2014 Fiscal Year Research-status Report
サプライ・チェーン環境下での制度設計による流通合理化・最適化
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26350433
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
竹本 康彦 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (70382257)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サプライチェーン / 契約手法 / 契約合意条件 / 補償契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
サプライチェーン上での商取引の合理化や最適化を妨げる要因として,需要や品質等の不確実性の問題が存在する.また,個々人の合理性のみを追求した意思決定では,商取引を構成するメンバ全体での合理的な意思決定にたどり着かない.これを解決するための制度設計が必要となる. まず,半導体,金型製品等の,生産能力に大きく依存する製造環境下での商取引を題材として,取引を行う2社間での生産能力確保に関する取り決めを含めた売買契約の合意に至る意思決定プロセスについて考察した.結果として,適切な生産能力確保のための契約履行を実施することを保証するペナルティ条項を設計し,これによる合理的な意思決定のプロセスを示した.この成果については,国内の研究大会で発表するに至った.さらに,出版社-取次-書店からなる出版流通を題材に,責任販売制度のもとでの3社間での売買契約の合意に至る意思決定プロセスへ問題を拡張することを考えた.結果として,2社間での方法を展開し,一定の成果を得た.これについては,国内の研究大会で発表するに至った. ついで,需要や品質等の不確実性の問題が意思決定に及ぼす影響について考察した.需要の不確実性として,特に需要の分布特性が複雑で,平均や分散と言った特性値のみしか信用できない場合に,在庫切れによるリスクをヘッジするための意思決定法を提案した.この成果については,国際会議にて発表するに至った.さらに,品質の不確実性として,不良品が混入する流通上での品質保証の制度を考察し,不良品に対する補償契約を設計して,これによる2社間の合理的な意思決定のプロセスを示した.さらに,補償契約の提示が品質向上のインセンティブになること,また高品質を有することのコミットメントとしての効果があることを確認した.この成果については,国際専門誌に投稿するに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では,問題となる取引制度が成立してきた過程を時代背景を含め調査し(情報収集),さらに調査結果を受けて取引制度において問題とされる問題点を洗い出し,その原因にまで言及すること(問題点の洗い出し)を目指していた.情報収集では,題材として取り扱った製造業および出版流通について,文献の調査や工場見学,ヒアリングなどを通じて,様々な情報を収集することができた.しかしながら,各業界での慣行取引の歴史的背景や関連法規の調査まで十分であったと言えない部分もあった.一方,収集された情報から取引制度の問題点の洗い出しをした結果,即座に解決策等を提案することができたものがあり,これをモデルとして記述しその効果・影響について調査・検討して,国内外における研究発表や国際専門誌への論文投稿に至るまで進捗できるものがあった.このことから総合的に見て,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度に引き続いて,問題となる取引制度が成立してきた過程を時代背景等の調査(情報収集),ならびに取引制度において問題とされる点の洗い出し・原因の究明(問題点の洗い出し)を実践する.さらに,定量的分析を通じて問題を解消するための取引制度を検討する(取引制度の設計問題).くわえて,利害関係者の合意を踏まえた制度移行を実現するための方法について考察する(制度移行のインセンティブ設計). 具体的に,生産能力確保を含めた契約問題について,更なる情報収集と問題点の検討を踏まえ,前年度における提案を緻密にまとめ,その有用性を検証する.さらに,新たに組み込まれる取引制度によって,どのようなインセンティブを生じるのか,また契約の合意に至るのかを精査し,その成果を国際専門誌へ投稿することを試みる.また,書籍流通においては,現状整備が進められている責任販売制度の枠組みだけでなく,他の業界で慣行とされてきた取引制度を導入することを考え,そのモデルを構築し,制度の効果及び影響について検証を試みる.また,取引制度下において3社間における協調的な意思決定を実現するアプローチを構築することを試みる.
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Causes of Carryover |
大学の図書館等の資料で多くが対応できたため,国際会議等の場所によって旅費が大幅に抑えられたため,また情報収集や資料収集,プログラミング等を研究グループメンバで実施したために学生アルバイト等の謝金が発生しなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では,より広範な資料を収集するのに費用がかかることが予想される.また収集される情報やコンピュータシミュレーションの作成が増えてくることから,情報整理やプログラミングの作業にかかる謝金に充てる.
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Research Products
(3 results)