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2014 Fiscal Year Research-status Report

ウーシアーと実体──存在論の基礎概念の形成

Research Project

Project/Area Number 26370015
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

中畑 正志  京都大学, 文学研究科, 教授 (60192671)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywordsウーシアー / 実体 / アリストテレス / プラトン / substance
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、当研究の出発点として、アリストテレスまでの「ウーシアー」という語の意味についての研究を集中的におこなうとともに、その後の意味の変遷についても一定の展望を得た。その成果は以下の通り。
1)ウーシアーという語は、プラトン以前にはヒポクラテス文書の数例を除いたほぼすべての用例において、財産や富などの経済的な意味で使用されていた。この語の意味理解の上ではプラトンが転機となった。
2)プラトンの初期から中期著作において、この語は、ある特定の「あり方」「特性」を示し、とりわけXのウーシアーという形で「Xとは何であるか」に対する答である「まさにXであるもの」を表現している。後期著作においては、より一般的に「ある(こと)」「あり方」を意味するが、その場合でも「~である」という意味を含んでおり、それと切り離された意味での「~がある」すなわち単なる「存在」を意味するものではなかった。
3) アリストテレスの「ウーシアー」もこのプラトン的な意味を継承し、「まさに~であるもの」を基本的な意味としている。従来、アリストテレスの「ウーシアー」は、「個物・事物」と「何であるか」「本質」という2つの意味をもち、カテゴリーとしてのウーシアーは前者の意味であり、こちらはsubstanceや「実体」と訳しうると考えられてきた。しかし、この言葉に関してその意味と指示対象を区別するなら、「何であるか」という表現との互換性、同じく互換的に使用される「トデ・ティ」の意味の再検討、さらにヒュポケイメノンその他の関連する概念の精密な解釈によって、アリストテレスにとっても「何であるか」に応答するものであることを基本として理解されるべきである。したがってsubstance「実体」という訳語は大きな問題を孕む。
5)しかしそのように訳されうるような意味の理解が生まれる経緯についてペリパトス派とストア派に関連して若干の展望を与えた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

「交付申請書」の26年度の計画では、「主としてプラトン以前とプラトンにおける「ウーシアー」の語の意味を辿り、アリストテレスの理解と照らし合わせることで、この語の源泉における基本的意味を確認する」ことを本年度の課題としたが、その課題を達成できた。さらに、27年度以後に予定しているアリストテレス後の意味の変遷についても一定の展望を得ており、準備を進めることができた。

Strategy for Future Research Activity

以下のような手続きに従って今後の研究を進める予定である。
1)ペリパトス派とストア派、そして新プラトン主義におけるウーシアーの用法をアリストテレスからの変遷という視点から跡づける。
2)「ウーシアー」のラテン語訳(essentia, substantia)をめぐるセネカ、カルギディウス、クインティリアヌスらの情報を検証する。とりわけクウィンティリアヌスの場合は、弁論の争点について、ウーシアーとsubstantiaとを結びつける議論を展開しているので、その背景にある思考を確認する。
3)キリスト教教父たちにおいて、ウーシアーとhypostasis とがどのように区別され、また関係づけられているのか、またそれぞれのがどのようにラテン語として表現されているのかを追跡する。
4)以上の成果を踏まえて、ボエティウスがアリストテレス『カテゴリー論』訳でウーシアをsubstantia、ただし他の著作ではessentia として訳されることになる経緯を解明し、さらにその後のsubstantia概念の歴史や現代の形而上学の動向にも目を配り、哲学研究者にとって有益な情報を提供できるよう努める。

Causes of Carryover

2014年度中に発行予定の書籍を注文しの購入を予定していたが、最終的に刊行が遅れたため購入できず、繰越額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

購入予定の書籍は今年度には発行されると思われるので、繰越金はその書籍の購入にあてる。

Research Products

(6 results)

All 2015 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 3 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] Aristotle on Descartes on Perceiving that We See2014

    • Author(s)
      Masashi Nakahata
    • Journal Title

      The Journal of Greco-Roman Studies

      Volume: 53-3 Pages: 99-112

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 移植、接ぎ木、異種交配――「実体」概念への迷路2015

    • Author(s)
      中畑正志
    • Organizer
      東洋大学国際哲学センター方法論シンポジウム
    • Place of Presentation
      東洋大学
    • Year and Date
      2015-02-28 – 2015-02-28
    • Invited
  • [Presentation] オントロジーの成立 ――西欧における〈ある〉と〈存在〉をめぐる思考の系譜――2014

    • Author(s)
      中畑正志
    • Organizer
      「インド哲学における<存在>をめぐる議論の解明」シンポジウム
    • Place of Presentation
      東京大学
    • Year and Date
      2014-11-23 – 2014-11-23
    • Invited
  • [Presentation] もう一つの心理学史──魂の学と生態心理学──2014

    • Author(s)
      中畑正志
    • Organizer
      日本生態心理学会第5回大会
    • Place of Presentation
      豊橋技術科学大学
    • Year and Date
      2014-07-14 – 2014-07-14
    • Invited
  • [Book] 新プラトン主義を学ぶ人のために2014

    • Author(s)
      中畑正志
    • Total Pages
      394
    • Publisher
      世界思想社
  • [Book] プラトンを学ぶ人のために2014

    • Author(s)
      中畑正志
    • Total Pages
      295
    • Publisher
      世界思想社

URL: 

Published: 2016-05-27  

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