2014 Fiscal Year Research-status Report
地域で暮らす認知症高齢者のための新規栄養ケアモデルの構築と応用可能性
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26350867
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Research Institution | Tenshi College |
Principal Investigator |
佐藤 香苗 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (40405642)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 通所介護(デイサービス) / 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) / 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) / 食事パターン / 食事関連負担感 / 栄養状態 / QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を迎えた日本において「健やかな老い」は、高齢者のQOLを考える上で重要である。高齢になるほど認知症の発症者数は増加する。認知症高齢者の老化の速度は一般高齢者より速く、ADLの低下・要介護度の悪化が危惧される。また、低栄養は要介護度悪化の主要リスクであるため、早期の栄養ケアが望まれる。病院・施設から在宅中心型認知症ケアへのパラダイムシフトが求められる中、在宅やグループホーム(GH)に入居する認知症高齢者の栄養状態は殆ど知られていない。また、認知症高齢者の「食事関連問題行動」の実態も解明されていない。家族やGHスタッフの「食事の準備・介助・後片付けまでの食事関連負担感」が大きく、認知症高齢者の栄養状態に負の影響を及ぼしていることが懸念される。 本研究は、これらの実態把握と相互関連分析から、地域に住む認知高齢者のQOL向上に寄与する新規栄養ケアモデルを構築することを目的とする。初年度である今年度は、フィールドでの事前打ち合わせを綿密に行い、研究体制の構築とスタッフとのラポール形成に努めた。同時に、研究メンバーの認知症の病態理解と調査測定技術の向上を企図して、以下の研修会・研究会・ワークショップを開催し、獲得した知識・技術は認知症高齢者への栄養教育の留意点として専門図書で解説した。 ①認知症専門医師による研修会(2014、5/25)②認知症高齢者の基礎・実践栄養学研究者(東北大、島根大、女子栄養大)・臨床医師と研究会(5/30)③専門学術総会北海道支部で前述の研修・研究会参加者が招聘講演をし、その指導監修にあたった(6/28)④ワークショップ「安静時消費エネルギー量(REE)の測定とその意義」(2015、1/13)⑤認知症高齢者が食を楽しむことの浸透・醸成を企図し、専門領域の垣根を越えた学際的な研究会を連携研究者と共に企画・発足した(日本生理人類学会・健康栄養科学部会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当該プロジェクトの初年度に当たるため、認知症高齢者の特性を踏まえ、グループホーム・福祉施設のスタッフ、認知症高齢者自身とのラポール形成に努めた。 さらに、調査測定・介入法について、研究者間で多角的に検討し、研究組織の構築や研究デザインのブラッシュアップに多くの時間を要した。 しかし、決定分析の手順に基づいて、研究デザイン・調査測定項目を再検討したことにより、当初計画より円滑なデータ収集が期待できる。 したがって、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成27年度】認知症の診断がある特別養護老人ホーム入所者、GH入居者・デイサービス利用者、各60名程度とその家族、介護スタッフを対象に次の調査測定、インタビューを行う。①中核症状:MMSE(Mini-mental state)、周辺症状:GBS Scale(GBSS)と日本語版Behavioral Pathology in Alzheimer’s Disease(Behave-AD)の組み合わせ②簡易栄養状態評価(Mini Nutritional Assessment)と間接熱量測定法による安静時代謝量③食事パターン(食形態、食品群)④食事関連行動障害の有無と程度⑤介護者の食事関連負担感[多次元介護負担感尺度BIC-11(Burden Index of Caregiver)]に基づくインタビュー④QOL-D日本語版 【平成28年度】データ収集・解析を行う。インタビュー等の質的データは、テキストマイニングで定量化して解析に投入する。栄養状態、QOLの関連予測因子を探索し、QOLの維持向上に寄与する新規栄養ケアモデルを構築する。 【平成29年度】従来の施設型栄養ケアモデルと比較し、有効性を科学的に評価する。栄養リスク判定のガイドラインの作成と栄養アセスメント項目のパッケージ化、運用マニュアル・教材の作成等により、普及に努める。 計画通りに進捗しない場合は、以下の2点の方策をもって対処する。 ①調査測定項目の簡素化;先行して調査・測定したデータ間の関係性を吟味し、省略可能な項目、代替可能な測定法について検討し、より簡素で実施しやすいプロトコールに改訂する。②アセスメント項目のスリム化;先行して調査・測定した栄養状態やQOLと関連性の強い変数を優先し、調査項目を精錬する。
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Causes of Carryover |
調査フィールドのカウンターパートとの事前打ち合わせや研究組織体制を構築していく中において、認知症高齢者の特性から当初予定していた調査測定項目では、精度の高いデータが得られないことが判明した。したがって、当初の研究計画を一部、変更する必要が生じたことにより、その調整に予想外の日数を要したため、年度内での全額使用が困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究体制は整ったので、認知症高齢者の行動特性に十分に配慮して、調査測定・インタビューを開始する。今年度の残額は、フィールドへの交通費、調査測定に係る消耗品、人件費などで計画通りに執行する予定である。
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Research Products
(4 results)