2016 Fiscal Year Research-status Report
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26350360
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗原 岳史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 東工大特別研究員 (50622544)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子力 / 科学者 / 米対日外交政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に引き続き,米国から日本への原子力技術導入と,当時の科学者たちが行った政治的・社会的運動との関わりを中心に,文献や各種史資料の調査を行ってきた. 本年度の本研究は,1950年代から1960年代を中心に日本の科学者たちが展開した様々な政治的・社会的活動について,米国政府がどのように理解していたのかを調査してきた.その結果,当時から噂されていた,一部の日本人科学者と米政府関係者との非公式な接触について,そのことを示す証拠文書をいくつか発見することができた.具体的には,米原子力潜水艦が日本に寄港する問題において,原潜の原子炉の安全性をめぐる議論の中で,その安全性を主張していた日本人科学者の一人が,米大使館の科学者と接触して情報をやりとりしているという噂が当時からあったが,その正式な記録の一部を発見することができた.その他にも,米国政府が当時の日本人科学者たちの政治的・社会的活動について,きわめて注意深く対応していたことを示す文書もいくつか発見することができた.具体的には,米国政府機関からの科学の共同研究や研究資金援助の目的の中に,米国の外交政策に批判的だった科学者たちを敵視し,彼らの活動を「穏健化」させることがあったことを示唆する文書である.これらのことは,今まで一部の噂にすぎなかったことが米国の対日外交政策の一端であったことを,公文書史料によって裏付けられたこととなり,実証的歴史研究の一つの成果といえる. これらの調査成果の一部を,2016年5月29日に東京の工学院大学で開催された日本科学史学会で発表し,幾人かの研究者たちから助言をいただくことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,米公文書館での調査を行うことが中心的な研究活動であり,まとまった長期の調査時間を必要とする.普段,非常勤講師で生計をたてており,まとまった休みのとれる春と夏しか調査活動に時間を取ることができないため,研究に十分な時間をとることができないことが,遅れの大きな原因である.とはいえ,本年度は夏と春の2回,渡米して調査を行うことができた.調査では,調査すべき文書群が広範囲に渡って分散されて保存されていることがわかり,想像していたよりも時間がかかったことも遅れの理由である.また,本研究は日本と米国の外交関係に関わるため,調査目的が異なる他の研究者と調査したい文書群(箱の中に複数のフォルダに分かれて文書が保存されており,調査目的のフォルダを調査するためには箱全体を注文する)が重なることが多く,限られた調査期間を効率的に使用することが十分にできなかったことも,遅れの理由の一つである.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査活動で,どこにどのような文書群があるのか,ある程度理解することができたこともあるので,次回以降は,いくつかある調査課題を同時に進行するなどして,効率的な調査活動を行えるような事前の準備を十分にしておくようにすることで,調査の効率化を図る. 本研究では,これまで日本国に対する米国の政策を管轄している米国務省の文書を中心に調査を行ってきた.しかし,本研究課題である原子力政策などの米国の科学技術政策における対日政策に関わっている米政府機関として,国務省に加えて,米原子力委員会(現・エネルギー省),米国防総省(陸軍省,海軍省,空軍省),米国立科学財団があげられる.これらの政府機関は,基本的に,国務省を通して日本と関わっているので,国務省の文書を調査すれば,それらの全貌を理解できると想定して,本研究では,国務省の文書を中心に調査を行ってきた.また,国務省の文書は他の政府機関と比べて整理がなされており,研究者が調査しやすい状態となっていることも,国務省をはじめに調査した理由である.しかし,昨年度の調査と今年度の調査で,国務省の文書だけでは十分とは言えない可能性があると思えるようになった.これまでの調査活動を手掛かりに,調査対象を国務省に限らずに,他の政府機関の文書も調査する.
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Causes of Carryover |
追加の郵送代など,何らかの理由で予算を超えることのないように1000円程度余裕を持たせたので,最終的に484円が残りました.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品購入にあてる.
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Research Products
(1 results)