2014 Fiscal Year Research-status Report
途中退去のある複数サーバ待ち行列の待ち行列長分布評価法
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26350416
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
河西 憲一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (50334131)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 待ち行列理論 / 応用確率過程論 / モデル化 / 性能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では複数のサーバに対して単一の待ち行列を形成する待ち行列システムにおいて、客の途中退去がある場合を考察対象とした。そのような待ち行列システムの中で、客の到着がポアソン過程に従い、客のサービス時間が相型分布に従い、さらに客がサービスを開始するまでに待つことが許される制限時間が一定である場合を扱った。本待ち行列システムはコールセンターへの応用が期待される待ち行列システムである。到着過程がポアソン過程であることは解析を容易にする方向に寄与するが、サービス時間と途中退去までの制限時間が非指数分布であるため、同待ち行列システムの定常分布の解析は自明ではない。しかしながら、1)客のサービス規律が先着順であること、2)待ち行列システムの双対性に着目することで、サービス中の客の内で最後にサービスを開始した客の経過系内滞在時間(客の到着時点から計測した客の滞在時間の経過時間)の解析を通して待ち行列システムの系内客数(サービス中の客と待ち客の合計)に関する定常分布の厳密な解析を目指した。解析の結果、以下の知見を得た。
複数のサーバを有する場合において、経過系内滞在時間の確率密度関数が従う積分微分方程式を導出し、その解がトラヒック密度の値によらず、2つの行列指数関数の線形結合で表現できることを示した。従来の研究では、客の到着過程がマルコフ型到着過程であり、かつサービス時間が指数分布の場合に対する仮待ち時間の確率密度関数について、同様な積分微分方程式が知られていたが、本研究では待ち行列システムの双対性を使うことで経過系内滞在時間についても成立することを明らかにした点に意義がある。さらに、従来の研究ではトラヒック密度が1に等しい場合とそうでない場合で解の構成が異なっていたが、トラヒック密度に関係なく統一した形式で構成できることを示した点も本研究の重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では複数のサーバを有する待ち行列システムにおいて、客が途中退去する場合を解析することが目的である。特に、系内客数分布の導出が主な目的である。客の到着がポアソン過程に従い、客のサービス時間が相型分布に従い、さらに客がサービスを開始するまでに待つことが許される制限時間が一定である場合に限定することで、サービス中の客の内で最後にサービスを開始した客の経過系内滞在時間の確率密度関数が解析的に得られた。先着順サービス規律を前提とするならば、待ち列に並んでいる客は、最後にサービスを開始した客の経過系内滞在時間の間に到着した客であるので、系内客数分布も解析的に得られることになる。より具体的には待ち列に並んでいる客数に関する確率の確率母関数が解析的に得られることになる。経過系内滞在時間の確率密度関数が2つの行列指数関数の線形結合で表現できることから、この確率母関数には行列指数関数に関する積分が現れる。よって、行列指数関数の評価が系内客数分布を引き出すための重要な課題となる。一方、本研究で現れる行列指数関数を構成する正方行列は、その非対角要素がすべて非負となることがわかっている。そのような正方行列は、十分大きな値を掛けた単位行列を減じる操作(シフト操作)を施すことにより、連続時間マルコフ連鎖の劣化した推移速度行列とみなすことが可能となる。劣化した推移速度行列の行列指数関数の評価法は一様化の手法と呼ばれる既存の研究成果があり、よって行列指数関数が数値的に評価可能となる。以上の考え方を踏まえるならば、待ち行列長の確率母関数を実際に評価するためのアルゴリズムを構築することは難しくない。実際、待ち行列長の定常分布を、よって系内客数分布を定量化するためのアルゴリズムを実装した。これは所期の目的を十分に達成しているといえる。以上の理由によりおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も複数のサーバを有する待ち行列システムにおいて、客が途中退去する場合の解析を進めるが、客の到着過程とサービス時間の前提を変更する。すなわち、客の到着過程がマルコフ型到着過程であり、かつサービス時間が指数分布の場合を扱う。ただし、客が途中退去するまでの制限時間は一定であるとする。これらの前提においては、仮待ち時間の確率密度関数が解析的に得られていた。ところが本研究では、系内客数分布を経過系内滞在時間の確率密度関数を経由して評価する方法を用いるので、求めるべき情報は仮待ち時間ではなく経過系内滞在時間の確率密度関数である。幸いにして、経過系内滞在時間は仮待ち時間と同じ確率分布に従うことが知られている。ただし、到着過程がマルコフ型到着過程となる場合、背後状態を記述するマルコフ連鎖の効果を補正する必要がある。これらを踏まえて系内客数の定常分布を解析する。
同時に、これまでの本研究を通じて新たな課題も明らかになったことにも注意して進める。すなわちその課題とは、サーバの数が非常に多い場合への対処である。サービス時間が相型分布に従う場合、サーバの数が多くなるにつれて、経過系内滞在時間を構成する行列指数関数の行列サイズが大きくなる。その結果、行列指数関数の数値計算が大きな負担となる。さらに、経過系内滞在時間は2つの行列指数関数の線形結合で表現されるが、線形結合の係数が非負の値であるとは必ずしもいえず、その結果行列サイズが大きくなるにつれて数値計算上の誤差が確率の計算に不利に影響する。また、行列指数関数を計算する際に、行列指数関数を構成する正方行列から十分大きな値を掛けた単位行列を減じる方法を採用しているが、この方法では単位行列に掛ける値が大きすぎると計算機の倍精度では扱えない場合が発生することも明らかになった。この傾向は、途中退去するまでの制限時間が長くなるにつれて発生しやすくなる。
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Causes of Carryover |
平成26年度の9月中に参加を予定していた学会が、例年と異なり8月に開催され、8月に開催された学内の行事(企業懇談会でのポスター発表)と重なったため学会に参加できず、出張旅費とその参加費に差が発生した。さらに、海外での発表の機会が得られず、同様に出張旅費と参加費に差が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に発生した残額は、平成27年度に請求する旅費に加算し使用する。すなわち、国内旅費として、東京で年8回開催される研究集会に参加し、研究資料の収集と同時に研究打ち合わせのために使用する。さらに国内旅費として国内の研究会(毎年1月に開催される待ち行列シンポジウムとオペレーションズ・リサーチ学会春季研究発表会及び秋季研究発表会を想定)に参加発表するための旅費として使用する。さらに海外での学会等に参加し、国外出張旅費と学会の参加費として使用する。平成27年度に請求するその他の予算は研究を進める上で有効となる関連図書(確率過程や性能評価に関する図書)の購入、および消耗品(プリンターのトナー代)に使用する。
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Research Products
(1 results)