2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370034
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
守中 高明 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80339655)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱構築 / 精神分析 / ファロス中心主義 / 秘密 / クリプト(地下墓所) / 喪の作業 / 歓待 / 来たるべき民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究目的:研究課題についての著書を完成させること。目次はつぎのとおり:第1部「耳について:第1章「脱構築と(しての)精神分析」・第2章「ラカンを超えて」」、第2部「秘密について:第1章「告白という経験」・第2章「埋葬された「罪=恥」の系譜学」」、第3部「灰について:第1章「終わりなき喪、不可能なる喪」・第2章「ヘーゲルによるアンティゴネー」」、第4部「主権について:第1章「絶対的歓待の今日そして明日」・第2章「来たるべき民主主義」」。 2.研究方法:第1部ではフロイトにおける「無意識」概念についての一般的理解の誤謬を正し、ラカンの体系的理論へのデリダの脱構築的介入の諸効果を分析、第2部では精神分析のキリスト教的本質たる「司牧制」の系譜を辿り、それへの抵抗としての「秘密」と諸世代間でのその伝達の問題を分析、第3部では対象喪失後の人間精神の機制としての「喪の作業」を極限的ケースであるアウシュヴィッツに即して詳述した後、デリダの大著『弔鐘』におけるアンティゴネー読解を通してヘーゲル的「精神」への喪の昇華の挫折を確認、第4部ではヨーロッパで進行中の難民問題を念頭に置いた「歓待」の問い、および「9・11事件」以後-イラク戦争以後の「来たるべき民主主義」の問いを、「主権の脱構築」の視点から分析した。 3.研究成果:単著『ジャック・デリダと精神分析――耳・秘密・灰そして主権』(岩波書店、2016年11月22日、全258頁)を刊行することができた。その他、ジャック・デリダと豊崎光一の1980年代初頭における二回の対談を編集し、監修者として詳細な解説論文を付して刊行した:『翻訳そして/あるいはパフォーマティヴ』(法政大学出版局、2016年9月30日、全177頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に明記した著書『ジャック・デリダと精神分析――耳・秘密・灰そして主権』(岩波書店、2016年11月22日)を刊行することができ、本研究課題の核となる作業をすでに完了し、広く社会に発表することができた。 また、在外研究期間制度の適用を受けて、フランス・パリ市に滞在した年度であったことを活用し、ジャック・デリダの著作権継承者と連絡を取り、出版許可を正式に得たうえで、1980年代初頭に雑誌掲載されたきり埋もれていた日本人研究者との対談を編集し直し、解説論文を付して単行本として刊行することができた。この本は、良質なデリダ入門書として広く受け容れられた。
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Strategy for Future Research Activity |
報告者は、2016年度に在外研究期間制度の適用を受け、フランス・パリ市に滞在していたが、その間、フランス北西部・カーン市にあるIMEC(現代出版記録インスティテュート)に複数回赴き、デリダの未刊行講義録等の一次資料を読み込むことができ、かなりの資料を蓄積することができた。この資料をも活用し、ジャック・デリダが精神分析とのあいだに切り結んでいる深く錯綜した関係をさらに多角的に検証すること、具体的には「生/死」の分割に関する一般的信憑を揺るがせる諸場面についてのデリダの考察を分析・整理することが課題として挙げられる。 また、本年度刊行した著書の中では、著書の構成上、抑制せざるを得なかったデリダの大著『弔鐘』(1974年)についての読解を、別の角度から試みる予定であり、その作業は、本研究課題のつぎに報告者が予定している「ジャック・デリダと宗教哲学」(仮題)についての研究への予備作業となるものでもある。
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Causes of Carryover |
著書の執筆に際して必要な書籍・参考図書・文献は、すでに前年度までに概ね揃えていたこと、また研究時間のほとんどを著書の執筆に充てたため、新たな文献参照の必要がわずかしか生じなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究の推進方策」欄に記入したとおり、本研究課題についての新たな考察とそれにもとづく新たな論文等の執筆、および本年申請予定のつぎの科研費研究課題への、研究の発展的展開に必要な書籍等の参考資料の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)