2015 Fiscal Year Research-status Report
チュニジアの多言語社会におけるコミュニケーションネットワークの研究
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26360027
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中挾 知延子 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (70255024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小早川 裕子 東洋大学, 国際地域学部, 講師 (90459842) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク / エゴネットワーク / 多言語社会 / 社会言語学 / 多言語コミュニケーション / コードスイッチング / IQV / コレスポンデンス分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度に現地調査を行ったときに、カルタゴ大学教授を通じて研究に有用な情報を得られると思われるチュニス及び周辺に住むチュニジア人研究者及び地域の有力者を紹介してもらった。現地調査をしていく過程で、チュニス郊外のラマルサという町が社会ネットワーク調査をする上でふさわしい場所であると分かった。ラマルサには中流クラスが多く住み、市民コミュニティ活動がチュニス地域では最もさかんな場所である。ここ最近のテロの脅威など治安を勘案すると、ラマルサで社会ネットワーク調査を中流クラスに絞って言語使用について分析を行うことが適切な研究方法であると考えた。カルタゴ大学言語学専攻に在籍する大学院生に調査を依頼し、メールで入念に調査票の内容を打ち合わせ、夏場に3ケ月かけて対面によるアンケート調査を行ってもらった。調査には院生の友人2人も協力してもらった。調査の結果、300名に聞き取り調査をすることができ、パーソナルネットワークは3,000組のデータを得ることができた。その後データをエクセルに落とし込んだ。ネットワークの性格からエゴネットワークでの分析を行うことにして、フリーのソフトでネットワーク分析を行った。中流クラスの住民がどの程度多様に言語を相手によって使い分けているのかについて、Heterogeneity in Component Membership (IQV)を使い、多様性が見られることに有意な結果を得た。また、コレスポンデンス分析を行い、エゴ(自身)とアルター(他者)の間でコミュニケーションをとる言語とその二者との関係性との距離を調べ、二種類の主成分を得た。それについて考察を行い、結果をまとめたものを国際社会ネットワーク分析学会のジャーナルに現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度は、チュニジアの治安情勢を考慮して渡航は控えることにした。行けない代わりに現地カルタゴ大学で言語学を専攻する大学院生に対面調査を依頼することができた。他に2名の協力者を加えてチュニスの郊外ラマルサ市の中流クラスの住民に対して聞き取り調査を実施した。調査で得たデータのエクセルへの入力補助に1名協力してもらい、合計3,000件のネットワークデータを準備した。フリーソフトによってエゴネットワーク分析を行い、多言語の使用と中流クラスの人間関係や社会生活について統計分析をした。分析結果の考察をまとめてジャーナルに投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度はチュニジアへ行けず、中流クラスの社会ネットワークについて、使用言語との関係を分析した。一定の分析結果と知見が得られたわけであるが、今後は可能であればチュニジアで同じような状況の地域で調査分析を続けたいと考えている。また、チュニジアの多言語状況について、より広く歴史的な言語政策や教育政策について調査することや、最近著しい英語の流布について、英語のみでの教育を行っている高校などにも協力を得て行うことも多言語社会の様相を明らかにしていく上で重要であると考えている。いずれにしても、治安情勢を慎重に検討して渡航するかどうか検討したい。
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Causes of Carryover |
治安情勢の悪化から、チュニジアへ渡航するのを中止したため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
治安情勢を見極めながら渡航を検討するか、あるいは研究の成果を国際会議で発表するための渡航費とする。チュニジアへの渡航が困難な場合は、現地調査を委託することも考えている。
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