2016 Fiscal Year Research-status Report
地域で暮らす認知症高齢者のための新規栄養ケアモデルの構築と応用可能性
Project/Area Number |
26350867
|
Research Institution | Tenshi College |
Principal Investigator |
佐藤 香苗 天使大学, 看護栄養学部, 教授 (40405642)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 認知症高齢者 / 安静時エネルギー消費量 / 推定エネルギー必要量 / 食事特性 / 食事の多様性 / 栄養状態 / 行動・心理症状 / QOL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は認知高齢者のQOL向上に寄与する新規栄養ケアモデルの構築を目的としている。 既知の推定式による認知症高齢者のエネルギー必要量の推定は困難である。そのため、昨年度は安静時エネルギー消費量(REE)の推定式を構築し、実際に施設入所者のエネルギー必要量の算定に活用した。しかし、認知症高齢者の体重減少が認知機能の低下に伴う代謝亢進に起因する可能性を示唆する報告もあるため、今年度はより至適なエネルギー必要量を推定するため、認知症高齢者100名[男性35名(82.6±8.1歳、BMI23.1±3.5)、女性65名(87.0±6.2歳、BMI 22.6±4.0)]を対象に、認知症高齢者の日常生活自立度、MMSEおよびGBS 尺度(知的機能)を用いて認知機能を「軽症・中等度」と「重症」に分類し、各実測REEを従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)により、認知機能別のREE推定式を構築した。 栄養摂取面では、エネルギー・栄養素レベルの評価を深化させ、認知症対応型共同生活介護(グループホーム:GH)入居者27名と介護老人福祉施設入所者68名を対象として、四季毎連続7日、計28日の半秤量食事記録法調査により、摂取エネルギーおよび主要な栄養素の供給に寄与する食品群を探索し、認知症高齢者の食事特性を明らかにした。 さらに、代理人によるQOLの評価に、Quality of life instrument for the Japanese elderly with dementia(QLDJ)を用い、認知機能と正の強い相関関係があることを確認した。食事の多様性(dietary diversity)は、認知機能障害より、行動・心理症状と関連が認められたが、これらを介してQOLとも関連したため、栄養ケア介入による間接的効果が期待できると考えられた。 以上の研究成果を認知症ケアに関連する複数の専門学会で公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
認知症高齢者のREEを認知機能別に推定することの意義を明らかにし、「軽症・中等度」と「重症」に分類し、推定式を構築した。必要ネルギー量の算定要件である身体活動レベル(PAL:Physical Activity Level)については、現場で汎用性の高い認知症高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とのマッチングを検証し、認知症高齢者にとって至適なエネルギー必要量の推定法をブラッシュアップできた。さらに、調査項目相互の関連性分析から、栄養ケア介入によって認知症高齢者のQOL向上に間接的に寄与する可能性を確認した。 一方で、本研究の目的をより精緻に達成するために、REEに影響する認知機能の判別臨界点の探索解析ならびにその区分による認知機能別にREE推定式を再構築するなど、認知症高齢者の必要エネルギー量を推定する段階に時間をかけた。そのため、年度終わりには栄養介入法を具体的に立案できたものの、実際の介入には至らなかった。 しかし、新規栄養ケアモデルの骨子となる推定エネルギー必要量の算定法をブラッシュアップすることができ、認知症高齢者の栄養・食物摂取の実際と照らしても妥当であったことから、堅実な前進のための遅延と評価し、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
認知症高齢者の習慣的な食事内容(食事特性)から、食物繊維、カルシウム、亜鉛の摂取量が少ないことが明らかになった。食物繊維の不足は便秘症の一因であり、カルシウムは認知症発症リスクとの関連性が指摘されている。さらに、亜鉛は食事摂取量が低下している高齢者で欠乏しやすく、不足により味覚障害を惹起することから負のスパイラルに陥りかねない。 そこで、これらの栄養素を集中的にトリートメントするタネ(多様な食材を使用し、常備・アレンジ可能)を開発・提供する新規な栄養ケア介入を実施し、従来の栄養管理法を対照として、効果を測定する。
|
Causes of Carryover |
栄養介入を実施するための費用を支出しなかったことに起因する。 前述したとおり、認知症高齢者の推定エネルギー必要量の算定、摂取エネルギーおよび主要な栄養素の供給に寄与する食品の探索、その他、収集したデータの相互関連分析等に時間を要した。そのため、「タネ」のレシピ開発を含め、新規栄養ケアの介入法を現場のカウンターパートと協働して、実行可能な計画を具体的に立案できたものの、介入には至らなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
1、これまでの成果を発信するセミナーもしくはワークショップを連携研究者らと協働して、企画・開催する。 2、栄養介入を実施する。認知症高齢者に不足していた食物繊維、カルシウム、亜鉛を集中的にトリートメントするタネ(多様な食材を使用し、常備・アレンジ可能)を提供する栄養介入を行うことが決定している。タネの食材料費、施設使用料、人件費、交通費等に使用する。
|
Research Products
(9 results)