2015 Fiscal Year Research-status Report
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26360055
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
秋林 こずえ 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (90377010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 晴美 琉球大学, 大学教育センター, 講師 (80618786)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 「従軍慰安婦」制度 / 同化政策 / 長期外国軍駐留 / 軍事占領 / 性暴力 / 平和構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は主に沖縄における軍隊と性暴力に関して、「従軍慰安婦」制度と米軍による性暴力の2点について研究を進めた。「従軍慰安婦」制度に関しては、慰安所の実相に関する調査だけでなく、日本国内の他の地域よりも多数の慰安所が沖縄県に設置された背景をより明らかにするために、明治以降の日本政府による沖縄の同化政策や近代化政策をジェンダーの視点から分析する作業を行った。また沖縄県内で、引き続き、慰安所に関する資料をフィールド調査も含めて収集した。これらについては、女性・戦争・人権学会で研究発表を行った。米軍の性暴力に関しては、沖縄県内での文献資料収集を中心として調査を進めた。 国外でのフィールド調査では、最近設立されたフェミニスト平和運動の国際的ネットワークで、朝鮮半島の問題に取り組むWomen Cross DMZ (Demilitarized Zone)を新たな研究対象に加えた。1953年に休戦協定が締結されたままの状態が続いている朝鮮半島の紛争を終結させようと主張し、さらにその和平プロセスに女性の参加を求めるフェミニスト平和活動家のトランスナショナル・ネットワークだが、北東アジア地域にとどまらず、30カ国にまたがる幅広いネットワークであり、「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク」とのつながりも深い。またリベリアでの平和構築の経験などを有するメンバーが参加していることなどから、軍隊の性暴力の問題と平和安全保障政策への女性の参加がどのように関連付けられているか、どのようなアプローチを取っているかについて、参与調査による資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジェンダー正義の確立、脱軍事化、脱植民地化を目指す沖縄フェミニズムの理論の精緻化をはかり、さらに国際的な平和構築政策という文脈に位置づけるために、トランスナショナルなフェミニスト平和運動の近年の動向について調査を進めることができた。当初、フィリピンでの調査を予定していたが、草の根の運動でありながら、国連安保理決議1325号「女性・平和・安全保障」の実施を目指す国際女性NGOとも連携をもつWomen Cross DMZが沖縄のフェミニスト平和運動との連帯が構築されたことから、武力紛争下の性暴力と長期駐留軍による性暴力との連続性について、また平和構築政策に関するのフェミニスト平和運動の取り組みをより明らかにするための足がかりができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、沖縄フェミニズム理論の精緻化を勧める。特に脱植民地化と脱軍事化がどのように理解されているか、平和構築政策におけるジェンダー平等・正義の確立と脱植民地化の必要性を、沖縄の米軍による軍事占領だけでなく、さらに日本による同化政策と近代化政策のジェンダー分析から明らかにする作業を継続する。また現代の軍隊の性暴力について、米軍内での性暴力の問題に取り組む被害者/サバイバーと支援者の活動を調査する。次年度は最終年度となるため、成果発表の準備も同時に進める予定である。それにあたっては、代表者が所属する同志社大学でフェミニスト・ジェンダー・セクシュアリティ研究センターが2015年度に発足したことから、国際的な研究発表や今後の共同研究を進める拠点とすることができる。
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Causes of Carryover |
米軍内での性暴力と国連で活動するNGOの調査を行うために米国での調査を予定していたが、インタビュー先との日程調整の結果、次年度(2016年度)に調査を実施することになったため、次年度使用とすることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国(ニューヨークまたはワシントンDC)への旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)