2017 Fiscal Year Annual Research Report
The religious in multiple modernities - the concept of religion, the religious, and the ethics of citizenship
Project/Area Number |
26370023
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鏑木 政彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80336057)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教 / 世俗化 / プロテスタント的近代 / イデオロギー / グローバルな思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「世俗化」の展開過程を、(1)プロテスタント的な宗教性の多元的な展開、(2)新たな宗教性からこぼれ落ちる神話的なものやナショナリズムなどの政治イデオロギー的展開、(3)多元的な宗教性からなる現代社会に生きる市民的倫理という3点から総合的に探究することである。最終年度はこれまでの成果をまとめて、多元的な宗教性の由来とその展開過程の枠組みを整理し、以下に述べるようなグローバルな思想史のための視野という成果を得た。 原初の宗教(プロト宗教)がどのようなものであったのかについては進化人類学等でさまざまに論じられている。本研究はそれらの成果をもとに、プロト宗教を超自然的観念による社会的結合と人格的統合の機能を果たすものと理解する。その上で、プロト宗教が被った変容の一貫として「世俗化」を理解する。まず、世界宗教は個的人間を生み出すことを通じて、新たな社会的結合と人格的統合のための基盤を提供する。次いで西洋近代は、宗教戦争後の共生の要請や科学革命を通じてそれまでの世界観的宗教を解体し、宗教は内心の信仰を中心とするものとなる。本研究はこのような近代を「プロテスタント的近代」と呼び、そこにおいて、西洋の世界進出とそれに対応する非西洋世界との「眼差しの交錯」を通じて、プロト宗教のもっていた諸機能が、各々の知の伝統を背景とした地域的特性を有する多元的な宗教性と政治イデオロギーへと分化し、さらにこの知的展開の上に、イデオロギーと区別される自律した政治理論が発展し、そこに市民的倫理の根拠が求められるようになったことを跡付ける。本研究は、これまでの思想史・理論研究において主流であった個別研究を人類の精神史という大きな流れの中に位置づけ、俯瞰的に考察する点に特徴があり、国家によって分断された思想史とは異なるグローバル・インテレクチュアル・ヒストリーを切り拓く意義を有する。
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Research Products
(1 results)