2014 Fiscal Year Research-status Report
系統別障害モデルを用いた感覚刺激による嚥下障害改善法の体系的評価
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26350649
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
狩野 充浩 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (10419236)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 摂食嚥下 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の高齢化社会において口からおいしく食べられる事は生活の質という点からも大きな意義を持つ。一方で脳血管疾患等により嚥下障害が生じてしまった途端に口から食物を摂取する事ができなくなってしまう。長期間における嚥下障害により、いわゆる咽頭や喉頭筋における廃用性萎縮が起こるとそれを時間が経ってから取り戻すことは非常に難しい。嚥下に関わる器官は多岐にわたり、嚥下障害の原因も様々である。嚥下障害患者に対しては近年複数の医療者がチームで対応することが定着しており、臨床においても口から食べることの重要性は見直され、早期の段階で口から食物摂取訓練を開始する場合もある。他にも食物の性状や体位を工夫したり、感覚刺激を利用したり様々な方法が用いられている。そこで、今年度の実験では嚥下障害の原因の中で、筋疾患にしぼり筋萎縮症モデル動物を使用し、免疫染色による知覚神経終末や運動性神経終末の分布の違いを詳細に検討した。まず正常マウス咽頭や周囲組織の粘膜におけるPGP9.5を含む神経の分布について調べた。実験には正常マウスと筋萎縮症モデルマウス8匹を用いた。動物を麻酔後、Zamboni固定液で潅流し、鼻腔、口腔、咽頭、喉頭及び上位の食道,気管を一塊に取り出し、凍結切片作製後、免疫染色を行った。その結果、PGP9.5神経線維が咽頭やその周囲組織で豊富に観察された。これらの神経線維は粘膜固有層に数多く認められ、それらの一部は上皮内や味蕾内に侵入していた。これらの神経線維は咽頭喉頭部・喉頭蓋の喉頭側・軟口蓋粘膜で最も多く観察された。また咽頭や喉頭の筋では、多くの運動終板が観察された。筋萎縮症モデルマウスにおいても、喉頭、咽頭、軟口蓋の粘膜にいて神経線維は豊富に観察され、正常マウスとの間に差は認められなかった。しかしながら、一部の喉頭筋の運動終板には変性が認められ、この変性が嚥下困難の原因の一つである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで正常マウスや筋萎縮症モデルマウスの咽頭・喉頭・軟口蓋の粘膜における感覚神経や筋肉における運動神経の分布や由来について明らかにしてきた。免疫染色によりPGP9.5を含む感覚神経の分布を咽頭粘膜で調べた結果、今年度までの研究で咽頭と喉頭及び口腔との境界に、PGP9.5を含む神経線維が豊富であるという結果が得られた。これらの神経線維は感覚ニューロン由来であると考えられた。また筋肉においては運動終板や血管に神経線維が認められた。筋萎縮症モデルマウスの感覚神経には変化が認められなかったが、筋線維の萎縮やそれらを支配する運動神経には変性が認められた。これらの所見により、筋萎縮症モデルマウスにおける嚥下障害の原因を明らかにすることができたと考えている。今年度において、さまざまな嚥下困難の原因の一つにアプローチできたのは、本研究の大きな第一歩であると思われる。一方、本研究の過程で筋線維の萎縮が観察された喉頭筋の同定は不十分であり、今後は、さらなる検討が必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度、筋萎縮症モデルマウスにおける萎縮筋の同定と運動神経の変性について、さらに検討する予定である。筋萎縮症モデルマウスの筋肉の連続切片を作成し、正常マウスと比較することによって、筋の同定と変性の程度、さらには運動神経や運動ニューロンの変性について調べる予定である。動物を麻酔後、Zamboni固定液で潅流し、鼻腔、口腔、咽頭、喉頭及び上位の食道,気管を一塊に取り出す。また運動ニューロンについても明らかにするために、脳幹も摘出する。凍結切片作製後、ヘマトキシリンーエオジン染色や免疫染色を行う。運動ニューロンの変性マーカーであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)により筋肉を染色したり、感覚ニューロンや運動ニューロンの変性マーカーであるATF3により脳幹を染色する。これらの結果を検討し、誤嚥モデル動物として筋萎縮症モデルマウスを生理学的実験に利用する可能性について追及する予定である。
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