2014 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代における陽明学資料の流入およびその影響について
Project/Area Number |
26370047
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 王陽明 / 逸存書 / 陽明後学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度においては、日本国内に流入した王守仁の著作、真筆の調査を行った。その際の発見をもとに、論文「白鹿洞本『伝習録』について」(『陽明学』25、2015年3月)を執筆した。本書は日本の九州大学文学部図書館のみに現存する、中国国内には完本が現存していない、いわゆる逸存書であるにもかかわらず、従来ほとんど注目されていなかったが、同論文においては、同書が王守仁の著作の成立を考えるうえで不可欠の存在であることを立証した。 また、王守仁の著作の調査と並行して、王守仁の弟子たちの日本への流入についても調査を行い、論文「 内閣文庫蔵『鄒東廓先生詩集』について」を執筆した。 内閣文庫蔵『鄒東廓先生詩集』については、近年刊行された鄒東廓の全集にも収録されていない逸存書であるため、内外の学界から注目された。上述のごとく、同書は翻刻もなされていないため、前年度に引き続き、「『鄒守益集』未収詩輯佚(二)―内閣文庫蔵『鄒東廓先生詩集』より―」(『人文社会科学研究』55、2015年3月)として翻刻を行い、その内容を公開した。 本翻刻も学界より好評を持って受け止められている。 なお、これらの文献学的考察の準備作業として、欧米における近年の研究の翻訳を行ってきたが、それらは『中国書籍史のパースペクティブ 出版・流通への新しいアプローチ』として勉誠出版より刊行が確定している(ISBN: 978-585-29097-1)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のごとく、未発見の文書の発見など、おおむね順調に推移していると考えられる。今後はそれらを翻刻により学界に公開する一方、その内容に関する分析もより一層進め、論文の形で発表していきたい。また、これらの発見は中国の学会よりも注目されているため、中国語での発表も並行して進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度同様、国内の図書館、文庫の調査を続行する。今年度は刊本の調査が中心であったが、陽明およびその後学の真筆の調査も並行して進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
次年度において、多くの図書館、文庫での調査、複写が必要とされるため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費および複写費、そして成果をまとめるための作業費が予定されている。
|