2014 Fiscal Year Research-status Report
地質アナログ模型の開発と地学教育における活用と検証
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26350220
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 雅紀 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (50212014)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地学教育 / 普及活動 / アウトリーチ / アナログ模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般市民の方だけでなく地質学を専門としない研究者にも,難解な地質学の研究成果をわかりやすく説明する目的でアナログ模型を製作し,学会や市民向けのイベント等において展示・解説して地質学の普及活動を推進するとともに,展示会場で直接意見を伺ったり,アンケートを行うなどしてその効果を検証した. まず,硬質発泡スチロールを材料として,20万分の1のスケール(深さ方向は4倍に強調)の関東平野と濃尾平野の基盤深度構造アナログ模型を製作し,学術大会においてポスター発表を行うとともに,研究所の一般公開や高校地学教員向けのシンポジウム等で展示した.また,架空の地形アナログ模型の上に架空の地質断面および地質図を塗色し,同じスケールのルートマップをパソコンで作成して地質図学実習用の教材とし,地学オリンピック日本代表高校生向けの実習や茨城大学理学部学生向けの集中講義において活用した.さらに,これまで製作してきたアナログ模型を使い,地質標本館2014年夏の特別展「地質アナログ模型の世界」展を企画・開催し,地質学の普及を行った. 三次元に再現されたアナログ模型は,二次元のモニターに映し出された3Dコンピュータグラフィックスよりも効果的に理解を後押しすることは予想されたが,展示会場にアナログ模型が置いてあるだけでも,とくに地質学に関心があるわけでもない一般市民の方や子供たちもすぐに模型に近づいてきてジッと模型を能動的に観察するなど,難解な地質学の敷居を一気に下げる効果が高いことを実感した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究助成金の応募に向けてアナログ模型の設計図等の準備を進めていたので,材料の購入と同時に模型の製作を開始し,当初の予定の模型だけでなく次年度の模型製作を開始している.具体的には,20万分の1の縮尺の関東平野の基盤深度模型と濃尾平野の基盤深度模型を製作し,地質図学実習用に2000分の1の縮尺の架空の地形・地質模型を製作した. さらに,この模型と同じスケールで地質・断面図をパソコン(Adobe illustrator)で作成し,表土部分を隠したルートマップをA3用紙に印刷して受講生(高校生・大学生)に配布して地質図学実習を行った.作図に際し,同じスケールの地形・地質模型を使って地質図学の基本を感覚的に理解させ,三次元幾何学実習の補助教材として活用した.いずれも教材の製作に慣れていたため,予定通りアナログ模型の製作が効率的に行えた. その他,学会の他に研究所の一般公開やシンポジウム,標本館の特別展や日本地質学会年会での地質情報展,さらに地学オリンピック等でのレクチャーにおけるアナログ模型の展示や教材としての活用の機会が多かったため,模型の修正点や次期製作模型のアイディアが得られ,次年度以降の活動に生かすことが出来ると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
模型の発案と製作過程において新たな構想が生まれたり,一般市民向けのイベント等で展示・解説に際して課題に気づくなど,模型の改良の必要性も明らかになっている.例えば,別研究テーマとして進めている世界中のプレート運動の三次元デジタル復元図を,半球上に投影してよりリアルな表現を行う機器の製作や,プロジェクションマッピングの応用として,架空の地形模型上にコンピュータで作図した地質図やルートマップ等の画像を投影する教材開発など,本研究課題あるいは次期研究課題として実現させていきたい. 一方,アナログ模型の製作は手間と時間がかかり,さらに大量生産できないなどの制約もあり,些細な改良点をいかに迅速に模型に反映させるか工夫の必要性を感じている.しかしながら,いったんデジタル画像なり動画なりが完成してしまうと同じものを大量に複製することが可能となり,そのことがデジタル情報のメリットであるが,大量複製によってその情報の希少性が下がって価値が低下し,関心を長期間持続させることが困難になるというデメリットと表裏一体となっている.アナログ模型製作の非効率性が結果として一般市民の関心をひく要因でもあることから,地質情報の三次元アナログ模型化において効率化を求めることは本末転倒であり,手間を惜しまず新たな教材を開発したい.
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 日本列島の成り立ち2015
Author(s)
高橋雅紀
Organizer
地学オリンピックとっぷ・レクチャー
Place of Presentation
産業技術総合研究所(茨城県)
Year and Date
2015-03-15 – 2015-03-15
Invited
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