題として残っている。本研究は,教員と4回生だけで進めているので,新4回生に実験手技をトレーニングして再現性と確実性を高める必要がある。
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Causes of Carryover |
本課題にて得られたデータを2017年6月に米国ロサンゼルスで開催される線虫国際学会にて発表するため,その出張費用として次年度(平成29年度)に費用を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した費用は2017年6月に米国ロサンゼルスで開催される線虫国際学会の出張費として使う予定である。
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Research Products
(1 results)