2014 Fiscal Year Research-status Report
心身の難問に向かうものとしてのアリストテレス哲学の研究
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26370005
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
渡辺 邦夫 茨城大学, 人文学部, 教授 (30191753)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アリストテレス / 『ニコマコス倫理学』 / 心身因果 / フロネーシス / 人柄の徳 / 無抑制 / 知性 |
Outline of Annual Research Achievements |
『ニコマコス倫理学』において心身因果にアリストテレスが荷担した事情を英文論文に書き、ミュンヘン大学ラップ教授の助言等を受け、国際学術誌に投稿している。現在一誌に投稿したが採択されず、編集者からいくつか欠点を指摘されたので、さらに改善中である。 倫理学における心身関係論と規範性の議論の関係を研究し、『ニコマコス倫理学』第6巻第11章と第12・13章の関係に関する解釈論文「実践知と身体ーー『ニコマコス倫理学』第6巻のフロネーシス論について」(茨城大学人文学部紀要『人文コミュニケーション学科論集』第19号(5月25日原稿締切、9月発行予定))を執筆中である。人柄の徳の規定においてアリストテレスが心身関係に荷担することにより有徳な人柄の確定性の主張を出したことが、思慮深さという知的徳の判断力の信頼性につながると論ずる。 「意志の弱さ」については『ニコマコス倫理学』第7巻の解釈を組み立てているところであり、その一部(アリストテレスが「教え」として倫理を考えなかったこと)は立花幸司氏との共訳(『ニコマコス倫理学(上下)』光文社古典新訳文庫、2015年9月・11月発行予定)の「解説」に反映させる。続いて28年度初めに紀要論文を書き、アリストテレスの意志の弱さに関する分析が、心身の逸脱的関係を問題としていたことを明らかにする。平成26年度にはほか、紀要論文「『ニコマコス倫理学』における正義と「知」の関係について」と哲学雑誌論文「真理の議論の重層化の必要性について」を発表することができた。いずれも部分的に本研究課題に関係する論文である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した研究論文はほぼ予定の時期通りに書き上げることができた。英文論文は投稿先を考え早めに採択されるよう努力したい。紀要論文は2014年9月の紀要論文「『ニコマコス倫理学』における正義と「知」の関係について」の続編であり心身因果を大きなポイントとするものにできる見込みである。また、正義論から思慮深さ論へ、思慮深さ論から無抑制論へ、そして無抑制論からフィリア論と観想論へという流れを心身の積極的関連性の観点で叙述できる見込みが出てきた。この描像に従って、次の意志の弱さ・無抑制に関する解釈論文も同じ程度の連続性を保って、それと同時にアリストテレスの心身関係理解をさらに解明するものとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に『ニコマコス倫理学』の第6巻・第7巻解釈において心身関係を論ずるという基本的姿勢を貫いて第7巻の解釈論文をまず書きつつ、それと同時に『魂について』などの理論的な著作における心の哲学の解釈を作るという当初の方法通りに進めてゆく。なお、現代徳倫理学をテーマとする日本倫理学会の主題別討議において提題者を務めるので、その関連におけるアリストテレス心身論の現代的意義に関しても研究を始めている。本研究課題の直接の成果ではないが、間接的に関連する成果をあげることができる見込みである 。
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Causes of Carryover |
2月と3月に年度末の研究に必要な図書と文房具をそろえた際、予定より安価で購入できたため、若干の金額が余ったということである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文房具等の物品費の足しに使う。
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Research Products
(2 results)