2015 Fiscal Year Research-status Report
超音波エネルギーが細菌のバイオフィルム形成に及ぼす影響の研究
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26350543
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
鯉渕 晴美 自治医科大学, 医学部, 講師 (20382848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 康友 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00337338)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 超音波 / 中心静脈カテーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、バイオフィルムの形成はバイオフィルム産生株Staphylococcus epidermidis ATCC35984 を輸入して行った。平成25年度と同様にバイオフィルムを6穴wellのひとつに作成し超音波を照射した。超音波照射条件は周波数は1MHz、連続波、照射時間は24時間で、超音波照射強度は平成25年度よりも下げ、5 W/cm2と2.5W/cm2で検討した。両条件でも超音波照射群は非照射群と比較して有意にバイオフィルム定量値が低下した。平成25・26年度の結果より超音波照射によってバイオフィルム量が減少したと判断できる。 また、超音波照射群のバイオフィルム定量値は5 W/cm2・2.5 W/cm2で変化がなかった。以上よりある一定の超音波強度以上の強度では、バイオフィルムを減少させる力が変化ない、すなわちバイオフィルムを減少させる超音波強度の閾値の存在が示唆された。 well内のバイオフィルムはある程度の超音波強度によって減少することが明らかになったため、実際に臨床で使用されている中心静脈カテーテル内に超音波を照射するため、まずカテ内にバイオフィルムを作成し、それを定量する方法を考案した。中心静脈カテーテルに菌液を注入し30時間37℃の孵卵器に入れる。その後カテーテル内を30mlの生理食塩水で洗浄し、バイオフィルム非形成菌を排除する。もう一度カテーテル内に生理食塩水を充填する。生理食塩水を充填したカテーテルを超音波洗浄装置に5分かけ(カテーテル内壁にバイオフィルムとともに付着している菌を剥離する)、回収した生理食塩水中の生菌数をバイオフィルム定量値とした。 また、昨年度研究の推進方策としてあげた、「バイオフィルムを産生する株の同定」については前実験において良好な結果を得られなかったため、本実験は行っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度同様、「細菌の培養とバイオフィルムの作成」に約3日要し、更に手元にある超音波照射機器を用いると1回の照射(24時間)につき1wellのみしか照射できないため、統計的処理に必要な実験数を得るために時間を要した。したがって電子顕微鏡による形態評価が未施行である。また、バイオフィルムを破壊しうる最小の超音波強度の決定は未だできていない。 しかし、手元の超音波照射機器では2.5W/cm2以下の超音波強度の照射は不可能であるため、wellでの実験を終了し、臨床の現場で実際に使用されている中心静脈カテーテル内への超音波照射(in vitro)に移行することとした。これにあたり、平成27年度の後半には中心静脈カテーテルへのバイオフィルムの作成方法とその定量的評価方法の確立を行った。 以上より、電子顕微鏡による形態評価は未施行でありバイオフィルムを破壊しうる最小超音波強度の決定はできておらずこれらの点では遅れてはいるものの、申請時には予定していなかった中心静脈カテーテル内への超音波照射(in vitro)への準備は順調にすすんでおり、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.細胞への超音波照射専用の超音波照射機器を借用し、実際に臨床で使用されている中心静脈カテーテルへ超音波を照射し、超音波照射によってカテーテル内へのバイオフィルム形成が阻害されるか検討する。 2.マウスの皮下にカテーテルを埋め込み、バイオフィルム感染症モデルを作成する。マウスに超音波を照射し、バイオフィルム形成が阻害されるか、抗菌薬への反応、予後について検討する。
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Causes of Carryover |
Staphylococcus epidermidis (ATCC 35984)を輸入したが、当初想定していた「1バイアル1回使い捨て」ではなく、実際はバイアルを分割して凍結保存ができたため、物品費の大幅削減が生じた。 また昨今の海外安全事情を考慮し、海外学会での発表を控えたため旅費の大幅削減が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は当初予定していなかった中心静脈カテーテルへの超音波照射を行う予定である。これにともない、カテーテル等の物品費、超音波照射に関する助言への謝金があらたに発生する可能性がある。
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Research Products
(3 results)