2014 Fiscal Year Research-status Report
喫煙による肺胞マクロファージへの影響とアレルギー発症の関連について
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26350852
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
竹内 実 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (70257773)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 喫煙 / アレルギー / スギ花粉 / 肺胞マクロファージ / 細胞表面分子 / 異物認識レセプター / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
喫煙による健康への影響は重要な社会問題である。しかし、喫煙とアレルギー発症の関係についての実験科学的な研究は非常に少ない。特に、肺の初期免疫で重要な役割をしている肺胞マクロファージに着目し、喫煙の影響とアレルギー発症の関係に焦点を絞った研究は国内、国外ともにされていない。本研究は、リアルタイムでタバコ主流煙の粒子数、濃度を測定できる自動喫煙設備を作成し、マウスにタバコ主流煙を一定量均一に吸入させ、喫煙による影響を正確に客観的に評価出来る系を用いて、喫煙による肺胞マクロファージへの影響とアレルギー発症の関連について研究実験を行った。まず、スギ花粉濃度について、in vitro系を用いて基礎実験を行った。その結果、スギ花粉600μgの濃度で肺胞マクロファージが刺激されることが認められ、マウスへのスギ花粉噴霧吸入濃度を、600μgに設定した。その後、主要設備である自主製作したレーザー粒子測定装置を装着させたタバコ自動主流煙喫煙装置を用いて、C57BL/6、雌、8週齢マウスに一定量、一定期間(10日間)、モニターNo.2リファレンスタバコの主流煙を喫煙させ、喫煙マウスを作製した。喫煙後、アレルゲンとして日本スギ花粉粒子(100%)を麻酔下で、マウスに噴霧器を用いて基礎実験の結果から、600μgの濃度を噴霧して吸入させた。スギ花粉を噴霧吸入後、マウスを麻酔死させ、主気管支を露出後注射器で主気管支内にPBSを1ml注入し回収する操作(気管支肺胞洗浄法)により肺胞マクロファージを採取した。スギ花粉により肺胞マクロファージ刺激による好中球の誘導が認められた。しかし、喫煙によりその誘導は抑制された。スギ花粉噴霧により肺胞マクロファージの細胞表面分子で異物認識レセプターあるTLR-2,4の発現増加が喫煙により抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
均一な濃度のタバコ煙をマウスに喫煙させ、肺胞マクロファージへの影響が確認できた。その後、アレルゲンとしてのスギ花粉を気管支内に吸入させることが出来、肺胞マクロファージがアレルゲンに対する初期免疫反応を示したことが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
肺胞マクロファージの免疫機能に対する喫煙の影響が確認され、またアレルゲンに対する肺胞マクロファージの初期免疫応答が認められ、好中球が誘導されたことから、喫煙がスギ花粉によるアレルギー反応に対して、どの免疫遺伝子に影響を及ぼしているのかについて、遺伝子レベルで、PCR法、CGH法を用いて研究を推進する。また、喫煙による肺胞マクロファージの免疫機能への影響について、アレルギー反応と関連するサイトカイン産生機能についても検討し、研究を推進する。
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Causes of Carryover |
スギ花粉の実験に噴霧投与するスギ花粉の用量設定の基礎実験において、特にin vitro系の実験で、刺激濃度、培養期間などの検討で予定していた実験より多くの実験回数、日数を要した。そのため、in vivo系の動物実験を行う回数が少なくなり、当初計画の変更を余儀なくされたため、その費用分の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究課題の成果を海外、国内の学会で発表する予定であるため、旅費を60万円に設定し、実験に使用する物品を22万円と設定した。
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