2014 Fiscal Year Research-status Report
持続的・安定的な成長のためのグローバル社会の相互依存関係性の解明
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26350422
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 裕一 京都大学, 総合生存学館, 教授 (90610858)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 景気循環 / 同期現象 / 複雑ネットワーク解析 / 貿易ネットワーク / ショック / 結合振動子 / コミュニティ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際的な景気循環に関して,全世界の産業間の貿易データと付加価値時系列データを解析して,以下のような問題:景気循環における同期現象の直接的証拠は得られるか?同期現象を引き起こす機構や経済的な起源は何か?ミクロな個別ショックとマクロなショックのどちらが景気循環において重要な役割を果たすのか?について現象解明に取り組んでいる。 平成26年度は,世界のGDPの大部分を構成する2か国間の産業別貿易額データについて複雑ネットワーク解析と産業ごとの付加価値時系列データ解析を行った。まず,毎年の貿易ネットワーク図を作成して,視覚的に変化を把握した。次に,その貿易ネットワークを構成する主要なかたまり(コミュニティ)を抽出して,これらのかたまりは資源エネルギー産業,素材産業,化学産業,電機産業,自動車産業であることを明らかにした。更に,世界中の産業ごとの付加価値時系列データ解析から,産業ごとの国際的な景気循環について同期現象が明確に存在することを発見した。同期現象の証拠として,先行研究のような相関係数でなく,オーダーパラメータを用いて同期現象の存在を示すことができた。得られた結果について,国内外の学会での発表,論文執筆,書籍執筆を行った。 更に,まだ理論的な予備検討段階であるが,PageRankを参考にした複雑ネットワーク指標を開発し,相互依存関係性の定量化してリスク伝播を評価する方法論について見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従って,貿易ネットワーク構造の視覚表示および「かたまり(コミュニティ)」構造解析,国際的な景気循環における同期現象の存在実証,PageRankを参考にしたリスク伝播を評価する方法論の検討,などの研究を遂行した。得られた結果については,その確からしさを複数の観点から確認した。例えば,コミュニティ解析についてはモジュラリティの値だけでなくVariation of informationを用いてコミュニティ構造の頑健性の評価を行い,また同期現象についてはrotational random shufflingを用いてオーダーパラメータの統計的有意性の評価を行った。貿易のコミュニティ構造については,独立したかたまりが明確にあるのではなく,相互に関係性をたもったかたまりであることが明らかになった。また,国際的な景気循環における同期現象については,明確な統計的有意性が得られた。これらの研究成果を,国際会議の発表2件,査読付き国際会議プロシーディングス論文1件,国内研究会での発表1件,書籍分担執筆1件(2015年度出版予定)としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,以下の二つの研究を行って現象解明を進めると同時に,最終年度の結果の総合化,即ち自由貿易協定(FTA)や環太平洋経済連携協定(TPP)などに関する政策提言にむけた文献調査を行う。 まずは,現存する,業種ごとの貿易データ,商品ごとの貿易データ,各国の国内業種間取引データを組み合わせて,世界中の産業を多重ネットワークとして構成する。この多重ネットワークデータをもちいて,様々な産業について,貿易と国内産業の発展/空洞化の相互依存関係を解析する。更に,この多重ネットワークとH26年度に予備検討を実施したPgeRankを参考にしたリスク伝播評価方法を用いて,工業製品の化学汚染物質,農薬などによる水質汚染や農産物汚染などに関するリスク拡散のシミュレーションを行う。 この研究と並行して,先進国(仏,米,英,独,日,伊,加)の鉱工業指数の時系列データの相関行列からネットワークを構築して,このネットワークについて結合振動子モデルを開発すると同時に,同期現象以外の集団運動の探索を行う。
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