2015 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における「遊び込める子ども」の育成を意図した「質の高い遊び」環境構築の試み
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26350715
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
鈴木 裕子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (40300214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遊び / 遊び込める / プレイアビリティ / プレイフルネス / 心理社会的効果 / ドッジボール / 運動遊び / 身体表現活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には,以下の研究を実施した。 1 前年度に作成した幼児にとっての「遊び込める」という状況を規定する要因を明らかにする尺度について,論文作成と投稿,国内外の学会での成果発表を行った。そこで受けた有益な意見をフィードバックし,内容を精査した。 2 「Playability Evaluation Scale of Young Children」の実用化に向けて,2つの観点からの実証研究を行った。1つ目は,保育者が尺度を使用する際に用いる分析シートを作成試行し,本尺度を,遊び込める子どもを育成し,また遊び込める環境を構築するための保育カンファレンスにおいて活用する手だてを探った。その際,遊び込めこめる子どもと遊び込めない子どもを抽出して観察評価の対象とすることで,事例の典型性を高めた。2つ目は,幼児が遊び込めるようになるプロセスの測定評価としての本尺度の可能性を探った。特に年長児のドッジボール遊びに着目し,本尺度の実用化の検討と合わせて,本尺度を用いることによって見えてくる運動遊びにおける心理社会的効果を明らかにした。また,それによって5歳児の「遊び込める」構造が考察され,「質の高い遊び」環境を整えるための一資料が得られた。 3 幼児の遊びの質を高めるための要因検討のための実証研究を行った。特に今年度は,身体という媒体が強調される幼児期における自由で創造的な身体表現遊びを対象として,そこで子どもたちが何を得ているのか,さらにはその遊びに適した題材は何かを,5歳児を対象に検討し論文にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度についての自己評価の理由は以下の通りである。 1 本年度では,前年度に作成した「遊び込める子ども」尺度の実用化に向けた実証的な研究が実施され,本尺度がプログラム前後の平準化された量的評価尺度としての活用よりも,保育の専門家の主観性を生かした質的な評価を併存させることによって,精度が高まることが見出され,本尺度運用の一定の方向性や有効性が明らかにされた。 2 運動遊びの心理社会的な効果という観点からの検討によって,幼児が,フェーズを追うごとに,ひと(他児),もの(ボール,ルール),こと(トラブル)に遭遇し,遊び込む状況が生まれ深まっていく構造が捉えられ,「質の高い遊び」モデル構築の一資料が得られた。 3 2015年7月,オーストラリア,シドニーで開催された環太平洋乳幼児教育学会(PECERA)Annual Conferenceにおいて,「Development of the Playability Evaluation Scale of Young Children」の発表を行った。オーストラリア,香港,台湾,韓国などの研究者と意見を交換することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究補助最終年としての28年度の推進方策は以下の通りである。 1 遊び込める子どもの発達的特徴を検討する。本年度は,5歳児の運動遊びとしてのドッジボール場面を対象にして「遊び込める」構造を検討した。今後は,4歳児,3歳児の遊び場面を対象として分析する。「遊び込める」という状況を規定する要因を,3歳~6歳までの発達と併せて検討し説明モデルを提示する。本研究課題は最終年度ではあるが,その後も継続して研究を続ける計画である。 2 既存の遊びを含めて,作成した本尺度を用いて遊びを評価し,「質の高い遊び」環境を構築する条件を整理する。
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Causes of Carryover |
当該年度では,当初計画していなかった国際学会(PECERA,オーストラリア)での発表を行ったため,旅費の支出が高まった。そのため,人件費の支出が発生しないような研究方法をとったため,結果的に繰越が生じた。次年度の研究費の使用計画に合わせて有効に活用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。 1実験計画に沿った機器の追加購入,実験や分析のための補助謝金や旅費 2タイで開催される国際学会(PECERA)や,国内学会での研究成果発表のための旅費 3論文投稿のための投稿費及び英文校閲費 4研究関連の書籍,資料購入
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Research Products
(8 results)