2016 Fiscal Year Research-status Report
プライバシーと自己決定権の限界:情報倫理学的知見と歴史的事例からの考察
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26370040
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
大谷 卓史 吉備国際大学, アニメーション文化学部, 准教授 (50389003)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プライバシー / アイデンティティ / 自動プロファイリング / 自動運転と責任 / SNS / 顔と仮面 / 炎上とマスメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)コンピュータによる自動プロファイリングによるプライバシー侵害の可能性について、海外での研究を参照して考察を実施した。ある個人の社会的人物像は、社会が一方的に押し付けるものでもないし、個人が提示する人物像がそのまま受容されるわけでもないが、自動プロファイリングが普及することによって、個人が訂正が困難な自己の評価や人物像が生成され、それが差別的取り扱いに結び付く可能性があると主張した。 (2)SNSにおける投稿やニュース等の提示の操作によって、利用者の感情や投票行動がわずかながら左右されたとの研究結果が、2013年以降報告されている。これらの研究を取り上げ、個人に与える影響はごく僅かであっても、選挙結果など集合的行為の結果には大きな影響を与える鹿上正があることを指摘した。そして、説得や感情への働きかけによって人間の態度(行動パターン)や行動をコントロールする技術が、私たちの行為の自律性や自己決定権に影響を与えるだけでなく、とくに身近な人間関係を介してある種偏りのある情報の提示を行うSNSは、現在までのメディア論の成果から見て、マスメディアと比較して大きな影響を有する可能性を示唆した。 (3)顔と仮面にかかわる文化人類学、CHIおよび進化学、心理学的研究等を検討し、アイデンティティと顔・仮面とのかかわりに関して考察した。一般的に、仮面や化粧がない素顔が本当の顔と考えられているが、社会的存在である人間にとっては、必ずしもそれが本当とは言えないことを示した。 (4)いわゆる炎上現象がマスメディアによって増幅されることを指摘し、炎上現象のコントロールにはマスメディアの役割が重要であると主張した。また、炎上現象をルサンチマンから説明することは可能だが、他人を断罪するルサンチマン論は炎上を抑制するのにはまったく無意味であることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は、8月に実母が入院、9月末に死去したことに伴い、入院付き添いの体力的消耗および精神的打撃によって、数か月研究が不可能となった。そのため、当初予定していた研究成果をまとめた著書の出版が不可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果をまとめ、発表することが今年度の残る課題である。2017年に入ってから精神的打撃が弱まったことから、一昨年から準備を継続し、研究成果を著書としてまとめる作業を継続し、2017年度の早い時期に著書を発表する。関連研究の国際会議等での発表を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度は、8月に実母が入院、9月末に死去したことに伴い、入院付き添いの体力的消耗および精神的打撃によって、数か月研究が不可能となった。そのため、当初予定していた研究成果をまとめた著書の出版が不可能となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
連携研究者が第一著者となる研究成果の一部を発表する国際会議への出席・参加(2017年6月)に加え、電子情報通信学会等での研究成果発表を実施して旅費として使用するほか、最新の情報等を入手するため、文献購入に充てる。
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Research Products
(5 results)