2014 Fiscal Year Research-status Report
応力を可視化する構造教育用実験ツールおよびCAIシステムの開発
Project/Area Number |
26350301
|
Research Institution | Gifu City Women's College |
Principal Investigator |
服部 宏己 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 教授 (50510476)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 建築構造設計 / 構造教育 / 可視化 / 応力発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、応力発光材料を用いて、建築構造の理解を飛躍的に高める教育用ツールを開発することを目的としている。 これまでの一連の研究によって、圧縮載荷実験では、階調値(黒色~白色を0~255の数値で示し、値が大きいほど白色に近い(明るい)ことを示す)と応力の関係は直線的に表され、応力速度が大きいほどその勾配が大きくなることを明らかにした。また、曲げ載荷実験では、主応力に対して発光していることを明らかにした。 しかしながら、発光画像と応力の関係を定量化するまでには至らなかったことから、実験で得られた発光画像の階調値とFEM解析によって求めた主応力の関係を更に詳細に比較検討した。その結果、(1)高さースパン比の小さい試験体ほど応力と階調値の相関性が高いこと、(2)縁応力速度および試験体高さに関わらず、近似直線の傾きは同程度となっていることが分かった。 次いで、これらの結果を応用し、鉄筋コンクリート梁の鉄筋に発生する応力状態のみを視覚的に理解することを目的とした模擬実験ツールの開発を試みた。すなわち、応力発光材料とエポキシ樹脂を混練して鉄筋を模した棒状の模擬鉄筋を作製し、コンクリートを模した透明なエポキシ樹脂の中に配置することによってRC梁模擬試験体を製作し載荷実験を行なった。その結果、(1)曲げモーメントが卓越する試験体は、主筋に働く軸力を視覚的に理解する教育ツールとして有効であること、(2)せん断力が卓越する試験体は、せん断補強筋の役割を視覚的に学ぶ教育用ツールとして利用する際には注意を要することがわかった。 これらの結果は、「建築構造設計を対象とした構造教育に関する研究 (その5:曲げ・せん断載荷時の発光状況の解析的検討)および (その6:応力発光材料を模擬鉄筋に用いたRC梁模擬試験体の応力発光状況に関する検討)」と題して2015年度日本建築学会大会(関東)に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画では、基本的な知識を修得するための構造教育用実験ツール(実験ツールⅠ)および専門性の高い知識を修得するための構造教育用実験ツール(実験ツールⅡ)を開発することとしている。 実験ツールⅠにおいては、「研究実績の概要」に示したように、応力発光材料とエポキシ樹脂を混練して鉄筋を模した棒状の模擬鉄筋を作製し、コンクリートを模した透明なエポキシ樹脂の中に配置することによってRC梁模擬試験体を製作し、主筋に働く軸力を視覚的に理解する教育ツールとして有効であることを示すことができた。 実験ツールⅡにおいては、模擬試験体の製作にまでは至っていないが、試験体の応力度と階調値の相関性が比較的高く、縁応力速度および試験体高さに関わらず、近似直線の傾きが同程度となるという知見が得られたことから、例えば壁などの面材の応力分布を理解するツールを製作することが可能であることが分かった。ただし、応力発光材料は主応力に対して発光することから、せん断力が卓越するような試験体においては注意を要する。 また、研究環境においては、これまでの機器では手動による載荷実験のみであったが、科学研究費を活用することによって、応力値および速度を自動で制御する載荷実験を行うことができる環境を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究計画は、パソコンを利用したCAIシステムを開発することとしている。しかしながら、平成26年度の研究により、応力発光材料は主応力に対して発光することから、せん断力が卓越するような試験体においては注意を要することがわかった。また、試験体においては、応力発光材料とエポキシ樹脂を混練して製作したものの他に、例えば3Dプリンターで作製した硬化した材料の表面に応力発光材料を塗布した試験体を用いることにより、試験体形状の自由度が増すものと考えられる。したがって、平成27年度は、このような試験体を用いた載荷実験を行い、昨年度までに得られた結果と比較検討し、その違いを明らかにする。表面に応力発光材料を塗布した試験体の発光状況を明らかにすることによって、より効果的な構造教育用ツールの開発に繋げることができるものと思われる。
|
Research Products
(4 results)